11月22日原燃交渉報告
全国98団体共同の「情報公開を求める要望書」を提出・交渉
MOXが「核不拡散性に優れている」との見解は IAEA基準に基づくものでない
クリプトンなどの除去装置の開発は他人まかせ?! 安全協定違反ではないか


 全国の98団体が共同で提出した要望書の質問事項に基づいて、11月22日午後3時から約1時間、六ヶ所村で日本原燃と交渉を行った。
原燃からは、広報地域交流室広報部総括グループの鈴木副部長、松木課長、青木担当の3人。市民側は、青森県内5人、岩手1人、首都圏3人、大阪2人の計11人であった。
 原燃の情報公開では、具体的な情報は全くといっていいほど公開していない。そこで、この間の主要な問題を9項目34点にわたって具体的に質問していた。質問事項は、11月10日に提出していた。原燃・鈴木副部長から一通りの口頭回答があり、その後やり取りに移った。(文書回答は後日)
交渉の冒頭、六ヶ所村・花とハーブの里の菊川さんが要望書の前文を読み上げ、提出団体は全国から98団体であることを伝えた。以下、主要な点に限って記載する。

MOXが「核不拡散性に優れている」の見解は IAEA基準ではなく物的特性によるもの
 今再び、核拡散の危険性が国際的な問題となっている。日本は、非核兵器国で唯一プルトニウムを抽出する再処理工場をもつ国である。11月2日原燃は、ウラン・プルトニウムの混合酸化物の生成を開始したことを公表し、その中で「出来上がる製品は、・・核不拡散性に優れ且つ、MOX燃料製造に適したウラン・プルトニウムの混合酸化物粉末」であるという見解を示した。
 事前の質問で、この見解は、IAEA(国際原子力機関)の基準に基づくものかと問いただしていた。原燃の回答は、見解は「物質の特性」に基づくものであり、「IAEAについては無関係」というものであった。具体的に、IAEAの転換時間表(異なった形態の核物質を核爆発装置の金属構成要素に転換するのに必要な時間を示した表)では、酸化プルトニウムもMOXも同じ範疇(転換時間が週のオーダー)に入っているではないかと指摘すると、「同じ範疇にある」と認める。ならば、「核不拡散性に優れている」は言い過ぎではないかと追及したが、「核爆発装置への転用の観点からは、MOX燃料は酸化プルトニウムと比較しても転換しにくい」と固執した。

アクティブ試験第2ステップの工程は2ヶ月遅れ
 第2ステップは順調と社長は表明していたが、回答は、「確かに第2ステップの関係で遅れが生じています」であった。市民側から、当初のスケジュール表では、試験工程は9月半ばに終了することになっているが間違いないかと確認すると「当初予定ではそのように」と認めた。さらに、「約2ヶ月遅れと理解」してよいかと念を押したところ、返答も反論もなく、事実上「2ヶ月遅れ」を認めた。(11月24日の会見で、社長は第2ステップの工程終了は12月半ばと述べている。)

1ヵ月半のせん断中断の契機は、燃料集合体が固着物に引っかかったため
原因となった固着物が何かは調べていない

 燃料集合体のせん断が約1ヶ月半中断していた理由については、「(第1ステップで内部被ばくもあったので)分析再現性試験を優先し、慎重かつ丁寧に行ったため」と公式発表どおりであった。市民側から、「(燃料集合体の)7体目のせん断にかかるところで中断したが、何か固着物の影響で中断したのか」と質問した。すると、「7体目をせん断の機械の中に入れようとしたが、そこで何か固着物で引っかかってしまった。その段階で、6体目までの溶液の量を確認していたところ、これで分析再現性試験はやれるという量は確保できていたため、そこで止めた」と回答。
 つまり、分析再現性試験は予定された日程で開始されたものでないこと、中断は、せん断機内でのトラブルという予定外の出来事のため、となる。
 さらに、引っ掛かりの原因である「固着物」の除去について、遠隔操作で行ったから作業者への被ばくはないと答えた。同時に、「最初はワイヤーブラシ等でやっていたが、はかどらないので、砥石を使って除去し、掃除機のようなもので吸い取って回収した」と答える。しかも、「回収したものは固体廃棄物という形で処理。回収したものの特定はしていない。」と回答した。
 トラブルの原因究明のためにも、ワイヤーブラシから砥石に変えざるを得なかった原因を探るためにも「固着物」の正体を確かめる必要があるはずなのに本当に調べていないかと追及しても、「何かは調べていない」と答える。固着物が、「燃料や燃料被覆管の破片のようなもの」と認めたが、プルトニウムや超ウラン元素を含むものを固体廃棄物として処理してもよいのだろうか。(この点については7頁参照)

クリプトンなどの除去装置の開発は他人まかせ?! 安全協定違反ではないか
 アクティブ試験の安全協定には、(放射能)放出低減のための技術開発の促進と低減措置の導入が記載されている。そこで、全量放出されているクリプトンなどの除去装置の設置について質問していた。回答は、「回収、固定化技術、貯蔵に関する必要で適用可能な技術は確立していない、と認識。今後も技術開発の向上に注意を払い、技術開発に進展が見られる場合にはその適用可能性に関して検討を行う。」であった。海への放出を禁じる法律の制定を目指している岩手の市民が、原燃の姿勢を問いただした。
 今年3月5日付の東奥日報に掲載された「クリプトンの除去技術はもう出来ている、経済的理由で設置しない」と日本原研の元職員が指摘しているが、事実と異なるのかと質問。原燃は、「今の段階では実用化できるような技術は確立されていない、と聞いている」と回答。そこで、「青森の人々にとっても岩手の人々にとっても、まず放射能を極力低減してほしいというのは切実な願い。(除去装置の)実用化に向けての企業努力は、すこぶる真剣にやってもらわないと。技術があるのにやらないということは、青森の人々に対して、非常に誠意がないといえる」と追及。原燃は、JAEA(日本原子力研究開発機構)がクリプトン関係の除去の開発研究をしている、「動向を今注視しているところで、その結果いかんによっては取り入れることになると思うが、その程度」と、まるで他人ごとのように回答した。これでは安全協定に違反するのではないか、厳しく問われるべきである。

 上記のほかでは、空や海への放射能の放出や作業員の被ばくについて、私たちが具体的な数値を示しても、短期間ではなく1年間で管理しているから、3ヶ月の平均で管理しているからという発言を繰り返した。
海洋放出のデータ公表については「検討中」と回答。交渉後の11月28日には、9月分をホームページで公表した(ただし2日後に10月分を掲示すると9月分をすぐに抹消した)。
 今後とも、中身のある情報公開を原燃に強く要求するとともに、今回のように交渉で具体的に問い質すことを繰り返し行うことが必要であるだろう。