志賀原発1号機での臨界事故隠ぺい糾弾
経産大臣は、法令違反の全ての原発に運転停止命令を出せ
事故隠ぺいの温床である「報告義務違反は3年で時効」を撤廃せよ
危険なプルサーマル計画を撤回せよ


2007年3月16日
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

 JCO臨界被曝事故の3ヶ月前、1999年6月18日、北陸電力の志賀原発1号機で臨界事故が起きていたことが発覚した。定期検査で停止中に、約15分間も臨界状態が継続していた。原子炉圧力容器の蓋も格納容器の蓋も開いたままで、緊急装置も作動しなかったという。制御棒3本が抜け落ちる事故は、国の安全評価審査指針でも想定されていない。設計基準事故として想定されているのは、制御棒1本が抜け落ちる制御棒落下事故である。国の安全審査の想定がまったく不十分であったことをも示している。

 北陸電力は、業務日誌には一切記載せず、炉内の中性子線量を記録していたチャートには、臨界によるグラフの上昇箇所に手書きで「点検」と書き込み、入念に事故の証拠隠しを行っていた。「作業員は近くにいなかったので被ばくはない」と強調しているが、これ自体も疑ってかからねばならない。

 経産大臣は15日、「とりわけ悪質だ」として、法的裏付けのない行政指導として志賀原発1号機の運転停止を命じた。臨界事故を引き起こしたことは極めて深刻な事態である。同時に、この間明らかになっている、柏崎刈羽原発1号機のECCS検査偽装と故障の放置(1992年)、福島第2原発1号機(1985年)と女川原発1号機(1998年)での原子炉緊急停止の隠ぺいも「とりわけ悪質」である。しかし保安院は、原子炉等規制法に基づき「報告義務違反」の時効は3年として、これら過去の法令違反については放置し、「自ら報告したことは前進」とまで述べてきた。
 立て続けの違法・データ改ざん・隠ぺいに対する立地地域の地元首長達の怒りや、国の検査のずさんさに対する批判を前にして、今回国は「異例の措置」として志賀原発の運転停止を命じ、自らへの批判をかわそうとしている。臨界事故を引き起こしたことは、保安規定違反であることは明らかだ。保安規定違反は運転免許の取り消し要件でもある。保安院は、北陸電力の運転免許を取り消すべきである。
 また、事故隠ぺいの温床となっている「報告義務違反は3年で時効」を撤廃しなければならない。そして、法令違反を起こした原発については、まず運転停止命令を出すべきだ。今回の志賀原発1号機で、行政措置として運転停止命令を出したのだから、柏崎刈羽原発1号機や女川原発等の違法行為についても同じ措置を適応すべきだ。
 関電もしかりだ。昨年11月に美浜1号機でECCS系配管の溶接工事で国への届け出を行わず無許可で違法溶接を行っていた。元請け会社の指摘によって今年2月に初めて違法溶接であることに気づいたという。溶接をやり直せばすむ話ではない。5名の死者を出した美浜3号機事故は、明かに保安規定違反であり、運転許可の取り消しに該当する。

 水力発電所の違法・データねつ造に端を発して、電力各社の過去の違法行為が次から次に明らかになっている。電力各社は、地域独占という極めて特異な地位にあぐらをかいて、顧客離れの心配もなく、形式的に「コンプライアンスの順守」を謳い文句のように繰り返している。そして「原子力立国計画」という国策と、経済性最優先の安全規制の緩和によって、事故の頻発と隠ぺい等の体質が醸成されてきた。安倍首相は「隠ぺいは許せない」と他人事のように話し、塩崎官房長官は今にいたっても「倫理の問題」などと語っている。電力の不祥事は、これらを野放しにしてきた国の責任でもある。

 老朽化が進む日本の原発で、事故の隠ぺいやデータ改ざんが横行し、それを国が「時効」として放置し、実効性の伴わない甘い規制を続ければ、いつかは取り返しのつかない事態となる。法を破った原発の運転停止、老朽原発の閉鎖を要求して運動を強めていこう。
 さらに、一層危険なプルサーマルなどもってのほかだ。国と電力各社にプルサーマル計画の撤回を要求していこう。