11/23 ドラコビッチ博士 劣化ウラン/ウラン被害調査報告会in大阪
「UMRCの活動は歴史的使命だ」


 11月23日、ウラニウム・メディカル・リサーチ・センター(UMRC)のドラコビッチ博士講演会が大阪で行われた。主催は、UMRCのアフガニスタンやイラクでの調査費用のカンパを訴えている「UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン事務局」と「アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局」。約200名の参加者で会場はほぼ満席となった。折しも政府が自衛隊をイラク・サマワに派遣するとの報道がなされる中で、多くの人々の関心を集めた。
 いよいよドラコビッチ博士が登壇した。スクリーンにはUMRCのロゴマークが映し出されている。博士は物静かな口調で、そこに書かれている「水の一滴は岩をも砕く」“Gatta Lapidem Cvat”、これがUMRCの活動の姿勢だと紹介された。
 UMRC設立に至る経緯が話された。米軍の核医学の専門家であった博士は、湾岸戦争に従軍した兵士達の健康調査を行う中で、劣化ウラン弾の危険性を認識していったという。軍から「すぐ調査を取りやめよ」との圧力がかかった。しかし彼は調査を続ける道を選択した。軍内部ではその道は閉ざされ、独立の組織UMRCを設立した。彼は力強く語った。「米国政府や軍は私を敗者と思っているかもしれない。しかし、そうではない。私は勝者だ。だからこそ、今こうして日本に来て皆さんと会うこともできた」。「科学に忠実に、そして現に起きている被害の実態に忠実に仕事をするだけだ」。会場からは大きな拍手が起きた。
 UMRCはこれまで、アフガニスタンで2回の現地調査を行い、また戦争終了直後にイラクへも2回現地入りし、土壌や水、住民の尿サンプルを集め分析調査を行った。アフガニスタンでの調査が紹介された。スクリーンに映った子供の写真を示しながら、「卒倒せずに聞いてほしい」。「この子はフセイン君という。彼の住む村は爆撃され、家族全員が殺された。彼は出かけていてその直後に村に入った。命は助かったが、尿から通常の200倍ものウランが検出された」。博士の声は怒りを抑えながらも大きく響いた。具体的データと現地の様子を織り交ぜて、劣化ウラン/ウラン汚染の実態について話が続いた。またイラクのサマワでも調査を行ったという。まだ完全なデータではないので公表できないがと断った上で、「サマワも汚染されている。自衛隊が派遣されれば、被曝するだろう。少なくとも防護服と防護マスクをつけ、専門家が同行することが必要だ」と語った。政府は最近、イラクに派遣する陸上自衛隊員全員に「新型線量計」を携帯させると決定した。劣化ウラン弾に対する隊員の不安解消のためだと言う。しかし「新型線量計」は外部放射線を測るだけ。もっとも深刻な被害をもたらす劣化ウラン微粒子の吸引によるアルファ線内部被曝を防ぐことはできない。
 博士は、「UMRCの活動は歴史的使命だ」と講演を締めくくった。劣化ウラン/ウランによる被曝と汚染を引き起こす「新たな放射能戦争」の時代にあって、その被害と非人道性を具体的・科学的に暴き出すこと。このことによって、新たな戦争をくい止めたいという博士の強い意志が伝わってきた。自らの科学的仕事に対する強い確信と共に、謙虚な姿勢で、ヒューマニティにあふれた博士の姿勢・生き方そのものが、参加者を魅了した。
 講演会の詳細な記録は、主催団体から年明けに発行されるとのこと。
憲法9条を踏みにじる、戦地イラクへの自衛隊派兵に反対していこう。
[当日の資料はUMRCのHPで公開されている。]