大飯原発3・4号の地震動の過小評価等に関する質問書

「活断層の3連動で760ガル」は断層モデルに基づく評価
審査指針では、応答スペクトルに基づく評価とあわせ「双方の実施」を求めている
断層モデルだけで760ガルと断定するのは審査指針に違反

原子力安全・保安院長 深野 弘行様

 大飯3・4号の運転再開の安全性確認について、大飯原発近傍の活断層、FoB−FoA−熊川断層の3連動問題が大きな焦点になっています。おおい町、福井県、小浜市はもちろんのこと、事故になれば被害を受ける関西一円の自治体と住民の間でも、また全国の人々が、保安院の評価について大きな関心を寄せています。同時に、現行の2連動で700ガルなのに、3連動で760ガルとは、あまりにも過小評価ではないのかと、多くの人々が疑念を抱いています。
 この問題は、3月27日の政府交渉とも関連する問題であるため、いつものように、下記質問について書面での回答を求めます。回答は4月4日までにお願いします。

1.「活断層の3連動で760ガル」との断定は国の耐震設計審査指針に違反

 3月28日の「地震・津波に関する意見聴取会」で、大飯原発に関する活断層の連動について、保安院は次のような判断を示しました。
   「FoB〜FoA断層と熊川断層については、念のために連動を考慮した地震動評価結果(760ガル)が事業者より示されており、妥当と判断する。更に、この地震動を用いた施設の耐震安全性評価の実施が必要」
http://www.atom.pref.fukui.jp/senmon/dai68kai/2-1.pdf

 このように、「活断層の3連動で760ガル」という評価について、保安院は、断層モデルを用いた評価であると、30日に行われた福井県原子力安全専門委員会の場で説明しました。

(1)760ガルを基準地震動と見なすのですか。また機器や制御棒などの耐震安全性評価はこの760ガルの地震動に基づいて行うのですか。

(2)原子力安全委員会の「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(2006年9月19日、原子力安全委員会決定)では、基準地震動の策定について下記のように明記されています。
   「@)の応答スペクトルに基づく地震動評価及びA)の断層モデルを用いた手法による地震動評価の双方を実施し、それぞれによる基準地震動Ssを策定する」(下線は引用者。以下同)。
http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/1/si004.pdf (4頁の「5.基準地震動の策定)

 しかし、760ガルは断層モデルによる評価であり、応答スペクトルに基づく評価は行われていません。このことは、「安全設計審査指針」が求めている「双方を実施し」に違反しているのではないですか。なぜ、「双方を実施し」を守らずに、断層モデルによる760ガルだけで、「妥当と判断」したのですか。

(3)現行の2つの活断層の連動による基準地震動700ガルは、応答スペクトルに基づく評価です。3つの活断層が連動した場合、応答スペクトルに基づく地震動評価の値を示してください。


2.耐震安全性評価の確認は、当然、再稼働の前に行うべき

(1)3月30日の福井県原子力安全専門委員会に保安院が提出した資料2−2(または、地震・津波15−2−1,6頁)では、3連動等に関して、「耐震バックチェックにおける地震動評価の今後の予定について」という図式が示されています。
http://www.atom.pref.fukui.jp/senmon/dai68kai/2-2.pdf

 大飯原発3・4号の耐震安全性評価の確認は、当然、再稼働の前に行うという理解でいいですか。

(2)その図には、「事業者による耐震安全性評価結果の確認及び耐震補強計画の策定」が書かれていますが、これはある機器等の評価値が評価基準値を超えた場合、運転のためには補強計画が必要だということですか。

(3)同時に、同資料では、「事業者による耐震安全性評価結果の確認及び耐震補強計画の策定」までしか書かれていません。
 これは、実際に補強工事をしなくても、策定された補強計画を規制当局が確認すれば再稼働を認めるという意味ですか。


3.耐震安全性評価の基準は、ストレステストのクリフエッジ(崖っぷち、Ssの1.8倍=1260ガル)とは別の基準

 3月30日の福井県原子力安全専門委員会に保安院が提出した資料2−3(または、地震・津波15−2−1添付資料)の3頁では、次のように記載されています。
   「さらに、地震動評価における不確かさを考慮したケースについて評価した結果、大飯3・4号機ストレステスト1次評価で確認したクリフエッジ(基準地震動Ss−1の1.8倍)を下回る。」
http://www.atom.pref.fukui.jp/senmon/dai68kai/2-3.pdf

 しかし、ストレステストによるクリフエッジ(崖っぷち)は、炉心溶融の一歩手前の「基準」であり、そのような崩壊ギリギリの値と、耐震安全性の評価基準とは別もののはずです。

(1)この資料には出所が書かれていませんが、元は関西電力作成の地震・津波(活断層)4−2−2、29頁だと思われます。原子力安全・保安院としてそのまま認めたということですか。

(2)耐震安全性評価の基準については、ストレステストのクリフエッジとは別に、相当な安全余裕(裕度)をとって、設定しているのではないですか。

(3)3月27日の政府交渉で確認したように、現在も有効である従来の耐震安全性評価では、大飯3・4号の地震時の制御棒挿入時間について、評価基準値(許容値)2.2秒、評価値2.16秒ということでした。
 この場合は、評価基準値と評価値の間の余裕はわずか2%しかありません。3連動の場合に、仮に760ガルを採用しても、制御棒挿入時間は評価基準値の2.2秒を超えるのではありませんか。その場合、大飯3・4号の運転はできないのではないですか。


2012年4月3日

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(12/04/03UP)