大飯原発で事故が起これば大阪でも大きな被害
大飯3・4号の再稼働反対
 3月16日、大阪府は、若狭の原発で事故が起こった場合に発生する大阪府内の甲状腺被曝線量の推測値を公表した。滋賀県は、地域防災計画を見直すために、専門機関に依頼して独自に放射性ヨウ素の拡散予測を実施していた。大阪府が滋賀県からこの拡散予測図の提供を受け、公表したものだ。
 右図は、大阪府が公表した大飯原発で事故が発生した場合の線量マップを元に作成したものである。この図を見ればわかるように、大阪府の東部一帯、25市町村にまたがる広範な地域の住民が、事故が起これば甲状腺に50mSv以上の被曝を受けることになる。(※1)
 チェルノブイリでは、事故後、子供たちを中心に甲状腺がんの発生数が10倍以上に増加した。汚染地域で実施された子供と青年を対象にした影響調査によると、甲状腺線量が平均50mSvという比較的低線量の被曝グループでも、甲状腺がんのリスクが有意に上昇したとされている。(※2)
 大阪府の公表結果に基づけば、少なくとも該当区域に暮らす300万を超える人々、とりわけ子供たちが、甲状腺がん発生のリスクを背負わされることになる。
 甲状腺がんを防ぐための安定ヨウ素剤について、
(図をクリックすると拡大画像が表示されます)
IAEAは50mSvを投与の一般的な基準としている。WHOはさらに低く、ヨウ素剤の予防的服用の参考値として10mSvを示している。原子力安全委員会は昨年12月7日の防災専門部会被曝医療分科会で、現行基準の100mSvを50mSvに引き下げる意見のとりまとめをおこなった
 国はPPZ(ヨウ素剤配布等の対策地域)のめやすを50kmとしているが、大阪府公表の予測図はそれをはるかに超え、100km圏まで深刻な甲状腺被曝が発生することを明らかにしている。
 ただ、この予測図には、不十分かつ過小評価となっている部分がある。ヨウ素剤の投与基準となる50mSvで線引きされ、50mSv未満の被ばく線量については、どのようなひろがりを持っているのか明らかにされていない。WHOが10mSvを一つの基準としていることを踏まえれば、50mSv未満の領域についても評価結果を公表すべきである。また、拡散予測は、放出時間6時間、ヨウ素の総放出量を2万4千兆ベクレルとして計算されている。福島原発事故におけるヨウ素の放出量は15万兆ベクレル(4月12日 安全委員会発表)である。福島事故の放出量に基づいて評価しなおせば、さらに被害範囲は拡大することになるはずだ。
 それでも、今回、このヨウ素の拡散と甲状腺被曝の予測は、ひとたび関電の原発が重大事故を起こせば、大阪府内にも広範で深刻な被害が及ぶことを明確に示している。大飯3・4号の運転再開は絶対に許されない。

※1:島本町(人口3万人)、高槻市(35万)、茨木市(28万)、摂津市(8万)、枚方市(40万)、交野市(7万)、寝屋川市(24万)、守口市(14万)、門真市(13万)、四条畷市(6万)、大東市(13万)、大阪市(該当区/鶴見区:11万、城東区:16万、東成区:8万、生野区:13万、平野区:20万)、東大阪市(51万)、八尾市(27万)、柏原市(7万)、松原市(12万)、堺市(該当区・三原区:4万、東区:8万)、藤井寺市(7万)、羽曳野市(11万)、太子町(1万)、河南町(1万)、富田林市(12万)、大阪狭山市(6万)、河内長野市(11万)、千早赤阪村(6千)

※2:「チェルノブイリ事故によるベラルーシとロシアの汚染地域における小児被ばくと甲状腺がんリスク(British Journal of Cancer (1999) 80(9))」(P.Jacobら)


(12/03/26UP)