関電の関西国際空港・火力発電所の自主検査データねつ造・改ざん事件

東電の原発検査データねつ造の前年から、関電はデータねつ造を繰り返していた
火力の検査データねつ造を行っていた同時期にプルサーマル「品質保証改善報告」
今回も「データねつ造はあったが安全性に問題なし」
BNFL・MOXデータねつ造事件と同様に傲慢な関電
保安院は関電の原発検査データの徹底調査を行え


 昨日(5月31日)、関西電力が関西国際空港エネルギーセンター・火力発電所の定期自主検査で、データねつ造・データ改ざんを行っていたことが明らかになった。
 このことは、近畿経済産業局の3年に1度の立入検査によって発覚した。2001年から3年間、3度に渡る自主検査でねつ造・改ざんを繰り返していた。エネルギーセンター所長を筆頭に、組織的に検査データのねつ造が行われていた。

 東京電力の原発での検査記録の改ざんが発覚したのは2002年8月だった。社会的に大問題となっていたその時期に、関電は原発での検査記録の改ざんはないと発表していた。しかし今回明らかになった関空エネセンでの検査記録の改ざんは、東電事件の前年から行われていたものである。東電事件が発覚しても、火力発電の検査記録のねつ造を続けて、今まで隠し続けていたのだ。極めて悪質である。同時に、原発の検査記録にもねつ造があるのではないかの疑惑が膨らむ。

 関電は昨日「調査報告」を発表した。この「調査報告」の内容がまた驚かされる。
「調査報告」の要旨は、「機能確保上問題がないことは確認されたものの、・・・不適切事項を確認いたしました。」というものである。検査データの改ざん等はあったが、「安全性には影響なし」である。原発の事故等でいつも関電が繰り返す言葉である。BNFLのMOX燃料データねつ造事件に関しても、「データねつ造はあったが安全性に問題なし」と全く同じ姿勢である。関電の傲慢さを示している。

 この関電の「検査報告」に対し、同日、近畿経済産業局は追加報告を指示している。その中では、「検査をしていなかった設備について安全は確保されていたとする根拠」、「計測値、管理基準値を変更したことが妥当であるとする根拠」等を追加報告するよう要求した。

 すなわち、検査もしていないのに、なぜ安全と言えるのか、データねつ造が妥当といえるのか。至極当然の指摘である。さらに関電が発表した「調査結果の別表」では、検査結果データの改ざんについて「実測値は自所で定めた管理基準値の範囲外であったが、機器製造者が定める使用限界値の範囲以内に入っていたことから、機能確保上問題ないと判断できたため、本来、正規の手続きにより管理基準値を見直すべきところを、実測値を管理基準値の範囲内に入るよう書き替えた」と記載されている。自らが決めた「管理基準値」を超えるデータを測定しながら、データを改ざんしたのは、「管理基準値」の方がおかしいからだと言うわけだ。しかし他方では、「管理基準値」を勝手に変更したケースも今回含まれている。一体なんのための「管理基準値」なのか。今回明らかになった検査記録のデータねつ造は、関電の「品質保証体制」がいかにいい加減なものであるか、安全管理に対する基本的考え方がいかにいい加減なものであるかを事実でもって示している。

 この間、関電の不祥事は後をたたない。個人情報の漏洩、大飯3号機での一次冷却水漏洩、同じく大飯3号機での燃料棒からの放射能漏洩、電気料金の過大請求等々。そして今回の関空エネセンでの定期検査記録のねつ造・改ざん。このような会社が、世界にも類を見ない危険なプルサーマルを実施するというのである。

 近畿経済産業局の指摘により、関電は今後他の火力発電所の検査について調査を行うという。しかし、火力発電の調査だけでは済まされない。
 関電はプルサーマル再開にあたって、昨年10月23日に「品質保証体制は改善された」との報告書を出した。原子力安全・保安院は、この関電報告書を了承し、プルサーマル再開のお墨付きを与えた。
 しかし今回の事件は、関電の品質保証体制自体がいかにいい加減なものであったかを露呈した。品質保証に関する関電報告書は、今回のデータねつ造を行っていたのと同時期に書かれたものである。一方で火力発電所の検査データをねつ造しながら、他方でプルサーマルの品質保証体制が改善されたとは、到底信じることがでない。さらに昨年10月の関電報告書は、「社長の関与による品質保証体制の改善」をキーポイントにしている。それならなおさら、火力と原子力の区別など問題にならない。
 原子力安全・保安院は、関電の原発の定期検査の内容について、データねつ造や改ざんがないのか、プルサーマルに関する関電の品質保証体制について徹底した調査を行うべきである。

2004年6月1日