関電の中間貯蔵施設は永久の核のゴミ捨て場だ


2003年3月10日 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

はじめに
 和歌山県御坊市で関電の使用済燃料中間貯蔵施設を誘致しようとする動きが出ています。この施設を関電は「リサイクル燃料備蓄センター」と呼んで、そこの貯蔵物をいずれは再処理施設にもっていくと説明しています。ところが、その運び先の再処理施設とは、現在建設中の青森県六ヶ所村の再処理工場ではなく、次にいつの日かつくられるはずの幻の第2再処理施設のことです。
 現在の状況では、六ヶ所再処理工場さえまともに動く保証はありません。プルサーマルは停止状態にあるため、再処理工場は目的を失っています。使用済み燃料プールでは水漏れや不良溶接があり、いまは搬入がストップしています。加えて、推進に熱心な木村青森県知事は女性問題で窮地に陥っているからです。この状態で、第2再処理工場に期待などできるでしょうか。
 またこの施設の審査指針によれば、使用済燃料を「おおよそ40〜60年」は貯蔵することになっています。40年以上も経過すれば、何でも立派なゴミになるでしょう。長年経過して劣化したものを、再び安全に再処理工場に運びだせる保証など何もありません。それどころか、中身がどうなっているか確認すらできないというのです。このことを原子力安全委員会もはっきりと認めています。なんという驚くべきずさんな審査指針なのでしょう。
 どう見ても、中間貯蔵施設とは、人々をだまして使用済燃料を運び入れ、あとは野となれの核の永久ゴミ捨て場に他なりません。最大級の原発数十機分、広島原爆数万発分の放射能が、入れ物の朽ち果てるにまかせて放置されるのです。子や孫が生涯にわたって放射能の危険にさらされるのです。誘致の動きに強く反対しましょう。

1.最大級の大飯原発数十機分の放射能を貯蔵
 まず、中間貯蔵施設とはどんなものか、関電ホームページの「リサイクル燃料備蓄センター」の説明を見ましょう。御坊市では第2火力発電所の予定地に建設されるとのこと。そこに若狭の原発から九州を回って運ばれてきた使用済燃料を積んだ専用船が横付けされ、キャスクが荷揚げされます。使用済燃料キャスクは巨大で危険なため、陸路を通ることはできないからです。
 使用済燃料とは、死の灰やプルトニウムなどの放射能です。それが、ウランで3000〜5000トン分貯蔵され、最大級大飯原発のおよそ30〜50機分、広島原爆数万発分の放射能に相当します。

                              (関電ホームページより)

2.まぼろしの第2再処理工場に運び出すまで貯蔵

(関電ホームページより)
 「リサイクルされる燃料は準国産のエネルギーなので、資源の乏しい日本において、燃料のリサイクルは、エネルギーを有効利用するのに非常に有意義なシステムです」として、いずれは再処理工場に運び出すと関電は説明しています。再処理工場とは、使用済燃料の中からプルトニウムと燃えの残りのウランを取りだす施設で、それを右図の「再利用(ウラン・プルトニウム)」と書かれたルートでMOX燃料に成型加工し、普通の原発でプルサーマルとして利用しようというのです。
 ところが、中間貯蔵施設から運び出す再処理工場とは、現在青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場ではありません。いつ造られるのか計画さえ定かでない「新たな再処理工場」(第2再処理工場)だというのです。このことは、関電ホームページのQ&Aに次のように明記されています。六ヶ所再処理工場さえ本当に動くかどうか分からないのに、はたしてまぼろしの第2再処理工場が建設されるでしょうか。
Q.2 リサイクル燃料備蓄センターがなぜ必要なの?
A.2 現在は原子力発電所で貯蔵していますが、青森県六ヶ所村の再処理工場では、原子力発電所で発生するすべてのリサイクル燃料を再処理することができないので、新たに再処理工場ができるまでの間、燃料を貯蓄することができるリサイクル燃料備蓄センターが必要なのです。                    (関電ホームページより)

3.六ヶ所再処理工場さえ動く保証なし
 再処理工場で取り出したプルトニウムを使うはずのプルサーマル計画は、ほぼ完全に後退してしまっています。福島県と新潟県はプルサーマル承認を昨年白紙に戻し、関電のプルサーマルもまったく目途が立っていません。このような状態で再処理工場を動かせば余剰プルトニウムがますます増え、諸外国から核武装の意図があると、疑いの目で見られることは必定です。
 さらに再処理工場を動かすためには、日本原燃と青森県と六ヶ所村との間で安全協定を結ぶ必要があります。ところが、推進に熱心な木村知事が女性問題で辞職決議を県議会からつきつけられました。安全協定がいつ結ばれるか、きわめて不透明な状況になってきています。
 さらにいま、六ヶ所再処理工場では、使用済燃料を運び入れるプールで水漏れや不正溶接が発覚し、昨年暮れから運び入れが中止になっています。そして、六ヶ所再処理工場が動かないのに使用済燃料をそこに運び込めば、青森県は核のゴミ捨て場になるとの懸念が高まっています。

4.とりあえずの使用済燃料保管場所がどうしても必要―後は野となれ
 これまで関電は、使用済燃料の原発サイト内保管容量を増やすために、リラッキングというプール内でギューギュー詰にする措置をとってきました(資料1参照)。それでも、もし六ヶ所へ使用済燃料を運び込めない場合、例えば、美浜1号と2号では、後1回でも使用済燃料を取り出せばプールの管理容量を越えてしまいます。高浜1・2号では、後2回目の定検で管理容量を越えます。高浜原発(4機分)全体で見ても、後3回目の定検で越えてしまいます(資料1参照)。使用済燃料の問題は、それほど切迫した状況にあります。だからこそ関電は、将来再処理工場にもっていけるかどうかは二の次として、新たな保管場所の確保に必死になっているわけです。
 その一つの方法として、電力会社は原発サイト内に新たな保管場所をつくろうとしています。地方自治体が新たに課そうとしている使用済核燃料税を逆手にとって、税金を払う代わりに原発施設内への保管施設増設を認めろというものです。
 いずれにせよ、使用済燃料を再処理せずにそのまま永久に貯蔵する方式(ワンススルー方式)に向かうでしょう。再処理は高くつくという点から見てもそうです。「中間貯蔵施設」とは、その永久貯蔵のために、「中間」の名をつけて世間をごまかすための施設に他なりません。使用済燃料という核のゴミの後始末も考えずに原発を推進してきたツケを、人々に押しつけるものです。

5.現状では再処理工場に運びだせないことを安全委員会も認めている
(関電HPより)
 実は、この中間貯蔵施設から、使用済燃料を永久に運び出せないことを、原子力安全委員会自身が認めています。使用済燃料の中間貯蔵には、以下の根本的に矛盾した問題が含まれていて、その問題が現在まったく未解決なのです。
(1) 金属製乾式キャスクの2様の役目
 この施設の安全審査の基準となる安全審査指針では、乾式金属キャスクが対象となっています。まず原子力発電所の使用済燃料貯蔵プールの水中で、図のような金属製キャスク内のバスケットに使用済燃料集合体を入れ、上部に2重蓋をします。その後、容器内の水を抜き取ってヘリウムガスをつめて乾式にします。このキャスクが輸送容器として輸送規則に合っていることを確認するために、2重蓋をする前に、中の輸送物(使用済燃料)に欠陥がないかどうか目視で確かめます。
 そのキャスクを中間貯蔵施設に運び込んで、そのまま別の入れ物に積めかえることなく「おおよそ40〜60年間」安置しておくと指針は言っています。そして貯蔵期間がいつの日か終われば、そのまま再処理工場に運び出すことになっています。その時点ではキャスクは再び貯蔵容器から輸送容器に早変わりするので、現行規則では輸送容器としての安全性を確かめるために中の輸送物(使用済燃料)の状態を目視で確認しなければなりません。
 このように、キャスクは輸送容器-貯蔵容器-輸送容器という2様の性格をもっているのです。

(2) 貯蔵期間中「基本的安全機能」が守られねばならない
 中間貯蔵施設では、超長期の貯蔵期間中、次図のような4つの「基本的安全機能」が守られることが当然保証されねばなりません。すなわち、放射線を遮蔽する、除熱する、東海村JCOのような臨界事故を起こさない、中の放射能を閉じ込めて外に
施設の「基本的安全機能」(関電HPより)
出さないということです。このような安全機能を「おおよそ40〜60年」という超長期にわたって確認するためには、どうしても2重蓋を取り外して中の放射能の状態を点検する必要があります。
 この点指針では、指針21で、点検修理の必要性を認めています。指針21は「検査、修理等に対する考慮」で、「使用済燃料中間貯蔵施設は、安全上の重要性及び必要性に応じ、適切な方法により検査、試験、保守及び修理ができるようになっていること」です。
 その指針21の解説1では、「本施設においては、設計貯蔵期間を通じて、金属キャスクの基本的安全機能を確認するための検査及び試験並びに同機能を維持するために必要な保守及び修理ができるようになっていること。また、金属キャスクを本施設外へ搬出するために必要な確認ができるようになっていること」となっています。つまり、貯蔵中の超長期間に、キャスク等の安全機能の劣化することが、ここで想定されているのは明らかです。

(3) 点検のためキャスクの蓋を開けるととんでもない危険が起こる
 ところが驚くべきことに、この中間貯蔵施設では貯蔵期間中に、2重蓋はけっして開けないことになっています。なぜ開けないのでしょう。実は、蓋を開けたらとんでもない危険なことが起こるから開けないのだと、指針は「別紙」で述べているのです(資料2参照)。
 その「別紙」の後半部分では、蓋を開けることも考えられるが、蓋を開けると「金属キャスクの閉じ込め境界を破ることになり、作業員の被ばく低減や放射性物質の漏えい防止の観点から望ましくないばかりか、新たな事故の発生の原因ともなり、リスクの増大につながる」として、内部の使用済燃料が壊れている可能性をはっきりと認めています。
 確かに長年の間には、劣化が進みます。潮風にキャスクは蝕まれ、地震で激しく揺さぶられ、津波で海水に漬かることもあるでしょう。だから蓋を開けることをひどく恐れているのです。
 蓋を開ける場合、水の中に漬けて開けるため水が中に入ります。そのとき中の燃料集合体を隔てているバスケットが壊れていれば、東海村JCO事故のような臨界に達して中性子が大量に飛び出す可能性があります。そのことを「新たな事故の発生」として「別紙」は認めているのです。
 蓋を開けてしまえば、放射能の煙がむくむくと飛び出し、たちまち浦島太郎のおじいさん。或いはあらゆる悪魔が飛び出すパンドラの箱だとでもいうのでしょうか。そうでなくても、中が壊れているのを見てしまえば、輸送物として運びだすことができなくなるため、そこに永久保存するしかありません。本当は、そのことを恐れて蓋を開けないのかと疑いたくなるほどです。
 また他方、蓋を開けずに第2再処理施設に運び込み、そこで蓋を開けて燃料棒が壊れていたとすればどうなるでしょう。再処理工場のプールを放射能でひどく汚染してしまうことになります。これまでは、このような恐れがあるために、被覆管にピンホールでも開いた燃料棒は原子炉から運び出さないようにしてきたのです。

(4)わずかのサンプルを見て、すべての安全状態を確定
 これまで見てきたように、キャスクと内部の放射能状態を、指針21の通りに点検する必要がありながら、蓋を開けることはできないという矛盾が存在します。とりわけ、貯蔵終了後に運び出すときに、輸送物の安全性を目視で確認するという国の現行規定を守ることはできません。
 審査指針の作成過程で、このような矛盾が繰り返し繰り返し議論になりながら、結局解決することができませんでした。そのため、異例の「別紙」(資料2)を発して、原子力安全委員会に何とかしてくださいよとゲタを預けたというわけです。つまり、審議の過程ではこの問題はまったく未解決だったと、「別紙」でついに本音を吐露してしまっているのです。
 その「別紙」の結論は、「発送前検査の内容は、貯蔵中の金属キャスクの監視データ等の確認で代替できると考える」というものです。すなわち、輸送物としての安全性を、当のキャスクの中身を見て確かめるのではなく、他のサンプルキャスクの監視データで代替できると主張しています。これは例えて言えば、サンプルとなる数人の健康状態を診察して健康であると確認されれば、それと同様な状態にあるすべての人たちは健康だと判断するのと同じことです。しかし、例えばもし和歌山で地震が起これば、安穏な場所の監視データでは役に立たないことは明らかです。

(5)問題の未解決を原子力安全委員会も認めている
 そして「別紙」は最後に、「以上述べた発送前検査の代替の考え方及びその前提となる金属キャスクや収納物の長期健全性に関する知見の蓄積方法について、原子力安全委員会において検討されることを希望するものである」と述べています。何という無責任でしょう。いまは安全を保証するものが何もないがゆえに、代替の方法を考えてほしいと専門部会は原子力安全委員会にお願いしているのです。そして、原子力安全委員会は、部会の結論にすべて責任をもつ立場にあり、このお願いされた方式そのものを認めているのです。
 結局、中間貯蔵施設から再処理工場にキャスクを運び出すことは不可能だということです。この点も、中間貯蔵施設が永久的な核のゴミ捨て場になることを運命づけています。

6.子々孫々にまで厄災をもたらす核の永久ゴミ捨て場誘致に反対しよう
 結局、再処理工場をめぐる情勢から見ても、審査指針の重大な欠陥から見ても、中間貯蔵施設とは核の永久的なゴミ捨て場に他なりません。中間貯蔵施設は、例えて言えば使用済燃料というお客さんの泊まる宿屋でしょう。その客たちが、いったいいつ宿屋から出て行ってくれるのか、本当に出ていってくれるのかさえも、まったく定かでないことは資料3から明らかです。
 そして、その安全性は、仮に40年間ほどは保証されるとしても、その後どうなるか何も定かでないのです。子や孫たちが、いつ入れ物が壊れ流れ出すかもしれない膨大な放射能を目の当たりにし、びくびくしながら暮らしていかねばならないとは、そのことを想像するだけでもとても耐えきれないことです。
 そのような危険を子や孫に残さないために、中間貯蔵施設の誘致策動に断固反対しましょう。





(資料1:関電使用済燃料の発生と貯蔵状況、及び日本原燃の再処理計画)
「話題を追って」より
◆関電の使用済燃料
 関電の原発サイトにある使用済燃料貯蔵プールは、再処理工場に運び出せる量が限られているため、たちまち満杯になる恐れがでてきています。もし満杯になると、定検で取り出す使用済燃料の置き場がないため、原発から使用済燃料を取り出すことができなくなります。そうすると、最悪の場合、原発を止めなければならなくなります。
 このような事態を防ぐため、@右図にあるような、貯蔵プールの「リラッキング」と称して、燃料をぎゅうぎゅう詰めにする操作を実施してきました。これによって、例えば最近行われた大飯3号と4号のプール・リラッキングでは、これまでは貯蔵量がそれぞれ974体だったのを、各2129体に、約2.2倍も収納できるようにしています。Aもうひとつの措置として、例えば高浜原発には高浜1〜4号の4機の原発がありますが、ある号機のプールだけが切迫するのをやりくりするために、4機分の「共用化」が行われてきました。
 しかし、それでも使用済燃料プールは、もし六ヶ所再処理工場へ運びだすことが滞ると、たちまち困る状況にあることが次の表から分かります。次表で、例えば高浜計の場合では、定検回数2.4回で管理容量を超えるということは、3回目の定検で管理容量を超えるため、後2回の定検(約2年間)で運転ができなくなるということになります。


◆六ヶ所への搬入計画を考慮した全国原発サイトでの貯蔵必要量
 次に、日本原燃の再処理工場における使用済燃料受れ計画が予定どおり動いたとして、全国の既存の原発サイトでどれだけの使用済燃料が貯蔵されることになるか次の考えで見てみましょう。
@ 日本原燃が平成12年(2000年)11月に公表した使用済燃料受入計画に従って使用済燃料が六ヶ所再処理工場に運ばれるものとする。
A 全国の既存原発で発生する使用済燃料を年間900トンとし、新規立地及び増設の原発からの発生量は考慮しない(その分は、当分の間その原発サイトで保管されると考えられるから)。
 この考えで、合計年900トン発生している既存の原発が、自分のサイトで貯蔵する必要のある使用済燃料の1998年度からの増量を計算すると、下記グラフ(ダイヤ印)のようになります。

 この六ヶ所再処理工場への使用済燃料の年間受入量はあくまでも計画値です。実際は、受入プールの水漏れが新たにもう1カ所で発見され、不正溶接も明らかになったため、すでに2002年暮れから受入はストップしています。そのため、2002年度の受入計画量400トンは達成できなくなっており、実際は100トン少ない300トンどまりになることは明らかです。また、上のグラフから、六ヶ所使用済燃料受入貯蔵プールの管理目標値が約2600トンであることも分かります(貯蔵容量は3000トン)。
 仮に再処理工場が予定通り動いても、再処理量はせいぜい年800トンであるため、毎年100トンずつの使用済燃料をどこかで保管しなければならないことをグラフは示しています。

(資料2:審査指針「別紙」)
使用済燃料中間貯蔵施設における金属製乾式キャスクとその収納物の長期健全性について
                        平成14年7月10日 原子力安全委員会 原子力安全基準専門部会
 「金属製乾式キャスクを用いる使用済燃料中間貯蔵施設のための安全審査指針」(以下、中間貯蔵施設指針という)の調査審議にあたって念頭においた使用済燃料中間貯蔵施設(以下、中間貯蔵施設という)では、輸送・貯蔵兼用の金属製乾式キャスク(以下、金属キャスクという)により、使用済燃料を詰め替えずに40〜60年程度貯蔵することとしている。金属キャスク及び収納物の長期貯蔵に係る健全性を確保するために、本指針においては、金属キャスクの構成部材は長期間にわたり性能を維持できる設計であること、収納物は不活性ガスとともに封入されること、燃料被覆管は累積クリープ歪みによりその健全性を損なわないよう適切に除熱されること等を要求している。これらの要求に加え、金属キャスクが極めて静的に貯蔵されること、また、金属キャスクの蓋部の閉じ込め機能について、貯蔵期間中の監視とともに、異常が生じた場合の蓋の追加装着等、修復性に関する考慮を求めていることから、設計貯蔵期間を通じた貯蔵施設としての安全性は確保されると考える。
 貯蔵終了後の輸送の安全性を確認する観点からは、中間貯蔵施設内において、輸送前に金属キャスクの蓋を開放し、収納物、バスケットの状態を目視により確認する、あるいは金属キャスク内雰囲気の検査を行うことにより、金属キャスクや収納物の健全性を確認することが考えられる。しかし、これらの行為は、金属キャスクの閉じ込め境界を破ることになり、作業員の被ばく低減や放射性物質の漏えい防止の観点から望ましくないばかりか、新たな事故の発生の原因ともなり、リスクの増大につながる。こうした観点から、今般とりまとめた中間貯蔵施設指針では、金属キャスクの蓋を開放するための設備等は要求していない。従って、輸送の安全性を確認するための発送前検査においては、上述の目視確認等ではなく他の方法を採ることが必要となるが、この点につき、当専門部会は、金属キャスクを用いた使用済燃料の長期貯蔵の実績が少ないことに鑑み、発電所施設内での乾式金属キャスクを用いた貯蔵の状況の調査等により、設計貯蔵期間にわたる金属キャスクや収納物の健全性に関する知見の蓄積を図ることが必要と考える。蓄積された知見から、輸送中の安全確保も考慮した金属キャスクや収納物の長期健全性が確認されれば、発電所からの搬出の際に詳細に確認された輸送物としての安全性がその後の長期貯蔵期間中においても維持されると判断できる。よって、前述した発送前検査の内容は、貯蔵中の金属キャスクの監視データ等の確認で代替できると考える。
 当専門部会は、以上述べた発送前検査の代替の考え方及びその前提となる金属キャスクや収納物の長期健全性に関する知見の蓄積方法について、原子力安全委員会において検討されることを希望するものである。

(資料3:総合エネルギー調査会原子力部会第53回議事録(抄)1998年4月22日)
木元委員: 今度、中間貯蔵業者という新たな実施主体を作るわけですね。それが電気事業者や倉庫業の民間企業であるということですけれども、国がどの程度関与するのか、しないのか、という問題が一つ。
 そして、今、前田さんがおっしゃったように、「これは使用済燃料ではなくて、リサイクル燃料資源である」という考え方を私もしたいと思います。そうしますと、「3.」のところにいろいろ書いてありますが、こういう発想でいいのか。
 つまり、使用済燃料をお預かりする場所を敷地外に出して、どこかに任せるとなると、宿屋を建てるわけですね。宿屋が貯蔵所ですよね。その宿屋にお客が入ってくるわけです。お客が使用済燃料、リサイクル燃料資源ですね。大事なお客です。そうなった場合に、今度は「4.」から見たときに、「今度、宿屋ができるぞ」という感じになりますね。この宿屋は何を預かるのか。とても大事なもので、必要なものだということで、もし仮に合意がとれたとすると、この宿屋はいつまで営業期限をもっているのか、宿屋にお客が泊まる場合にお客は宿料はどれくらい払うのか、そして、宿屋を建てることによって得た利益を地元にどの程度還元できるのか、そういうことがまだ見えてこない。
 それから、お泊まりいただくお客がいますね。キャスクに入ったドラム缶ですけれども、このお客に滞在期間というものを制限するのか、しないのか。ずうっと延々長逗留されたら困るということがあるか、そのときにはもう少し宿料を高く取るとか、そういった発想で考えていく必要があるのではないか。そうすると、地元にイメージが見えてくるわけです。いいお客と見るのか、悪いお客と見るのか、そのへんの違いがありますけれども、そういう発想でいいわけですか。

鈴木原産課長:3点ご質問いただいたと思うんですけれども、1つ目は、国がどういうふうに関与していくのかということで、この検討会でまとめました考え方は、安全規制をしっかり行っていく、という考え方でございます。今日、竹内委員にご出席いただいておりますけれども、日本原燃が再処理を行うときに私どもは安全規制を行うということでございまして、その事業の主体の中に出資とか、そういうことをすることは想定しておりません。ただ、規制をしっかりしていく、というのが考え方でございます。
 ただ、併せまして、今、プルサーマル、それから原子力発電について私どもはできるだけ地元のほうにお伺いいたしまして説明、PAを行っておりますので、その事業主体には入りませんけれども、当然ながらPA活動とか、そういうのは前面に立ってやっていきたいと思っています。これが国の関与で今、考えていることでございます。
 それから、では、どういうような期間を考えているのか、というご質問だと思うんですが、この施設で10年間、20年間、30年間置いておく使用済燃料もあると思います。片や、ある使用済燃料はいったんこの中間貯蔵施設に入りまして、それから5年、10年経ったときに再処理工場のほうに持っていくということで、一律に40年なら40年そこに貯蔵をするということではなくて、個々の使用済燃料によって貯蔵の期間は違ってくるかと思っております。
 それから、最終的に出ていくことをどういうふうに担保するのか、中間ということを担保するのか、という非常に難しいご質問でございますが、必ず再処理を行うという今の核燃料政策を遂行していくという方針をいつも明確化していく、かつ今、日本原燃さんのほうで進めていらっしゃいます再処理事業を着実に進めていくということが最大の担保かなと考えております。