2011年7月5日

福島市における放射能汚染の実態および避難区域設定に関する共同声明

 面的に広がる福島市内の放射線量の高さと土壌汚染の深刻さ

自治体による測定や市民団体による調査により、避難区域外でも、放射能汚染が面的に拡大していることが明らかになってきています。例えば、6月の中旬に福島市が実施した測定では、同市渡利地区では、毎時3.2マイクロシーベルトを超える高い汚染地域が面的に広がっていることがわかります。これは国が避難区域の基準としている年20ミリシーベルトを上回る可能性が高い値です。しかし、国が積算線量を算出するための測定ポイントは少ないために、このような地域は国の調査対象外となっています。

また、国の避難基準「年20ミリシーベルト」は、土壌汚染の実態を無視しています。

例えば、セシウムによる土壌汚染のレベルは、国の測定ポイントである福島県庁でチェルノブイリ事故後の「移住の義務区域」(555,000ベクレル/平方メートル以上)に匹敵するほか、5月26日に実施した市民団体による市内4地点における土壌汚染調査において、各地点がチェルノブイリ事故後の「移住の義務区域」「移住の権利区域」の基準に達しています。また文科省と米国エネルギー省(DOE)の航空機モニタリング調査によれば、80km圏内にも、チェルノブイリ事故後の「移住の権利区域」に相当する地域が存在します。土壌汚染という長期的な汚染を考慮すれば、福島県内はもとより広範囲な地域が極めて深刻な状況にあります。しかし、国はこれらの地域については避難拡大の措置などを行っていません。

 これだけある「年20ミリシーベルト」の問題点

さらに、「年20ミリシーベルト」を基準とした避難区域の設定については下記の問題があります。
内部被ばくを考慮に入れていない。
チェルノブイリ事故においては、「移住の義務区域」は土壌汚染555,000ベクレル/平方メートル(年5ミリシーベルト)以上、フランス政府機関は日本に対し年10ミリシーベルトでの避難を勧告した。「年20ミリシーベルト」はこれらをはるかに超える高い基準である
放射線に対する感受性が高い妊婦・乳幼児・子どもを考慮したものではない。

 「避難の権利」確立を

福島には、放射性汚染のリスクとその不確実性を目の前に、自分や家族を守るために避難したいのに避難できないでいる人たちがたくさんいます。避難できない大きな理由の一つが、国が定めた避難区域の外に住んでいることです。避難区域の外であるだけで、避難は自己責任と認識されてしまい、補償や行政的なサポートが得られる保証がなく、職場や学校の理解も得ることができません

私たちは、すべての住民は、自らの被ばくのリスクを正しく知り、自らの判断で避難をする権利、すなわち「避難の権利」を有していると考えています。

私たちはこの考えに基づき、以下を求めます。

1. 空間線量や土壌汚染の実態に鑑みて、現行の避難区域外においても線量が高い地域を避難区域に設定すること。とりわけ妊婦や子どもたちの避難を早急に実施すること。
2. 「年間20ミリシーベルト」以下であっても、住民が自らの判断で避難を行うことを支援する区域を設定すること。
3. 自主避難を行う住民に対して、補償に加え、行政サポートを提供することを明言すること。

以上

発出団体:
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
国際環境NGO FoE Japan
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

(11/07/05UP)