関電─全ての火力発電所(11基)で定期検査データをねつ造・改ざん
2001・2002年に検査しなくても安全とした根拠は

「2003年に検査して大丈夫だったから」!?
火力発電所では2003年10〜11月にデータねつ造
全く同じ時期に、プルサーマルでは「品質保証改善報告」(10月23日)

保安院は、原発の定期検査データを徹底調査せよ
プルサーマルの品質保証評価をやり直せ



 昨日(6月28日)、関西電力は1ヶ月前の関空エネルギーセンター(関空エネセン)の定期自主検査データのねつ造・改ざんに伴う追加調査を発表した。これは5月31日の近畿経済産業局による6月末までに調査報告を行うようにとの指示に基づくものであった。
 関空エネセンを含む11基の火力発電所で、定期自主検査のデータねつ造・改ざんが行われていたことが明らかになった。測定値や基準値の書き換え等法令遵守にかかわるものが87件。検査をしてもいないのに勝手にデータをねつ造したり、開いてもいない会議の議事録をねつ造したり、品質管理記録のねつ造、管理記録の改ざん等々、極めて悪質である。その他、記録の作成時期の遅れ等を合わせれば、全ての火力11基で、なんと3659件にも達している。
 1ヶ月前に明らかになった関空エネセンでの定期自主検査データねつ造が、全ての火力発電所で行われていたのだ。まさに会社ぐるみの犯罪である。

 近畿経済産業局は、5月31日の指示文書で、「検査をしていなかった設備について安全が確保されていたとする根拠」を問うている。これに対して関電は、「2001・2002年に検査をしていなくても、2003年に検査しているから安全は確保されている」と答えているという。こんなふざけた回答があるだろうか。全く安全性をないがしろにしている。これが関電の体質だ。MOX燃料のデータ不正の時も同じだ。「結局使わなかったから住民の安全を脅かしてはいない」と居直った。
 監督官庁である近畿経済産業局は、今回の関電の回答に対してどのような指導をするのだろうか。

 さらに、2003年の定期自主検査は10月〜11月に行われていたことが明らかになった。関電がプルサーマル再開のために「品質保証改善報告」を出したのが2003年10月23日。火力発電所では組織ぐるみのデータねつ造・改ざんを行っていたまさにその時期に、プルサーマルでは「品質保証体制を改善しました」との報告書を出し、地元等にプルサーマル再開を申し入れていたのである。

 関電は昨日発表した報告書の中の原因と再発防止対策で、「コンプライアンス(法令遵守)の浸透不足」等をあげている。関電が「社内コンプライアンス委員会」(委員長は藤洋作社長)を作ったのは2002年11月。しかし、その後も検査データのねつ造・改ざんは組織的に行われていたのだ。トップの責任を明らかにするべきである。しかし、昨日の謝罪会見には社長の姿はなかった(今日、社長は記者会見を行い、報酬の2割を1カ月間減給すると発表した。こんな軽い処分で責任をとったというのだろうか)。
 さらに関電は、原因の一つとして「品質システムの部門のトップマネジメントの指導不足」をあげている(ここでも「部門のトップマネジメント」であり、社長の責任は回避している)。しかし、MOX燃料のデータ不正のときを思い起こせば、これもまた単なる美辞麗句にすぎない。私たち市民が訴えた裁判で、当時の原子燃料部長だった桑原氏は、データねつ造を知っていながら「データ不正はない」との陳述書を2度も裁判所に提出した。しかし、彼の責任は一切不問にされ、原子力事業本部副事業本部長に昇格し、今また、プルサーマル復活の陣頭指揮をとっている。「部門のトップの指導不足」どころか、偽りの陳述をした部門のトップが、昇格するというのが関電の体質だ。

 関電の火力発電での広範囲にわたる検査データの不正事件によって、多くの人々は、原発の検査でも同じことを行っているのではないかという至極当然な疑義の念を強くしている。さらに、こんな関電が超危険なプルサーマルをやろうとしていることに、一層の恐怖感を覚える。

 私たちは、グリーンアクションと共に、5月末の関空エネセンでの検査データねつ造が発覚した翌日、原子力安全・保安院に対して申入書を送った。そこでは、関電の原発の検査記録にデータねつ造等がないのか徹底的な調査を行うこと。さらに、プルサーマルに関する、関電の品質保証体制について、改めて徹底的な調査を行うことを要求している。しかし、1ヶ月になろうとするのに、未だ何の回答もない。無責任極まりない。改めて、保安院に対し、上記内容を要求する。 (6/29)