6月7日経済産業省との交渉報告
原燃は化学試験の報告書すらまだ出し終えていない
青森県が安全協定の案を出せる条件はまだない



6月7日 経済産業省との交渉 参議院議員会館にて
 6月7日、午前10時から12時過ぎまで、参議院議員会館第2会議室で経産省との交渉を行った。市民側は前日の「全国会議」に出席した、青森・東京・静岡・関西・九州からの約20名。経産省側は次の3氏が出席した(資源エネルギー庁 電力・ガス事業部、原子力政策課 課長補佐 江口純一氏/エネ庁 核燃料サイクル産業課 課長補佐 石上庸介氏/原子力安全・保安院 核燃料サイクル規制課 課長補佐(企画班長)青木一哉氏)。
 日本原燃は6月にウラン試験を実施すると発表している。一方、青森県の副知事は、ウラン試験に伴うトラブル事例の説明を原燃に要求し、その後に安全協定案を公表すると報じられている。まるでトラブル事例の報告があれば、安全協定の案を出す準備が整うかのように振る舞っている。しかし、今回の交渉で、国の認可手続きとの関係で、ウラン試験を開始するにはまだいくつかのハードルがあることが明らかになった。原燃は化学試験の報告さえまだ出し終えていない。安全協定の案を問題にするような時期ではないことが明らかになった。2時間を超す交渉の中では、今後の運動にとって重要な手がかりが明らかになった。それらの点に絞って報告する。
 
■ ウラン試験を始めるにはまだいくつかのハードルがある
 このウラン試験実施までに、保安院としてどのような手続きが残っているのか、具体的に問いただした。保安院の青木氏は以下のように説明した。
(1)原燃が出す化学試験の報告書は、今年の分がまだ出ていない
 ウラン試験に先立って、原燃は化学試験を行っている。現時点で、化学試験の報告は「報告書その1」だけ。これは昨年実施した化学試験に関するもの。今年に入っての化学試験でも「不適合」が発生しており、その内容・是正措置についての報告がまずなされなければならない。そして、国が以前の使用前検査を行った箇所で「不適合」が見つかっておれば、使用前検査をやり直す。これら一連の作業が終わらなければウラン試験には入れない。またガラス固化施設とBP取扱施設ではまだ化学試験が行われている。

(2)ウラン試験に関する保安規程はまだ認可されていない
 さらに、ウラン試験に入るためには保安規程の問題がある。全社的な品質保証を問題とした保安規程は5月末に認可されている。ウラン試験のための保安規程が認可されなければならない。そこではウラン試験を実施する施設の中で管理区域を設定したり、劣化ウランの取扱等に関する管理方法が記載される。このウラン試験のための保安規程は、現在審査中とのこと。「6月にウラン試験は無理ですね」と問うと、「無理かどうかは言えないが、届け出は変更してはならないものではない」と思わせぶりに答えた。

(3)施設を3つのグループに分け段階的にウラン試験に進む。保安規程は「変更、変更、変更」の細切れ認可。安全協定は一括?!
 これまでの化学試験と基本的に同様に、ウラン試験では施設を3つのグループに分け、段階的に試験に進む。最初に化学試験を行ったグループ1の施設については、昨年までの報告しかきていない。グループ1の今年の報告書がまず出されること。その上で、グループ1の保安規程を審査する。これが認可されれば、グループ1だけ先行的にウラン試験に入ることができる。グループ2・グループ3がウラン試験に入る時は、それぞれの報告・是正措置がなされ、保安規程の管理区域等を書き直した「変更申請」で認可するという。青木氏は、「保安規定は変更・変更・変更です」と何度も繰り返した。
 このようにウラン試験の認可は細切れに行われる。グループ1がウラン試験に入っても、他のグループの施設は化学試験に関するチェックを受けている状況になる。参加者からは、「安全協定は細切れではなく一括のものとして結ばれるはず。おかしいのではないか」との指摘があがった。青木氏は、「安全協定は国は関知しない」として細切れの保安規程認可について淡々と語った。もちろん、原燃と地元で結ぶ安全協定が、ウラン試験実施の前提条件だと青木氏も認めた。ウラン試験を段階的に先行実施するための細切れの認可方式と、一括の安全協定との間には大きな矛盾がある。こんなことが許されるだろうか。

■ 「再処理をやらない場合のコスト試算は、彼ら(原子力委員会)がやるでしょう」
 まもなく国の原子力長期計画の見直しが始まる。経産省の下にある電気事業分科会では、六ヶ所再処理工場の稼働を前提に、バックエンド費用18.8兆円と公表されている。これに対して、再処理をやらない場合のコスト試算も行うべきだと追及した。エネ庁の二人は「我々としてはそのような試算は行っていない」と述べる。しかし他方で「彼ら(原子力委員会をこう呼んでいた)がやると聞いている」、「彼らの方が長計の見直しの中できっちりやるということではないか」と繰り返し述べた。その意見は参考にさせてもらいますと市民が念押しすると、「(ここまで言うと)怒られちゃうかな」等と笑っていた。事実、午後からの原子力委員会との交渉では、近藤委員長はワンススルーの場合のコスト試算をやるとは言わなかった。「彼らがやるでしょう」という言葉の中には、経産省としては、ワンススルーのコスト試算を原子力委員会がやることは一向にかまわないという意味合いが込められている。思惑あっての発言だったようだ。

■ 英仏にあるプルトニウム33トンを2010年までに使い切れるのか
 プルサーマルとの関係では余剰プルトニウム問題が焦点になった。イギリス・フランスにあるプルトニウムは約33トン。電事連の計画では2010年までに16〜18基の原発でプルサーマルを実施するという。この計画で33トンの海外プルトニウムを使い切ることができるのかと問う。すると「33トンを具体的にいつまでに必ず使い切るという計画ではないと思う」、「そのような計算はしていない」と驚くような回答。余剰プルトニウムを持たないという昨年8月5日の原子力委員会決定に従うのだろうと追及すると、「もちろんです」と答えながら、「そのチェックは原子力委員会がすることになっている」と、今度は責任逃れ。海外にあるプルトニウムを使い切らないうちに、六ヶ所再処理工場を動かしてプルトニウムを取り出すべきではない。そういう余剰プルトニウムの持ち方が国際的に許されているのかと追及。「協定上の話としては、プルトニウムの使用が担保されなければならない」と認めざるを得なかった。プルサーマルを始めても、原発1基で最初に使うプルトニウムは約200キロ。33トンの使用計画が出されなければ一部の原発でプルサーマルを実施しても意味がない。さらに、六ヶ所再処理工場を稼働させれば、2005年予定のアクティブ試験からプルトニウムは出てくる。こんな状況で、プルサーマルも六ヶ所再処理もやるべきではないと意見が続いた。エネ庁は「今後のプルトニウムの使い方については、どう書いてあるか確認する」と弱々しい回答だった。ここにも大きな矛盾がある。

■ 第二再処理工場は400年後になるかもしれない
 最後は「中間貯蔵」施設の問題。エネ庁は冒頭の回答で、「第二再処理工場は白紙です」と断言した。交渉は当初予定の2時間になろうとしていた。関電の「中間貯蔵」が狙われている和歌山からの参加者が満を持して口火を切った。「地元では40年置いたら搬出すると言っているが、影も形もない第二再処理工場にどうやって搬出できるのか」。「なぜ『中間』と言えるのか」、「バックエンド費用19兆円の中にも第二再処理工場の費用は計上されていない」等々批判の声が続いた。そして「第二再処理工場は、2300年、2400年になるかも知れない。何年に造るかは決まっていないということか」と確認すると、「はい、決まっていません。いつ造るとは言えません」と認めた。ならば「40年後に搬出する」「第二再処理工場に搬出する」と地元で説明しないように指導すべきだとの厳しい意見が相次いだ。エネ庁が逃げ込む先は、「再処理を前提としているので」との一般論だけだった。「中間貯蔵」については、別の機会に交渉の場を設定するよう申し入れた。