ウラン残土訴訟控訴審でも住民側完全勝訴
自治会が強制執行を申し立て、核燃は最高裁に上告して逃げる

土井淑平(ウラン残土訴訟を支える会



 鳥取県東郷町方面地区(かたも地区)の自治会と地権者が核燃料サイクル開発機構にウラン残土撤去を求めて起こした二つの民事訴訟のうち、方面自治会訴訟の控訴審判決が2月27日にあり、広島高裁松江支部(廣田聡裁判長)は、ウラン残土撤去を仮執行付きで認めた鳥取地裁の一審判決を支持し、その取り消しを求めた核燃の控訴を棄却した。

 控訴審の争点と判決の内容
 判決はまず、控訴審の第1の争点たる1990年8月のウラン残土撤去協定書の第11項「ウラン残土の撤去は、関係自治体の協力を得て、… 一日も早く完了するものとする」の解釈をめぐって、この11項の「関係自治体の協力」は協定書の「停止条件」に相当し、これが満たされない限り撤去義務は発生しないとする核燃側の主張を斥けた。
 さらに一歩踏み込んで、この「11項の義務は本来動燃が本件協定に基づき負っている義務」であり、関係自治体の同意は事実上必要ではあっても、それは法的にも社会通念上も撤去義務の履行を制約するとまでは認められず、「本件協定締結後10年を経過した時点では、… 控訴人(核燃)のウラン残土撤去義務の履行時期は到来しているというべきである」との明快な判断を示した。
 控訴審の第2の争点は、自治会のウラン残土撤去請求は撤去先の住民や関係自治体の同意を得ないまま強行搬入を強いるもので信義則に反し、かたくなに和解案を拒絶するのは権利の濫用に当たる、との核燃側の主張の是非であったが、判決はウラン残土撤去義務の履行期到来という事実からして、「本件請求が信義則違反あるいは権利の濫用に該当するものでないことは明らかである」として、核燃側の主張を完全に否認した。

 核燃の上告と強制執行の停止
 自治会側は控訴審判決を受けて3月8日、判決が命じた3000立方メートルのウラン残土撤去の代替執行(強制執行)を鳥取地裁に申し立てた。代替執行は第3者の業者に残土を撤去させ、その撤去費用を核燃に請求・負担させる強制執行の一方式で、撤去先は岡山県上斎原村の核燃人形峠環境技術センターを想定し、撤去費用は数億円と推計している。
 しかしながら、責任逃れと引き延ばしに終始する核燃側は3月11日、最高裁に上告するとともに、強制執行を停止するよう広島高裁松江支部に申し立て、同支部は3月19日付けで2億円の供託金を条件に強制執行の停止を認める決定をした。もし核燃側の上告が受理されて舞台が最高裁に移っても、2審までの判決内容が覆えることはあり得ないとはいえ、核燃側は2審で自治会側に拒否された撤去命令の10分の1の290立方メートルの骨抜き和解案≠再度提出し、時間稼ぎをしながら方面地区の切り崩しを図る構えだ。
 方面自治会の住民訴訟に対して全国的にも異例の支援をしてきた鳥取県の片山善博知事は、「どこまで醜態をさらせば気が済むのか」と核燃の上告を批判したが、懲りない核燃の幹部職員4人は上告当日の3月11日、拒否された290立方メートルの骨抜き和解案≠蒸し返しつつ方面地区を一戸一戸訪問して歩いた。住民から「上告しておいてよくも来れたものだ」と罵声を浴びる場面もあり、なりふり構わぬ醜態をさらした瞬間であった。

 榎本益美さん訴訟も原告本人尋問で結審へ
 一方、自治会訴訟と並行して、地権者の榎本益美さんが独自に起こしたもう一つのウラン残土撤去訴訟は、原告側の小出裕章・京大原子炉実験所助手と被告側の飯田孝夫・名古屋大教授との放射能論争も交えつつ審理も大詰めを迎え、4月27日の原告本人尋問で結審の見通しだが、これまた勝訴は間違いないと確信している。
 榎本さんはじめ方面地区の住民はこの16年間、さまざまな圧力に抗して粘りに粘ったあげく、遂に逃げ回る核燃を追い詰めた。もう核燃の責任逃れも引き延ばしも許さないとして王手≠かけたのである。


榎本益美さん本人尋問

◆日時/場所=4月27日(火)午後1時30分より、鳥取地裁にて
           原告本人(榎本さん)尋問にて結審の見通し
※できるだけ多くの方の傍聴を!県庁前喫茶店「ヒロ」で午後0時30分より打合せ