申  入  書

福島原発では同時多発的な炉心溶融・爆発事故が進行し、多くの住民が被曝

関西電力の原発も巨大地震と大津波には耐えられない
原発震災で炉心溶融・爆発事故が起きてからでは手遅れ
全ての原発を停止することを求める

関西電力(株)社長 八木 誠 様

 私たちは、目の前で進行している原発震災に恐怖を感じるとともに、激しい怒りの念でいっぱいだ。
 「原発の耐震安全性は万全」、「非常用電源があるから大丈夫」、「炉心溶融事故は日本では起きない」等々、政府や電力会社が繰り返してきた宣伝は、まったくデタラメだった。
 第一原発3号機敷地の放射線量の最高値は、400mSv/hにも達している。一時間で年間の許容線量の400倍にもなる。

●福島第一原発で同時多発の炉心溶融・爆発事故
 11日に起きたマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震は、巨大な地震のエネルギーと10mを超す津波によって、東北地方に壊滅的被害をもたらしている。
 さらに、想像を絶する深刻な原発事故が同時多発的に進行している。福島第一原発1号機(12日)と同3号機(14日)では、炉心溶融に続き水素爆発によって原子炉建屋が破壊された。
 第一原発3号機は、昨年からMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料)を装荷したプルサーマル炉である。燃料棒の約半分(2m)が露出し、燃料被覆管は水・ジルコニウムの酸化反応を起こし、発生した水素が原子炉建屋内に溜まって大爆発を起こした。核燃料の溶融が始まっていた。プルサーマル炉での炉心溶融・爆発事故は、プルトニウムを含む放射能を環境へ放出しているに違いない。
 第一原発2号機では、燃料棒が全て露出し、ついに格納容器が損傷した(15日)。異常な放射能放出が続き、最悪の事態が続いている。
 定検で停止中の第一原発4号機では、電源喪失が続き、使用済燃料プールで火災が発生している。

●放射能放出は続いている。放射能は爆発によって約8時間後には120q離れた女川原発にも到達。最も優先されるべき住民避難を遅らせた責任は重大。住民避難を最優先に。
 福島第一原発では、爆発以前から、原子炉と格納容器の圧力を下げるため、放射能を含む蒸気を大気中に放出し続けている。希ガスはもとよりヨウ素やセシウムなどの放射能が放出されている。「原子炉と格納容器は守られている」と繰り返し報じているが、そのために大量の放射能を含むガスを放出し続けていることはほとんど知られていない。
 さらに、第一原発1号機の爆発によって放出された放射能は、風に乗り、約8時間後には、約120q離れた女川原発のモニタリングポストに到達している。
 11日の地震発生(14時46分)当初から、福島第一原発は電源喪失、非常用電源が使えない状況にあった。この初期の時点で、炉心溶融等の最悪の事態を予想できていた。それにもかかわらず、最も最優先されるべき住民避難は、小出しで、後手後手にまわり、多くの人々が放射能にさらされる深刻な事態になっている。住民避難の指示を最初に出したのは福島県で、11日20時50分に第一原発から半径2q圏内の住民に対して出された。政府が出した避難指示は、その後、同日21時23分に3q圏内に広げること、翌12日の5時44分に10q圏内へ、第一原発の建屋爆発から約3時間後の18時25分に20q圏内に広げる等。住民避難を遅らせた政府の責任は重大だ。すでに放射能は茨城県に到達し、広範囲な住民避難が最優先されなければならない。

●政府による事故と放射能放出に関する情報統制。「たいした被曝ではない」と繰り返す御用学者達
 政府も東電も事故と放射能放出等の情報は隠ぺいし、情報統制を行っている。「念のための避難」など、事故と被曝の影響を小さく見せようとしている。さらにテレビに出ている御用学者達は、年間の自然放射線レベルと、事故による一時間あたりの放射線レベルを比較して「たいしたことはない」等と、ハレンチ極まりないデマを平気で振りまいている。

●使用済燃料プールが沸騰する新たな危険
 建屋が爆発した原発では、さらに深刻な危険が待ち受けている。建屋の最上階にある使用済燃料プールは露出状態になっている。プール水を冷却する循環ポンプは電源喪失のため働いていない。使用済燃料が出す熱によってプール水は蒸発し続けプール水の沸騰の危険もある。大気に露出しているプールから放射能放出の危険がある。放射線レベルが高いため、これを防ぐための手だては現在何もなされず、情報も隠されている。今日、第一原発4号機では、プールで火災が発生している。

●関電の原発は巨大地震と大津波に耐えられない
 関電が耐震安全性評価に用いた地震の規模は、今回の地震の250分の1(大飯・高浜原発)
 関西電力の若狭にある美浜・大飯・高浜の11基の原発も、巨大地震には耐えられない。関電の耐震安全性評価では、最大の地震規模として、美浜原発でM7.7、大飯・高浜原発でM7.4の評価しか行っていない。今回のM9.0と比べた規模は、美浜原発で約90分の1、大飯・高浜原発で250分の1しかない。関電は、和布−干飯崎沖(メラ-カレイザキオキ)断層から関ヶ原断層にいたる約100qの活断層の連動によるM8クラスの評価さえしりぞけた。今回の東北沖大地震では、約400q以上にわたる活断層が連動して動き、M9.0の地震を引き起こした。この現実をみれば、関電の原発が巨大地震に耐えられないことは明らかである。さらに、関電の原発は、わずか2mの津波にも耐えられない。
 若狭の原発で原発震災が起これば、若狭・福井県は壊滅状態に陥り、隣接の京都府はもとより、約100qに位置する大阪にも、そして関西全域に放射能は到達する。関西の水瓶である琵琶湖は汚染され、甚大な被害が起こることは明らかだ。

 原発震災が起きてしまってからでは、取り返しがつかない。原発推進路線からの脱却しかない。

申し入れ事項

1.関電の原発は巨大地震と大津波に耐えられない。原発震災を防ぐため、関電の全ての原発の運転を停止すること。
2.プルサーマル計画を破棄すること。
3.老朽炉美浜1号機の後継用新原発の計画を破棄すること。
4.和歌山県御坊市での中間貯蔵計画を破棄すること。

  2011年3月15日
    グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
        京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
    美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
        大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(11/03/15UP)