質問・要請書
ストレステストや「緊急安全対策」は福島原発事故の実態を踏まえていません
津波の前に地震動で配管が破損した可能性を調査すべきです
◆定期検査で停止中の原発の運転再開はやめてください
◆「やらせ」問題の調査対象を全ての電力会社に拡大し、
  調査結果の詳細を公開し、責任を明らかにすべきです

総理大臣 野田佳彦 様
経済産業大臣 枝野幸男 様
原発事故担当相 細野豪志 様
原子力安全委員会委員長 班目春樹 様

要   請   事   項

1.福島事故の実態を無視したストレステストや「緊急安全対策」で、運転再開を了承しないこと。
2.津波の前に地震動で配管が破損した可能性について、実態に即して検証すること。
3.「やらせ」調査の対象を全ての電力会社に拡大し、調査結果の詳細を公開し、責任を明らかにすること。

質   問   事   項

1.地震による配管破損の可能性について
(1)福島第一原発1号機では、地震発生から約3時間後の17:50に、早くも原子炉建屋内に入ったあたりで計器が振り切れるほどの高い放射線量が測定されている。
この事実は、原子炉圧力容器から出ている配管(たとえば非常用復水器(IC)系配管)が、地震により格納容器外で破損したことを意味しているのではないか。
それ以外の放射能放出ルートがあるなら、それを具体的に示されたい。

(2)3号機について、6月のIAEAへの報告書の中で「HPCI系統からの蒸気流出の可能性がある」と記述したことは撤回していないか。

(3)8月19日に開かれた石川県原子力環境安全管理協議会で、原子力安全・保安院は「東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた志賀原子力発電所の安全確認について」の報告を行った。その報告の中で、地震による配管等の破損は一切ないと説明したのか。

2.耐震安全性の評価について
(1)配管が破損していれば、東電の評価基準値より相当に小さな力で破損したことになり、耐震安全性評価は破綻するのではないか。
同様の評価を行うストレステストも意味を失うのではないか。

3.ストレステストの結果に関する判断基準について
(1)電力会社が出してくるストレステストの結果の評価に関する、国の判断基準は何か。

(2)さらに、ストレステストの結果については、首相等4者による政治的な判断を行うとのことだが、その政治判断の基準は何か。

4.原子力安全委員会の権限について
原子力安全委員会は8月11日、泊原発3号機の本格運転再開に際して委員会で議題としてとりあげたが、原子力安全委員会としての検討や判断については何も示さなかった。班目委員長はこれについて、「泊3号の安全性、定期検査については、保安院がしっかりとやるものです。今日の議題にあげたのは保安院が報告したいからと言ったからです」と述べた。このことは、安全委員会としての「ダブルチェック」の機能も果たさなかったことを示している。今回のストレステストによる運転再開の判断にあたって、原子力安全委員会はどのような権限を有しているのか。


[質問・要請書の趣旨]

 現在、54基の原発の内、43基が運転を停止しています。稼働中の原発も今後順次定期検査に入り、来年春には全ての原発が停止することとなります。このような中、政府は、停止中の原発の運転再開を進めようとしています。電力各社が進めているストレステストの結果を原子力安全・保安院と原子力安全委員会が評価し、首相、官房長官、経産大臣、原発事故担当大臣の4者で政治的に判断するとされています。
 電力各社は15基の原発でストレステストを実施中です。関西電力は大飯3号機のストレステストを既に終了し、9月中にもその結果を国に報告し、運転を再開しようとしています。

 しかし、ストレステストは、コンピュータ解析によって設備や機器の「裕度」をみるというものでしかありません。福島原発事故の実態とはなんら関係のないものです。新潟県の泉田知事は「気休めでしかない」と述べ、また福井県の西川知事は、福島の事故の教訓や老朽化対策を評価した安全基準の設定などを国に求めています。また、「緊急安全対策」は、消防車の配置など小手先の津波対策だけです。

 また、政府は来年春に「原子力安全庁」を設置するとして、新たな体制で臨むことを表明しています。そのような中、福島原発事故に重大な責任があり、さらに「やらせ」まで発覚した保安院が、運転再開についての安全判断を行うことを認めることはできません。

◆東電や保安院の事故シナリオは事故の実態を反映していない
 ――17:50に既に原子炉建屋に放射能が充満している事実に反する
 地震動でIC(非常用復水器)系配管が破損した可能性を調査すべき
 公表されている事故資料から、津波の前に地震動で配管が破損した可能性が強まっています。福島第一原発1号機では、3月11日の地震発生からわずか3時間後の17:50に原子炉建屋内に放射能が充満しています。事故時に炉心を冷却するための非常用復水器(IC)担当の作業員は、放射線指示値が上昇したために撤収し、原子炉建屋内の外側エアロック入口付近では線量計が振り切れるほどでした。
 17:50に原子炉建屋に放射能が充満している事実は、東電や保安院の事故シナリオでは説明することができません。例えば保安院のシナリオでは、逃し安全弁のルートで格納容器内の圧力が高まり始めるのは11日の18:20頃であり、20:20頃に圧力容器が破損することになっています。これでは17:50に原子炉建屋に放射能が充満するはずがありません。地震動でIC系配管が破損した可能性について、具体的に検証すべきです。

◆評価基準値より小さい力で配管が破損したことになれば、耐震安全性評価は破綻
 東電は、福島第一原発の原子炉停止時冷却系配管の評価基準値は414MPaで、今回の地震によって配管がうけた力の計算値は228MPaとしています。よって、地震によって配管にかかった力は評価基準値内であるため、配管等は「安全機能を保持できる状態にあったと推定されます」と評価しています。
 しかし、上記のように、IC系配管が地震で破損していれば、評価基準値より相当に小さい力で破損したことになり、耐震安全性の評価は破綻してしまいます。そうすれば、東電のみならず、全ての原発の耐震安全性が信用できないことになります。同様の評価を行うストレステストも意味を失います。
 
◆「やらせ」の調査対象を拡大し、調査結果の詳細を公開し責任を明らかにすべきです
 住民説明会での保安院や電力会社、地元首長による「やらせ」問題が次から次に発覚しています。地元はもちろんのこと全国で保安院に対する怒りと不信が高まっています。
 経産大臣が設置した第三者調査委員会は、8月30日に「中間報告」を出しました。しかし、その「中間報告」は、わずか8頁にすぎず、内容も紋切り型で、具体的な「やらせ」の実態が分かるようなものではありません。「中間報告」で「やらせ」が認定されたのは3件ですが、41件の全ての調査対象について9月末には最終報告を出すとしています。また、「中間報告」での調査内容(延べ約70名のヒアリング、電子メール等)は公開されていません。
 「やらせ」調査の対象を全ての電力会社に拡大し(現在は関西電力、北陸電力、日本原電は調査対象外)、調査結果の詳細を公開し、責任を明らかにすべきです。

2011年9月28日

提出団体:22団体
Shut泊
花とハーブの里
止めようプルサーマル!止めよう核燃料サイクル!女川原発地元連絡会
東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める実行委員会
浜岡原発を考える静岡ネットワーク
eシフト
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
原子力資料情報室
福島原発事故緊急会議
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
原発からいのちとふるさとを守る新潟県民の会
原発震災を案じる石川県民
原発設置反対小浜市民の会
プルサーマルを心配するふつうの若狭の民の会
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)
島根原発増設反対運動
原発さよならえひめネットワーク
玄海原発プルサーマル裁判の会
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
反原発・かごしまネット

  連絡先団体
    国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
      東京都新宿区西新宿 8-13-11 NFビル2F TEL 03-5338-9800 FAX.03-5338-9817

    国際環境NGO FoE Japan
      東京都豊島区池袋3−30−8−1F TEL 03-6907-7217 fax 03-6907-7219

    福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
      東京都新宿区神楽坂2-19 銀鈴会館405 共同事務所AIR TEL/FAX 03-5225-7213

    グリーン・アクション
      京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

    美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)
      大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581



(11/09/28UP)