プルサーマルを跳ね返す九州と四国の運動の進展
世界に類を見ない危険な玄海3号・伊方3号プルサーマル


1.九州と四国で進展するプルサーマル反対運動

 ◆玄海3号プルサーマルに反対する九州の運動


佐賀県への要望書提出行動
 8月29日、まさに玄海3号プルサーマルに関する安全委員会の答申が出た日に、全国の呼びかけ・賛同152団体・114個人を代表して、地元九州の運動と全国からの7名は共同で、玄海町長と佐賀県知事などに要望書を手渡した。この要望書では玄海3号プルサーマルの危険性・問題点が定式化されている。九州では30万5千の署名が4月に県知事に手渡されるなど反プルサーマル運動が発展している。そこに、1999年高浜原発用MOX燃料の不正事件以来の全国的な反プルサーマルの流れが合流し、密接な協力関係を築いて玄海3号プルサーマル反対を迫る力となった。
 9月7日に経産省から許可が出た後の9月9日に、佐賀県政策検討会議で保安院と安全委員会から説明がなされているが、そのとき、前記要望書内容と同様の質問が県知事たちから出されている。9月15日にグリーンコープが行った九電交渉では、「海外の実績」と比べて玄海3号の富化度が高いという事実について、九電はまともに答えられなかった。この日、プルサーマル反対を掲げた140隻の漁船の海上デモが行われている。これは5月10日(200隻、400名)を継ぐ行動であった。当会作成のリーフレットも広く配布されている。また、新たに大規模な新聞意見広告運動も開始された。
 10月2日には政府主催のプルサーマルシンポジウムが開かれた。第1部「必要性」では賛成・反対双方から論者が出たが、第2部の「安全性」では賛成派ばかりが低レベルの論を述べた。これに対し、会場から意気のこもった鋭い反対の質問ばかりが続出した。「安全性」については、佐賀県主催で12月初めごろに討論会がもたれる予定であり、運動の焦点はそこに向かうだろう。

 ◆伊方3号プルサーマルに反対する四国の運動
 他方、伊方3号プルサーマルについては、7月28日に安全委員会に諮問され、安全専門審査会での審議が指示され、一般からの意見募集も8月末まで行われ、現在も審議中である。
 反対運動は昨年6月27日に当会の小山を招いた学習会の後、その場で四国レベルで取組むことが確認された。その後「原発さよなら四国ネットワーク」による愛媛県知事と伊方町長宛の署名運動が展開され、今年10月25日に合計約12万名分の署名が県に提出されている。その前の9月13日には、その署名を携えた代表8名が保安院及び安全委員会と交渉した。そこには数名の議員が同席し、東京の反対運動の人たちも参集した。
 10月15日には松山市で、被爆60周年反原発学習会が四国ブロック平和フォーラム主催で開かれ当会の小山が講演した。70名参加見込みのところ、実際は約100名が参加し、活発な質疑が行われた。その翌日の16日には八幡浜市で、高木章次氏製作のまんがパンフを戸別に配布する行動が行われ、50名参加見込みのところ実際には約65名が四国各地から参加した。10月23日には地元で伊方集会が開かれ署名やチラシまきなどが行われた。
 このように四国でも、経産省の許可を迎え撃ち、次の地元了解にストップをかけるための準備が進展している。いまその運動は、経産省の許可自体にけん制をかける意義をもつに違いない。 

2.玄海3号・伊方3号プルサーマルはフランスでは許可されないほどに危険
 玄海3号と伊方3号プルサーマルは、それぞれ出力とハイブリッド方式において、世界に類を見ないほどに危険なプルサーマルである。特徴的な指標を、高浜3号及びフランスとの比較で以下の表にまとめ、注目すべき点を列記しよう。

(1) フランスで動いているプルサーマル炉20基はすべて90万kW級であって、玄海3号のような120万kW級は許可されていない。
(2) フランスでは現在、プルトニウム富化度は全プルトニウムで7.0%である。1998年の関電回答時点では、これが5.3%であった。ところが、その後ウラン燃料の燃焼度が上がったためにその使用済み核燃料から抽出したプルトニウムの質が落ち(つまり核分裂性プルトニウムの割合が減少したために)、プルトニウム富化度を上げざるを得なくなったと言われている。この理由からすれば、核分裂性プルトニウム富化度は以前と同程度の3.7%程度だろうと推察できる。いずれにせよ、日本のMOX燃料集合体の富化度、燃焼度はフランスと比べて非常に高い。
(3) フランスでは、ウラン燃料は4サイクル、MOX燃料は3サイクルで取り出すというハイブリッド(混合)燃料管理方式が採用されている。伊方3号では、それと同じハイブリッド方式が日本で初めて適用されることになる。しかし、ウラン燃料の濃縮度と燃焼度、MOX燃料の富化度と燃焼度のどれを見ても、伊方3号はフランスより相当に高レベルであることが分かる。
(4) フランスではハイブリッド方式をやめて、どちらの燃料も4サイクルまで使うような方式(パリティ方式)を電力会社のEDFが2001年に政府に申請し、2004年から実施する予定であった。その場合プルトニウム富化度は全Puで9.0%近くになる予定であるが、それは日本の上記表の富化度と同程度である。ところが、今年3月のNuclear Fuel誌によれば、フランス規制当局はトリカスタン炉の審査をした結果、このパリティ方式を当分許可しないことを決めたという。その理由は、燃料内の核分裂生成ガスによる内圧の高まりなどに懸念があり、それらが限界内に納まることをEDFが必ずしも示していないからだという。この事実は、そのような危険が日本のMOX燃料に存在することを強く示唆している。
 要するに、両プルサーマルはそれぞれ、フランスでは許可されていないほどに危険性なものだ。