配管穴あき・制御棒ひび割れ・制御棒入れ違い・耐震安全性に疑問・・・
BWRの抱える欠陥が集中的に現れている女川原発

福島老朽原発を考える会 

■ 全号機停止が続いている ■
 東北電力女川原発は、2005年8月の宮城県沖の地震により、想定を超える揺れが観測され、全号機が自動停止した。保安院はその後、耐震設計審査指針の改定を尻目に、1ヶ月の間にたった3回の審議をバタバタと行っただけで、耐震安全性を確認したとしてゴーサインを出し、東北電力は2、3号機の順で運転再開をしてきた。しかしここに来て配管の穴あきやひび割れ、品質管理上の問題が多発し、再び全号機停止に追い込まれている。
 保安院は今年7月、東北電力に対し品質保証体制の総点検指示を出した。理由は、(1)今年5月に女川2号機で配管の減肉による穴あきが見つかったことを受け、6月に保安院が改善指示を出したが、その後1・2号機で新たに配管減肉が見つかったこと、(2)3号機で点検に用いる配管の管理番号が122カ所で間違っており、配管1カ所が定期検査対象から漏れ、放置すれば穴が開く事態を招く可能性があったこと、これにより、定期安全管理審査で評定Cの通知を受けたこと、(3)東芝製給水流量計不正問題に対する再発防止対策の実施状況について不適切な事例が確認されたこと、の3点である。他にも制御棒のひび割れや制御棒の入れ違い、トーラス室での水漏れといった問題が次々と明らかになっている。

■ 配管減肉・穴あき ■
 女川2号機は、今年2月中旬から気体廃棄物処理系の流量が徐々に増加しはじめた。東北電力は、5月11日にようやく停止して点検を行い、5月23日には高圧第二給水加熱器Bベント配管に穴を確認したと発表した。これを受けて保安院は6月7日、東北電力に減肉管理の徹底について改善を指示した。追加点検で、女川2号機の配管1箇所に必要最小肉厚を下回る著しい減肉を確認、女川1号機でも2箇所で著しい減肉が見つかった。
 2号機で穴あきが見つかった高圧給水加熱器ベント管は、2004年9月にエロージョンによる著しい減肉が確認されたのと同種の配管であった。その後、福島第一、柏崎、島根原発において、凝縮水を含む蒸気が流れるベント・ドレン配管のソケットエルボで減肉事例が見つかっている。保安院は、翌2005年2月18日、「原子力発電所の配管肉厚管理に対する要求事項について」という通知により、「既存の工学的知見から著しく顕著な減肉の発生が予想される部位については絞り込みを行わず全て検査対象とすること」としていた。
 今回の場合、穴あきはB系で見つかったが、東北電力はもともとA系を代表部位として肉厚管理を行っていた。保安院の通知を踏まえ、B系も測定することにしたのだが、これを直ちに行わず、2007年11月開始予定の第9回定期検査で行うことにした。そのため、間に合わずに穴が開いてしまったということである。B系の検査を後回しにしたのが問題であった。
 今回の穴あきは、代表部位だけを点検するという考え方に問題があったことを明らかにした。東北電力は今後、「減肉監視対象箇所については、代表性を排除し検査対象箇所として選定します」としている。それでも、運転開始から30年までに終えればよいという気の長い計画であり、地元の市民団体はその点でまだ不十分だとしている。
 保安院は、当該部位については直ちに全てを検査対象にすべきだったとし、それみたことかと言わんばかりに、東北電力を叱責している。しかし保安院はその一方で、一般的には代表部位による肉厚管理を認め、これを継続しようとしている。今、日本機械学会において、減肉管理に関する規格の策定が行われているが、案をみると、BWRについては代表部位による肉厚管理が許されるものとなっている。

■ 制御棒のひび割れ ■
 今年1月以来、福島第一、柏崎刈羽、浜岡の各原発で見つかっているハフニウム板型制御棒カバーのひび割れが女川原発でも見つかった。制御棒は言うまでもなく、原子炉のブレーキ役を担う安全上最重要機器の一つだが、その制御棒を覆うステンレス製のカバーに、中性子照射による応力腐食割れが原因と見られるひび割れが多発しているのである。福島第一6号機と3号機では、ひび割れにより金属片が脱落し、炉内を漂うという事態にまで至った。
 東北電力は5月23日に、女川2号機の5本の制御棒にひび割れが見つかったことを明らかにしたが、このひび割れについては特筆すべきものがある。というのは、東京電力や保安院はそれまでに、ひび割れは熱中性子照射量が4.0×1021n/cm2以下では発生しないとし、この数値を交換の基準としていたのだが、女川2号機でひび割れが発見された制御棒は、熱中性子照射量がいずれもその基準値を下回っていたからである。これは、保安院や東京電力の判断が明らかに間違いであることを示している。
 ところが東北電力はこの制御棒について、「ひびがある状態で継続使用しても原子炉の安全性に影響を与えるものではないことが確認できた」とし、引き続き使用するとしている。交換の基準である4.0×1021n/cm2に達していないことによる対処だと思われるが、本末転倒も甚だしい。おかしいのは基準の方ではないか。
 制御棒のひび割れ放置運転が一体いつから許されるようになったのだろうか。ひび割れが見つかった以上、直ちに交換すべきであるし、基準を見直すべきであろう。

■ 制御棒入れ違い ■
 8月23日、東北電力は、女川2号機の6体の制御棒と燃料支持金具が、本来取付けられているべき位置と異なる位置に取付けられていたことを明らかにした。第6回の定期検査において、制御棒を取り外す順番が手順とは異なり、これを手順通りの順番で取り付けたために発生したとしている。東北電力によると、入れ替えによって、冷却水流量や、停止余裕、燃料の燃焼の進み具合に影響が出るという。事故に至らなくて幸いだが、なんともずさんな品質管理である。

■ 女川原発の問題はBWR共通の問題 ■
 東北電力は、品質保証体制の総点検について、8月23日に報告書を提出した。保安院は、これをわずか1週間程度で検討を済ませ、8月30日には「おおむね妥当」との評価を示している。しかしこれではとても十分に検討したとはいえないだろう。それに、上記でも明らかなように、女川原発で起きていることは、東北電力だけの問題ではない。さまざまな形で各地のBWRにも現れていることである。老朽化したBWRが共通に抱える問題が女川原発に集中的に現れているとみるべきであろう。