使用済燃料「中間貯蔵」施設は核の永久ゴミ捨て場だ
再処理にも、中間貯蔵にも反対しよう


 使用済燃料「中間貯蔵」施設の計画が、強引に推し進められています。青森県むつ市では、4月11日発表の東電構想を、市の専門家会議が5月21日に容認。それを受けて杉山市長は早期に市議会の承認をとろうとしています。
和歌山県御坊市でも、誘致の動きが表面化し、市議による公開学習会がすでに2回、自民党による第3回目も開かれました。第2と第3回目には関電の担当者が説明に呼ばれています。
 しかしむつ市での経過から、「中間貯蔵」とは名ばかりで、その実は、核の永久的なゴミ捨て場になるという性格が、むしろ明確に浮上してきました。50年間という非常に長期の貯蔵期間中に地震や津波など予期せぬ危険が起こるばかりではありません。50年後に、使用済燃料を再搬出するところがどこにもないのです。ここに問題の焦点があることは明らかです。

■中間貯蔵施設から使用済燃料を再搬出する先がない
これまで東電や関電は、中間貯蔵施設に約50年間貯蔵した後、第二再処理工場へ搬出すると公言。しかし、その第二工場とは、建設するかどうかの検討を2010年から開始するというもの。いまやそこへの搬出は、口に出すことさえはばかれるような状況です。そのため東電は、むつ市での記者説明や住民説明で、その都度口からでまかせを言うしかないという状況なのです。
 いわく、「(再搬出先について)いまのところ確たる計画はもっていない。いずれ立地される他県の中間貯蔵施設への搬出も選択肢の一つ」(東奥日報4月12日)と東電は記者会見で表明。これ
では、再搬出先は再処理工場ではなく、別の中間貯蔵施設にたらい回しするということです。また別の、むつ市の諮問機関では、「六ヶ所工場への搬入順位は、原発から出た核燃料より、むつ(中間貯蔵施設)に貯めた使用済核燃料の方を優先する」と東電は説明。ところが、その六ヶ所再処理工場を動かす日本原燃は「工場の操業期間を明確に決めているわけではないが、機器の耐用年数などから30年くらいではないか」と説明したのです(東奥日報5月1日)。つまり東電は、30年間しか稼動しない六ヶ所再処理工場へ、50年後に再搬出すると無責任にも説明したのです。
 むつ市の市民懇話会で、使用済み核燃料が永久貯蔵されるのではないかとの質問が出されたためか、杉山市長は永久貯蔵できないとの趣旨を法律に盛り込むよう国に求めていく意向を5月26日に表明(東奧日報5月27日)。しかし、これは単なるポーズにすぎないでしょう。

■現行法規では再搬出はできない
 どちらにせよ、現行法規では、使用済燃料を50年後に中間貯蔵施設から再搬出することはできません。搬出する前に、必ず目視検査で内容物の状態を確認しなければならないにもかかわらず、中間貯蔵施設では50年の間けっしてキャスクの2重蓋を開けないことになっているからです。もし蓋を開ければ、パンドラの箱のようにあらゆる危険が飛び出すかも知れません。その上、中身が壊れているのを見てしまえばもはや搬出はできないからです。目視検査ができない以上搬出はできない、このことを関電も私たちとの交渉の場ではっきりと認めました。しかし、中間貯蔵は政府の方針なのだから何とかしてくれるはずだというのです。
 「建設可能」との結論を5月21日に出したむつ市の専門家会議でも、施設から搬出する際のキャスクの健全性については、「国の発送前検査方法の検討を確認する必要がある」と注文を付けざるを得なかったのです。
 発送前検査の「改善策」として、指針を検討した専門部会は、原発サイト内に置いたサンプルを検査して、それが健全であれば、中間貯蔵施設にあるキャスクと内容物のすべてを安全だと判断しようという方法を、安全委員会に「付記」で要望しています。こんなふざけたことまでしなければ、「中間」という形式さえも保証できないということです。

■「柔軟」かつ国民に税負担を求める新たな路線
 5月23日、自民党のエネルギー政策小委員会は、政府の「全量再処理」などの政策は「硬直的だ」と批判して「柔軟性をもって対処すべきだ」とし、さらに「バックエンドに関する国と企業の役割分担、経済的措置など」を要求する骨子を出しました。これは中間貯蔵施設を強引に進め、行き詰まっている再処理などは税金投入で尻拭いさせようとするものです。この背景には、電事連が「リークした」、再処理に要する費用が9兆円も不足しているという試算があります。
他方、従来の「全量再処理」路線が行き詰まっていることは事実として明らかです。六ヶ所再処理工場では、使用済燃料貯蔵プールで不良溶接のために5箇所で亀裂・水漏れが発生。本体のパイプでも、硝酸に強いパッキンの代わりに普通のパッキンを用いたために硝酸漏れ。これらのために、使用済燃料の搬入は昨年の暮れ以来止まったまま。さらに、「あらゆる部品等の点検のために」、3〜6ヶ月の期間をかけることになったのです。
電力自由化の中で、再処理は電力業界にとって大きな負担となるでしょう。それゆえ、従来の「全量再処理」路線の枠をはずした「柔軟」な形をとりながら、政府の公的資金=国民の税金をつぎ込む道を求めているのです。こうして、使用済燃料「中間貯蔵」は永久貯蔵となります。

■再処理にも中間貯蔵施設にも反対しよう
以上のように、中間貯蔵施設とは核の永久的なゴミ捨て場であり、この性格は否定しようがありません。そして現在、どの程度緊急に中間貯蔵にウエイトが置かれるかは、まさしく六ヶ所再処理工場の運転開始見込みと密接に関連しています。
 平沼経済産業大臣は、2001年5月の刈羽村住民投票に際して撒いた署名入りのビラで強調しました。いわく、「プルサーマルが止まれば、使用済燃料を青森に運び出す訳にはいかなくなる、そうなると原発が止まるような事態も到来する」と。現在まさにプルサーマル実現の見込みはありません。それでも原発を止めないためには、どうしても中間貯蔵施設が必要だというわけです。結局、中間貯蔵施設とは、原発を延命するための施設だということです。
他方、シュラウドのひび割れなど事実上の老朽化によって、原発を無理に延命することの危険性はいまや明白になっています。その上、使用済燃料のもって行き場がないために、原発サイト内プールのリラッキング(ぎゅうぎゅう詰め)までしなければ原発を動かすことはできません。それほどに、これまでの原発の無責任な拡大路線が行き詰まり、矛盾が露呈してきています。
 中間貯蔵を認めることは、このような矛盾を緩和し、あふれるばかりの核のゴミを容認し、さらに助長する方向に手を貸すことになるでしょう。これでは核のゴミのさらなる泥沼へと、住民や国民を導くことになります。再処理に反対し、同時に使用済燃料中間貯蔵にも断固として反対し、お互いに連携して運動を進めていきましょう。使用済燃料の中間貯蔵に反対し、そのことを通じて核のゴミの発生を止める方向を目指しましょう。現在停止中の原発の運転再開を許さない運動と連帯し、中間貯蔵に反対する運動を展開していきましょう。
                                                      (2003年6月3日)