粉塵が沈着するとき
When the dust settles

劣化ウランは、これまで考えられていたより、ずっと危険かもしれません。
――そして、私たちは、来るべき多くの世代のために放射性降下物を処理することになるでしょう。


イアン・サンプルとニック・フレミングが報告
2003年4月17日木曜日 ガーディアン



言葉遣いの変化は、初めは無内容なように見えます。1991年の湾岸戦争の際、米軍のガイドラインが、飛来する装甲貫通弾からの金属塊に当たった兵士から劣化ウラン弾の破片を取り除くために軍医は最善をつくすよう勧告しました。実際には、小さな弾の破片はまれにしか取り除かれなかったことを意味しました。劣化ウラン弾の破片を取り除くことは周辺の筋肉や他の諸組織にさらなる損傷を引き起こしました。今日では、このガイドラインは次のように変わっています。軍医はいかなる劣化ウラン破片でも取り除くことに「積極的」であるべきです。この小さな変更は、劣化ウランよる脅威についての理解を飛躍的に覆しています。劣化ウランは、十分無害だと考えられているレベルでさえ、科学者達が考えているよりもっと多くの遺伝子損傷を引き起こすということの証拠が作り上げられています。

劣化ウラン弾は死に至らしめるために作られています。この金属は十分密度が高いので、最新式戦車の重装甲を撃ちぬくことができます。しかし、意図した効果を免れた人々は他の危険性に遭遇します。装甲貫通弾内の劣化ウラン芯が分解した際、有毒で弱い放射能粉塵と破片が広域に降り注ぎます。

被ばくの危険性があるのは兵士ではありません。イラクにおいて、人々がかつて居住し、疑いなく帰ってくるだろう土地には、今では、この物質がばらまかれています。1991年、約340トンの劣化ウランを含む装甲貫通弾が、あまりに硬いので通常弾では破壊できないような攻撃目標に向けて発射されました。数百トン以上[の劣化ウラン]がこの4週間で追加されました。劣化ウラン弾が使われた場所に戻ってくる人々は、風や交通で舞い上がった粉塵を吸い込みます。この金属は水供給源にも浸透し、数年間、そこを汚染するでしょう。

メリーランドのベセスダにある軍放射能生物学調査研究所のアレキサンドラ・ミラーは、来年にも、米国防総省向けに劣化ウランに関する調査を完成する予定です。すでに彼女は、おこりうる損傷について、いくつかの見識を持っています。昨年、彼女はラットに埋め込んだペレットから劣化ウランがラットの全身にばらまかれ、骨や筋肉や腎臓や肝臓で見つかったことを示しました。6ヶ月後に出産したラットは通常のラットより少ない子を産みました。

彼女の最新の研究は、もっと異常なことさえ暴露しています。人の骨細胞が劣化ウランに被ばくした際、いくつかの細胞は即時的な遺伝子損傷にさらされます。損傷の種類は多様ですが、しばしば、ほとんど全ての細胞において、破片が遺伝子の連鎖である染色体を破壊し、小さな環状の遺伝子物質を形成します。これは十分に予想されていました。しかし、劣化ウランによって明かに損傷を受けていない他の細胞が、分裂を開始し、新しい細胞を形成する際、これらの新しい細胞のいくつかの細胞の遺伝子は損傷を受けていることにミラーは気づきました。劣化ウランを取り除いてから1ヶ月以上後に、新しい細胞が壊れた染色体、もしくは他の遺伝子損傷を形成しています。劣化ウランは遅発性の影響を持っていました。

より興味深いことは、ミラーの最近の疑問で、劣化ウランは遺伝子に損傷を与えるという観点で、重量以上の効果を与えるというものです。劣化ウランは、放射線によってだけでなく、ニッケルのように化学的構成によっても遺伝子に損傷を与えるだろうことを彼女は知っていました。−ニッケルは、低い毒性でガン細胞を活性化します。しかし、毒性がないほど少量で、緩やかに放射線を出す程度のわずかな劣化ウランが、その毒性や放射能が示すよりも多くの遺伝子損傷を細胞内で引き起こすことを彼女は見出しました。彼女の最新の結論は、劣化ウランの毒性と放射能は、お互いに強化しあって、両者が単にいっしょに加えられるときよりも多くの損傷を引き起こします。その違いは小さなものではありません。「あなたが予想していたよりも8倍の大きな影響があるでしょう」と彼女は言います。言いかえれば、遺伝子損傷をうける細胞が予想の8倍以上に増えることになります。この影響を考慮しなければ、劣化ウランの健康への危険性はひどく過小評価されることになるでしょう。

「人々は、低線量被ばくはたいした問題ではないといつも考えてきました、しかし、人々が考えているよりも多くの損傷が起こるでしょう。」とミラーは言います。劣化ウランの危険性が修正されるときかもしれませんが。「これらの研究のどれもまだ、規制制度に影響を与えてきていません。」

科学者達の間における見解は、劣化ウランによって引き起こされる遺伝子損傷の危険に関して分かれています。「この分野では論争があります。細胞中のDNA損傷が細胞をより弱くし、ガンになりやすくするように見えます。しかし、DNA損傷はまさに放射線に適合する細胞になりうると言う人もいます」とミラーは言います。

劣化ウランが引き起こす遺伝子の損傷が、実際の健康問題を引き起こすと確信している一人は、アルブレクト・ショットです。彼は、ベルリンの自由大学を最近退職した生化学者です。この湾岸戦争が始まる前日、彼は、ブレーメンの大学の科学者達と行ったある研究を公表しました。その種の最初のものであるその研究は、1991年の湾岸戦争で、あるいはバルカン諸国で、劣化ウランに被ばくしたと信じている16人の元兵士達の白血球中の遺伝子損傷を調べました。彼らは、白血球中の染色体の損傷が、帰還兵の場合は、人口のその他の人々より平均して5.5倍高いことを見出しました。

検査を受けた兵士の一人であるケニー・ダンカンは、彼が英国陸軍輸送隊と共に軍務に就いた時21歳でした。その部隊は、1991年の湾岸戦争で劣化ウラン弾によって破壊されたイラクの戦車を移動させることを支援していました。彼は、劣化ウランによる被ばくが、彼の家族に痛ましい後遺症を残したと信じています。彼の8歳の息子は、絶え間ない頭痛に苦しみ、耳とつま先は変形しています。彼の他の二人の子供もまた、つま先が変形しており、また二人とも腸と膀胱の問題で苦しんでいます。一人はまた部分的に耳が聞こえません。

その理由は劣化ウランのせいだろう、とショットは言います。「私たちが観察した高レベルの遺伝子損傷は自然には発生しません。私は、劣化ウランのアルファ放射線がこれら染色体異常の原因であると信じています。」

「血液中のウラニウム分子は、精子と卵子が存在する領域を含む、身体の全ての部分に移動することができます。このこと及び、染色体異常の存在は、癌および他の遺伝的疾患の可能性を著しく増加させます。それらは人の赤ん坊の中で遺伝的損傷のより高い可能性に導き、そして次の損傷は、子供の子供に引き継がれることができるのです。」

国防省のスポークスマンは、その研究を退けます。「私たちは、ドイツで試みられた検査がよく考え抜かれてもおらず科学的な根拠もないと考えている」と彼は言います。

ミラーもまた、ブレーメンの研究に疑問を抱いています。兵士達は、彼らが劣化ウランに被ばくしたと推測しました、しかし、どのようにしてそのことを確信できるのでしょう? 「彼らは武器洗浄液のような他のものにさらされなかったと、どうして分かるのか?」と彼女は尋ねます。

バージニア・マレーは、ロンドンのガイ病院で化学的事故への対応サービスを率いており、昨年劣化ウランに関する英国学士院の調査に加わりました。彼女は、人々に対する劣化ウランの影響は、彼らが被ばくした量が正確に分かっている場合、正確に評価することができる、と言います。将来の劣化ウランが使用された全ての紛争で、その金属に被ばくした兵士達について、ウラニウムのレベルが規則的に測定されるべきであり、また彼らの腎臓機能が害されていない事を確認するために検査されるべきだ、と英国学士院の報告書は勧告しました。

国防省のスポークスマンは、イラクで劣化ウランに被ばくしたと信じる兵士達は、帰国して彼らの尿を検査することができると言います。彼らが劣化ウランの検査で陽性と出た場合、彼らは腎臓の追加検査を受けることができます。

来週、国連環境プログラムは、イラク戦争によってもたらされた、劣化ウランによるものを含む環境上の危険に関する研究を公表するでしょう。UNEPのイラク特別対策本部の議長Pekka Haavistoは、科学者達が土、水および空気のサンプルをとり、劣化ウランの痕跡に関してそれらをテストするだろう、と言いました。「以前の経験に基づいて、目標とされたエリアでは、この種の弾薬が環境上および健康上のリスクをもたらす可能性があると、私たちは理解しています。私たちは、劣化ウランが土の中に浸食し、塵の中に長期間とどまることができることを知っています。」クリーンアップのないなかで−そしてペンタゴンはその[クリーンアップ]ためのどんな計画もないといっているのですが−、劣化ウランのホットスポットに戻る人々は、自分自身がまさに劣化ウランが本当に持っている影響をテストする、無意識のボランティアに他ならないことを見出すでしょう。

さらに理解するために
劣化ウラン弾の健康被害:パート1、英国学士院、2001年5月 ISBN:0854033540
劣化ウラン弾の健康被害:パート2、英国学士院、2002年3月 ISBN:0854035745
英国学士院報告書 http://www.royalsoc.ac.uk/policy/cur_du.htm