11月29日 関電交渉
「テロ対策」を口実にスケルトン図の公開を拒否
*事故原因であるリスト漏れの経緯──「記憶にありません」
*美浜3号機の来年1月運転再開──遺族の同意は得られていない


 11月29日、市民約20名が参加し、美浜3号機事故の直接の原因であるリスト漏れの経緯について逐一確認する交渉を行った。事前に出していた質問書では、2次系配管の管理指針策定時に流量計オリフィス下流部を点検箇所に入れたのは関電なのか、また、美浜1号機のリスト漏れを発見したのはいつだったのか等々、これまで事故報告書で意図的に書かれていないと思われる諸点について質問していた。これら肝心の問題について、関電は「文書として残っていない」、「担当者の記憶にない」を繰り返した。あげくに「マル投げと批判されても仕方ない状況でしたから」と自嘲気味に繰り返すだけで、リスト漏れ問題の核心には何一つ具体的に答えなかった。  
 ここでは、交渉で関連して問題になった以下の3点について報告する。

◆ 運転再開について遺族の同意は得られていない
 関電は10月23日、来年1月中旬をめどに美浜3号機の運転を再開すると発表した。そのため、運転再開について遺族の同意を得たのか問いただした。関電は「理解を得ている、得ていないは回答を差し控える」とし、「遺族のご理解をたまわるように誠心誠意対応したい」との決まり文句を何度も繰り返した。これにより、遺族の同意が得られていないことが明らかになった。それでは、「同意が得られなければ運転再開はしませんね」とあらためて確認すると、またもや「ご遺族のご理解をたまわるよう誠心誠意対応したい」と繰り返し、「再開は遺族の同意を得てから」とは決して明言しなかった。関電は見切り発車しようとしている。

◆ 5月の事故時に関電社員は現場の作業前ミーティング(TBM)に参加せず
 5月16日に定検中の美浜3号機で起きた一次冷却水漏洩事故の際、関電社員が作業前現場ミーティング(TBM:ツール・ボックス・ミーティング)に参加していたのかを再度確認した。関電社員は参加していなかったという。TBMへの参加基準はなく、関電社員の裁量により「できる限り参加している」との回答であった。新聞広告や福井県内のテレビ・コマーシャルで関電社員がTBMに「積極的に参加」していると大々的に宣伝しているが、実態は参加基準もない「できるだけ参加」というものだった。

◆ 突如「テロ対策」を口実に、これまで公表していたスケルトン図等の公表を拒否
 今年の定検で確認された高浜2号機の大幅減肉部位のスケルトン図について、「テロ対策のため、プラントの配置に関するものは公表を差し控えたい」と関電は公表を拒否した。いつから「テロ対策」で公表できなくなったのかと確認すると、「同時多発テロ以降」だと答えた。そもそも、この資料請求は、前回交渉(10月3日)で要求しており、そのとき関電広報は「公表できると思いますよ」と返答していた。また、福井県のホームページでは同時多発テロ以降も大量のスケルトン図が掲載されてきた。「テロ対策」は詭弁でしかない。
 福井県や国に提出していないデータを市民に公表したくないからであり、運転再開準備の一環で、美浜3号機事故の区切りとしてプラントのデータを非開示にするために、「テロ対策」という都合のよい口実を突如として持ち出してきたのであろう。交渉参加者から強い抗議の声が相次いだ。また関電は、すでに福井県ホームページで公表されているデータの削除を県に伝えるような発言をした。それに対し参加者は、福井県にデータ削除を申し入れないよう強く要求した。