2月10日 関電交渉報告

関電は「10月23日の関電報告書は不十分だった」と事実上認める

 しかし、福井新聞での宣伝広告は「間違いではなく」、
品質保証体制の不十分点について「住民に知らせる予定はない」と明言
─「人のチカラ」は不十分だが、「金のチカラ」でプルサーマル大宣伝─
さらに、「BNFL社のデータねつ造は、安全性を損なうものではなかった」と
安全性無視の姿勢─一体何のための品質保証なのか



 2月10日、関西電力広報部の課長ら3人と交渉を行った。前回1月23日に行った交渉では、「輸入燃料体検査の資格なし」問題および、「補充質問書(1月21日)」に対する回答が積み残し課題として残った。今回の交渉では、まず、これらの積み残し課題に対する関電の回答を聞き、その上で、2月5日に原子力安全・保安院が出した「関西電力株式会社の海外MOX燃料調達に関する品質保証活動の改善状況に対する立ち入り検査結果について(以下「保安院評価書」という)」に対する関電の見解と姿勢を質した。
 今回の交渉で関電は、「保安院評価書」が指摘している通り、10月23日関電報告書および同社の品質保証体制は不十分なものであると認めた。しかし関電は、同社の品質保証体制があたかも万全であるかのような福井新聞による2面全面の宣伝広告について、反省の姿勢を一切示さず、不十分点について住民に広く知らせる予定もないと明言した。そしてさらに、「BNFL社のデータねつ造は、安全性を損なうものではなかった」との安全性無視の姿勢を取り続けた。
 今回の交渉の主要テーマに入る前に、積み残し課題について簡単に報告しておきたい。申請者資格の問題については、「保安院の判断であるのでコメントできない」という見解を依然として取り続けたものの、関電報告書は電事審報告書を踏まえて書かれたものであると明確に認めた。事実上、申請者資格がなかったことを認めたものである。
 また、賠償金60億円を支払って製造中のMOX燃料を廃棄したCOGEMA問題については、「当社には経営責任はない」と従来からの主張を繰り返した。さらに、今回の関電報告書でもCOGEMA問題には一切触れていないし、今後もCOGEMA問題に関する報告書等を出す予定はないと明言した。

■ 関電は「10月23日の関電報告書は不十分だった」と事実上認める
 2月5日に出された保安院評価書は、「関西電力が海外MOX燃料の輸入燃料体調達業務を適切に行うために必要な品質保証体制を構築しているものと認められる」とする一方で、10月23日の関電報告書では、適切な品質保証活動を実施するには不十分であるとも指摘している。例えば、「報告書が出された時点において・・・マネージャー以上の者が有すべき力量の設定がなされておらず、・・・的確な社内意志決定を行うには不十分であると判断した。・・・ISO9001審査員研修が十分になされていなかった。・・・力量設定と教育訓練が体系化されていない」等々と述べている。国のこのような指導を受け、関電は1月9日に「原子力燃料部門品質保証活動通達」を作成し、「原子力発電の安全に係わる品質保証規定」を改正した。自らの報告書が不十分なものであったことを事実上認めたものである。そしてさらに保安院は、立入検査でも「依然として改善すべき点も見受けられた」と指摘している。例えば、「チーフマネージャを含む管理職の力量が重要であり、早急に品質保証体制に関する理解度のばらつきをなくすとともに、全員の理解度を高めることが必要である」とまで記している。
 しかし関電は、「10月23日報告書は不十分ではないのか」という質問に対して、「当社の品質保証体制は海外MOX燃料調達を進めるに当たって必要とされる要求事項は満足している」という一般的な回答でごまかし、「不十分である」とは認めようとしなかった。また、「報告書を改めたり修正したりする必要もない」とした。
 「保安院が不十分だと書いているのに、なぜそのことを認めないのか」と追及しても、「品質保証活動というものは随時スパイラルアップしていく終わりのないもので、大枠の考え方は良かった」などと言う。関電は、「スパイラルアップ」と何度も繰り返し、保安院が具体的に挙げている不十分点を、一般的な品質保証活動の改善努力のことであるかのようにすりかえ、ごまかそうとした。
 そこで、「保安院評価書」が指摘している4点の不十分点に即して、読み上げながら一つ一つ確認を取ることにした。その結果関電は、品質保証に関する最上位文書である「原子力発電の安全に係わる品質保証規定」には、社長が実施すべき項目しか規定されておらず、報告書が出された段階では、適切な品質保証活動にあたっては不十分であったこと、また、品質保証活動に関してマネージャー以上の者に要求される力量が不十分であったこと等を認めざるを得なくなった。事実上、10月23日の関電報告書および同社における品質保証体制が不十分なものであることを関電は認めたのである。

■ しかし関電は、福井新聞での宣伝広告は「間違いではなく」、品質保証体制の不十分点について「住民に知らせる予定はない」と明言
─「人のチカラ」は不十分だが、「金のチカラ」でプルサーマル大宣伝─

 これまで関電は、10月23日の関電報告書が完全なものだとして、プルサーマル推進の大宣伝を行ってきた。11月26日付福井新聞に出した2面に渡る全面広告では「プルサーマル計画を支えていくのは『人のチカラ』です」との大見出しを付け、「『人のチカラ』。そのレベルアップのために、品質保証に関する専門教育の充実、監査員・検査員の資格制度の導入など、社内体制の強化を行いました」と、あたかも社員教育が強化され、関電の品質保証体制が万全なものになったかのごとく宣伝している。
 ところが「保安院評価書」は、先に述べたように、「マネージャー以上の者が有すべき力量の設定がなされておらず」「早急に品質保証体制に関する理解度のばらつきをなくすとともに、全員の理解度を高めることが必要」等と述べている。このように保安院は、『人のチカラ』の不足を指摘しているのである。「『人のチカラ』。そのレベルアップのために・・・社内体制の強化を行いました」などという宣伝文句は実態にそぐわない虚偽宣伝だったことは明らかである。
 「保安院から『人のチカラ』が不十分だった。今でも不十分だと指摘されている。規制当局からチェックを受けようとする段階で、このような間違った内容の広告を出したことについて反省はないのか」と追及すると、「少なくともBNFL問題以降ちゃんとやってきた云々」と逃げる。交渉参加者から、次々に追及の声があがる。しかし関電は、「BNFL以降、精一杯取り組んできた」「間違いではなかった」と繰り返すばかり。
 2月9日に行われた福井県原子力環境安全管理協議会(安管協)では、新聞広告は嘘ではないのかという委員の指摘に対して、関電の桑原支配人が不十分な点があったと認めている。「桑原支配人も認めているじゃないか」と言うと、関電は沈黙したまま。最後まで反省の言葉はなかった。
 次に、「『人のチカラ』が不十分だと保安院から指摘されたという事実について、新たに新聞広告を出すつもりはあるのか」と聞いた。これに対して関電は「その予定はない」と言う。「それでは、2面の全面広告だけが福井県の一般の読者に押しつけられたままということになるではないか」「金のチカラにまかせて一方的に宣伝するようなことをして良いのか」と追及の声があがる。
 関電は「節目節目で改善状況を報告させていただく」と何度も繰り返し、逃げようとした。しかし、「MOXの製造契約を結ぶ前に県民や周辺住民にきちんと報告すると約束できるのか」と聞くと、「今のところ予定はない」と言う。さらには、「地元自治体に対しても報告するかどうかも決まっていない」とまで言う。参加者から怒りの声があがった。
 逃げられなくなったのか、広報部課長の一人は、「新たな品質保証体制の考え方には説明責任という考え方があるわけで、個人としては、契約前には必ず、福井県の皆様に対して、国からこういう不十分点があるとの指摘があったという報告が行われるはずだと思う」と、個人的な所信表明まで行った。
 しかし関電としては、10月23日報告書の不十分点についても、また、今なお残る品質保証体制の不備についても、住民に広く知らせる気が一切ないことは明らかである。関電は、プルサーマルを強引に推し進めるために、私たちの電気料金を湯水のように使い、虚偽の宣伝で人々を騙し続けているのである。関電は、虚偽の宣伝を行ったことを率直に反省するべきである。そして、10月23日報告書は不十分なものであり、品質保証体制に不備があるという事実を新聞広告等で広く住民に知らせるべきである。

■ さらに関電は、「BNFL社のデータねつ造は、安全性を損なうものではなかった」と安全性無視の姿勢を取り続けた。一体何のための品質保証なのか。
 関電はこれまで、BNFL社のデータねつ造は「安全性にかかわる問題ではなかった」と公的な場でも繰り返し述べている。2000年8月3日に行われた「関電MOX燃料問題に関する公開討論会」で、山手原子力事業本部燃料技術グループチーフマネージャ(当時)は、「皆さんにひどい不安を与えた」ことについては一応詫びたが、「品質管理で不正があっても人々の安全に係る問題はではなかった」という見解を述べ、安全性無視の姿勢を取り続けた。
 今回の交渉では、データねつ造が安全性に係わる問題であったのかどうか、再度関電の見解を質した。これに対して関電は、質問には直接答えず、「新しい品質保証体制は安全性を確保するためのもの」と一般的な答えを繰り返すばかりであった。しかし他方では、品質保証は安全性と密接に関係していることを繰り返し認めたため、そこに明らかに矛盾があった。そこで私たちは、「山手氏の見解を撤回するのか」と追及した。最初非常に答えにくそうにしていたが、結局、山手氏の見解を撤回するとは言えず、「全数検査をしているのであり、純技術的に言えば安全性は確保されていた」と答えるに至った。交渉参加者は、「不正なMOX燃料を使って住民の安全を脅かしたことについて、今でも反省や謝罪の気持ちはないということか」と関電に詰め寄った。関電はうなだれるばかりで答えることができなかった。
 結局、今現在でも「BNFL社のデータねつ造は、安全性を損なうものではなかった」というのが関電の基本姿勢である。一体何のために品質保証活動を行うというのであろうか。何のために報告書をまとめたのか。報告書の中で美辞麗句をいくら並べてみても、住民の安全を守る姿勢のない関電に、十分な品質保証などできるはずがない。関電の品質保証活動に対する姿勢には、根幹的な部分に欠陥があると言わざるを得ない。