青森県が公表した放射能の値
再処理工場が動けば、放射能が大気・海・食べ物に入る

放射能の蓄積とヨウ素の経口摂取を無視


 六ヶ所再処理工場が操業を開始し、年800トンの使用済み核燃料を再処理すれば、排気筒から大気中へ、海底の放出口から下北海域へ大量の放射能が日常的にばらまかれる。その結果、大気、海水、食べ物でどれだけ放射能が増えるかの予測値を、青森県が1月24日に公表した。その「別表1」から主な数値を下表に示すが、この評価は日本原燃が申請書で記述している評価方法に従っている(表下の注釈は、当会が同じ方法で計算した結果から判断して付けたものである)。
 この結果、原発事故でも容易に出ないプルトニウムをも含む放射能が、実際に空気や海水や食べ物の中に入り込むことが青森県によって公的に認められた。毒物が食べ物に混ざることを、当然のように認める県の神経はどうなっているのだろうか。たとえば、米1kgには炭素14が90Bq含まれているが、それは1kgの米から毎秒90個の放射線(ベータ線)が放出されることを意味している。
 この公表について若干の問題点を指摘しておこう。
 第1に、地表面での降下物の密度などは毎年一定で蓄積が無視されている。除夜の鐘とともにその年の分は地表面や海水から消え去るのだ。蓄積があれば米などにもより多くの放射能が移行する。チェルノブイリ周辺で汚染が容易に消えない事実に照らしても、毎年毎年降り注ぐ放射能の蓄積は無視できないはずだ。
 第2に、海藻の核種にヨウ素129と131がまったく表れていない。日本原燃の評価方式に従うと、これらはそれぞれ0.14Bq/kgと0.17Bq/kgになるはずで、けっして無視できる量ではない。どうやら青森県は、ヨウ素の経口摂取による被曝は考慮しなくてもよいと判断しているらしい。事実、公表資料の「実効線量係数」を示す表4のヨウ素の経口摂取欄に斜線が入れられている。日本原燃は申請書でヨウ素の経口摂取による被曝も考慮しているのに、非常に不可思議なことである。
 なお、ラ・アーグでの放出実績値と比較すると、原燃はヨウ素129と131の放出量をそれぞれ1/20と1/30に想定している。もしラ・アーグ並みの放出量だと、20倍、30倍のヨウ素が海藻や魚類から検出されることになる。
 第3に、ここには記載していないが、公表された被曝線量の評価値の合計は6μSvで、日本原燃の評価値22μSvより少ない。県の評価では、(1)大気中放射能からのガンマ線による被曝、(2)葉菜や根菜などのトリチウムによる被曝、が完全に無視されているためである。