6月7日 原子力委員会との交渉報告
現行の長計は、再処理もプルサーマルも 事業者に『期待している』だけ
────近藤原子力委員長
「再処理と直接処分とのコスト比較はやると思う」(木元委員)


 
出席した、町委員、木元委員、近藤委員長
 
6月7日 原子力委員会との交渉

 6月7日、青森から九州まで全国各地から結集した市民と原子力委員会との交渉が行われた。原子力委員会からは、近藤委員長、木元委員、町委員と事務局員(3名)が出席、市民側は19名であった。第4総合庁舎内の会議室で行われた交渉は、予定の30分をオーバーし、約1時間におよんだ。
 原子力開発利用長期基本計画(以下、長計)の見直しがスタートラインに立つ直前のこの交渉で、市民側からは、六ヶ所再処理工場でのウラン試験の実施は、長計に関する自由な論議を制約する恐れが強いため、原子力委員会としてウラン試験の凍結を「勧告」するよう求めた。また、再処理と直接処分の経済性比較を行うのかどうかを確かめた。
 各委員の自己紹介の後、予め提出していた4つの質問への回答を近藤委員長が行った。委員長は、新聞で核燃サイクルの見直しが報じられていることを否定するかのようなかたくなな態度であった。また、回答内容も、論議の中でも委員長の発言は、一般論に終始し、語尾が曖昧で、何を言いたいのかよく分からないものであった。自らが「優柔不断と思われるかもしれないが・・」と言うほどに。木元委員は、自分を「市民の意見を吸収する窓口」と位置づけ、「今日はしゃべり過ぎ」と言い、委員会の内部状況を口にするなど「窓口」の役割を果たそうとしていた。
 他方、市民の側は、多彩な切り口で委員会に迫った。全国各地でそれぞれの課題に真剣に取組んでいるからこそと思われる追及が行われた。これは、われわれにとっても非常に参考になり、全体として有意義で、ウラン試験凍結を目指す今後の運動に繋がるものとなったと思われる。

再処理もプルサーマルも「国策」ではない?! 「せねばならない」とは書かれていない! ――――近藤委員長
 委員長は、政府と民間の役割を明確にするという原則的なことから長計の論議を始める必要があるとした上で、現行の長計を引用して、「現在の長計を見ると多くの民間活動については、『・・とすることが期待される』と書いてある。言い換えれば『・・・せねばならない』とは書いてないのです」と説明した。その後の論議の中でも、事務局を含めて、民間には「・・することが期待される」としか書かれていない点が何度も強調された。つまり、再処理もプルサーマルも「国策」ではなく、電気事業者が「しなければならない」ことではないことの強調のようであった。

「余剰プルトニウム持たない」ことの実現への返答に窮した委員会と事務局
 余剰プルトニウムは持たないという原則について、東京と九州の参加者が鋭く追及した。海外に未だ多くの日本のプルトニウムが貯蔵されたままなのに、六ヶ所でプルトニウムを抽出してもプルサーマルもうまくいっていない下で使い道はなく、余剰プルトニウムを持たないという国際的な約束を果たせないのではないのかと。
 これに対し、事務局は、「我々は、プルサーマルのためにやっているのではなく、プルトニウムの透明化のためにやっている」とか「プルトニウムをどう使うかは電気事業者」の責任と無責任な回答に終始した。さらに、木元委員から、電気事業者にプルトニウム利用計画の公表を求めた昨年8月の委員会決定「核燃料サイクルについて」は、決定でなく、「私たちの見解としてまとめているもの」との発言があった。さらに、12年間IAEAにいたという町委員は、IAEAを「国際社会」と位置づけ、IAEAの査察は厳密だから、保管さえすればよいかのような発言があった。「今日できたものは今日使われなければ、(国際社会の信頼を)損なうということでは全くない」と。

「(再処理と直接処分の経済比較について)私はやることと分析している」・・・木元委員
 再処理と直接処分の経済比較については、委員長は、テーマになるかどうかはこの後発足する策定委員会で決めることとして、原子力委員会としての見解は、はぐらかした。他方、木元委員は「私はやることと分析している」「ワンススルーという選択肢がある以上、(核燃サイクルと)これを比較しなければだめ」と言った。
 約1時間、各地の参加者からの相次ぐ積極的な発言で、委員長が返答に困る場面が多くあった。