原子炉建屋が吹き飛んだ福島第一原発1号機など
冷却機能喪失で危険が迫る使用済燃料貯蔵プール

2011年3月14日 美浜の会

 水素爆発で原子炉建屋が吹き飛んだ福島第一原発1号機では、最上部にある使用済燃料貯蔵プールがむき出し状態になっている。そのプールでは、使用済燃料の冷却機能が失われているという。3月14日付朝日新聞は、東電が「使用済み核燃料について、過熱を防ぐ方法の検討を始めた」、「現場は放射線レベルが高く作業員が近づくのも困難」と報じている。政府の緊急災害対策本部・原子力災害対策本部の資料(3月13日付)でも、13日午後3時に「1号機に関し、使用済燃料プールの水の冷却方法について調整中」と書かれている。
 使用済燃料貯蔵プールでは、水を循環させて燃料を冷やす機構があるが、それが働いていないという。そうなると、燃料棒内の放射能が出す熱によって冷却水は沸騰し徐々に失われていく。燃料被覆管がむき出しになり高温になると被覆管材のジルコニウムが発熱酸化反応を起こしてますます温度が高まり、それがさらに酸化を促すという過程に入る。しかもその過程は燃料全体に急速に広がっていく。米国原子力規制委員会の文献では、このような事象をジルコニウム・ファイア(火災)と呼んでいる。
 そうなると、燃料被覆管はボロボロになり、燃料中の放射能からまずは揮発性のルテニウムが、さらにセシウムなどが飛び出してくる。これらの放射能は青天井から自由に飛び出し、風に乗って流れていき深刻な被害を住民に与える。このプールには燃料50トン(1号機炉心の73%)分の放射能が現在蓄えられている。
 同様の事態が、第一原発の3号機や2号機でも起こる可能性がある。そこには合計約170トンの燃料が貯蔵されている。さらに、別の共用プールには1097トンが貯蔵されている。合計では1号機の炉心にある燃料の29倍分もの放射能が存在しており、それら全体に危険が迫っている可能性がある。
 使用済燃料貯蔵プールの冷却機能の実態がどうなっているのか、東電と政府は早急に明らかにするべきである。

昨年来日した米国の市民団体Beyound Nuclearのケビン・キャンプス氏が、今回の事故について、使用済燃料プールの沸騰の危険を指摘しています。
http://www.beyondnuclear.org/home/2011/3/12/fukushima-dai-ichi-unit-1-reactor-schematic.html



(11/03/14UP)