美浜の会ニュース No.72


 和歌山県御坊市で、関電の使用済燃料中間貯蔵施設を誘致しようとする動きが表面化した。青森県むつ市の中間貯蔵施設については、その構想を東電が4月11日に公表した。「中間貯蔵」とは、使用済燃料を再処理工場に運ぶまでの間、一時的(中間的)に(実は40〜60年間)保管するという意味であり、その施設は別名「リサイクル燃料備蓄センター」とも呼ばれている。
 しかしその実、この施設から他に運び出せる見込みは何もなく、永久的な核のゴミ捨て場になることが、東電の説明や原子力安全委員会の指針から明らかになっている。さらにこの点をわれわれは、4月28日の関電交渉で確認した。中間貯蔵施設は実に矛盾に満ちたずさんな計画である。
貯蔵規模がウランで5000トンの場合、最大級の大飯原発50基分以上の死の灰やプルトニウムなどが、安全性の保証もないまま永久貯蔵されることになる。このような危険な計画を受け入れて子々孫々まで危険にさらすことに断固反対しよう。

矛盾に満ちた関電の中間貯蔵構想
 関電の中間貯蔵施設構想は1997年に始まっている。この年の7月、社長は記者会見で、「福井県を除く10数箇所の候補があり、2000年度末までに決定し公表する」としていた。2001年4月には、「福井県を除く関電供給エリア内の4地点」とした。ところが今回4月28日の交渉では、「福井県を除く複数地点」が候補に上っているが、その「複数」が4地点より多いか少ないかは言えないという。そして、立地候補として新聞報道された御坊市は、現在の「複数地点」の中には入っていないと断言した。しかし、地元では強力な誘致活動が始まっている。
 2010年までに、なるべく早く操業開始したいということで、規模は3000〜5000トンレベルだという。関電の全原発の1回取り替え量は約270トンである。5000トン貯蔵なら19回取替え分に相当し、(定検が比較的順調なとき)満杯になるのは約25年程度後となる。施設の建設には3年程度かかり、その前に立地の手続きなどがあるので、ここ1〜2年のうちに立地点を決めないと間に合わないことも認めた。貯蔵様式については、現在の指針は金属製の乾式キャスクを想定しているが、コンクリート製も考慮しており、いまその選択を検討しているという(一般にコンクリート製の方が安いと言われている)。なお、原発サイト内に乾式キャスクの貯蔵施設をつくることはまったく考えていないということだった。
 最大の問題点は、使用済燃料をその施設で一定期間(指針では40〜60年間)貯蔵した後、実際に再処理工場に運び出せる保障はあるのかという点にある。この保障がないと、使用済燃料は「リサイクル資源」などではなくただのゴミとなり、その施設も「中間」貯蔵施設ではないただの核のゴミ捨て場だということになる。この問題について関電交渉では、次の3点を確認した。
(1) 2010年から検討開始する第二再処理工場に運ぶのか
 六ヶ所か第二か、どの再処理工場に運ぶかは未定だという。しかし関電のホームページにある構想では、「Q&A」で第二再処理工場に運ぶとはっきり書かれているではないかというと、エッと驚いた顔をしてみせて、それは確認してみるという。第二再処理工場は原子力委員会の長期計画(長計)に書かれているというが、2000年12月の長計には次のように書かれている。第二再処理工場の「再処理能力や利用技術を含む建設計画については、六ヶ所再処理工場の建設、運転実績、今後の研究開発及び中間貯蔵の進展状況、高速増殖炉の実用化の見通しなどを総合的に勘案して決定されることが重要であり、現在これらの進展状況を展望すれば、2010年頃から検討が開始されることが適当である」。2010年から検討開始する第二再処理工場を、あたかも建設されるがごとく扱うのはおかしいではないかというと、関電はホームページの書き方を含めて検討することになった。
(2) 操業開始から50年後にどの原発が動いているのか
 もし仮に第二再処理工場が動くとすれば、それは原発のプルサーマルで使うプルトニウムを抽出するためのはずである。ところが関電の原発の2010年時点での年齢は、美浜(3機)で34〜40歳、大飯(4機)で17〜31歳、高浜(4機)で24〜36歳であり、その50年後となると、最も若い大飯4号でさえ67歳となってとても動いているとは思えない。この点を指摘すると、「いえいえ、いろいろ部品の取替えも行いますから」と恐ろしいことをいう。原子力はあくまでも中核のエネルギーなのでというが、今後の供給計画については10年後までしか存在しないことも認めた。
(3) 50年後に安全に運び出せる保障がない
 指針によると、中間貯蔵施設では、けっしてキャスクの2重蓋を開けないことになっている。これでは目視検査ができないので、現行規定による限り運び出すことができないではないかというと、それはそのとおりですとあっさり認めた。しかし、中間貯蔵は政府の方針なので、中身を見なくても運び出せるようにしてくれるはずだとの答えであった。この点は再度後で検討しよう。

中間貯蔵施設から中間貯蔵施設へとたらい回しする東電の構想
 東電は、青森県むつ市に使用済燃料中間貯蔵施設をつくることを画策している。その計画が今年4月11日に公表され、この施設の性格が明らかになった。3000トン貯蔵の施設を順次2つ造り、各々50年間使用する。2010年までに操業開始し、50年経過するとその貯蔵物をどこかに移すという。どこに移すか未定であるが、操業から40年目までに地元と相談して決めるという。
 2001年5月のむつ市での住民説明会の折には、東電むつ調査所の岸本所長は次のように述べていた。「国の計画では、2010年から第二再処理工場の建設を検討する。第二再処理工場ができるまでの間の量について中間貯蔵施設がほしい」。
 ところが、4月11日の説明では、搬出先は「いまのところ確たる計画はもっていない。いずれ立地される他県の中間貯蔵施設への搬出も選択肢のひとつ」。これでは使用済燃料は、たらい回しにするただのゴミとなる(交渉でこのたらい回しのことを聞いた関電広報は「ヘンですね」と首をかしげた)。さらに4月19日のむつ市民説明会では、「六ヶ所再処理工場が動いていれば優先して搬出するし、第二再処理工場ができていれば同工場にもっていく」と東電の説明は変わった。
4月19日の説明会では、市民から次の疑問が出されている。「50年後には今の原発は寿命がきている。再処理しても使う原発がないのでは?」。事情は関電と同様である。仮に2010年に操業開始できるとして、それから50年たつと最も若い柏崎刈羽7号で63歳。これではすべてが寿命を終えている。新規立地や増設などできないし、燃料電池など新エネルギーに依存する傾向も強まる。第二再処理工場など不可能だということを、東電の前記説明自体が色濃く自認している。

中間貯蔵施設からの搬出は安全指針により不可能
 中間貯蔵施設に関する原子力安全委員会の安全審査指針では、使用済燃料は乾式キャスクに入れて40〜60年間貯蔵することになっている。まず原発サイトのプール内で使用済燃料を目視検査した後にキャスクに入れて2重蓋をし、その後ヘリウムガスを入れて水を追い出し輸送する。中間貯蔵施設ではそのままで貯蔵し、けっして蓋を開けることはないと指針ではされている。
 もし中身の状態を確認するために水中で蓋を開けると、中身の状態によっては臨界事故が起こる恐れがある。蓋を開けるためには、厳重な密閉構造が施設に要求される。現在東電の計画では、中間貯蔵に要する費用は約1000億円と言われているが、その7〜8割はキャスクの費用だとされている。もし蓋を開けるとなると、現在予測2〜300億円の施設費が跳ね上がるに違いない。また、もし蓋を開けて中身が傷んでいるのを見てしまえば、それを運び出すことができなくなるのを恐れているのかも知れない。いずれにせよ再び運びだすためには、現行規定では、中身を目視確認しなければならないが、2重蓋を開けないままではそれは不可能なのである。
 したがって指針を検討した専門部会では、わざわざ「別紙」を発行して、蓋を開けなくても中身の安全性が推察できる方法を開発してくれるよう、次のように原子力安全委員会に要望している。「当専門部会では、以上述べた発送前検査の代替の考え方及びその前提となる金属キャスクや収納物の長期健全性に関する知見の蓄積方法について、原子力安全委員会において検討されることを希望するものである」。すなわち、目視検査の代替方法を問題にしているが、その考え方とは、「発電所施設内での乾式金属キャスクを用いた貯蔵の状況の調査等により、設計貯蔵期間にわたる金属キャスクや収納物の長期健全性が確認されれば」よいとするもの。どこかの発電所内に置いた乾式キャスク・サンプルを監視し、その中身の検査をして安全であれば、中間貯蔵施設内のすべてのキャスクとその中身も健全であると判断するという、まことに好都合な考え方である。
 このような姑息な方式まで設定しないと、中間貯蔵施設から使用済燃料を運び出せる保障が、たとえ形だけでもできないのだということを如実に示している。

中間貯蔵施設に反対し、核のゴミの発生を止める方向を目指そう
 関電は、プルサーマル用MOX燃料製造契約を今年度中に結びたい旨を福井県に対して表明し、2007年には実施したいとしている。関電は「二度あることは三度ある」という諺を知らないらしい。一度目はBNFL社のMOX燃料製造不正を関電が身をもって隠した経過でMOX燃料を廃棄処分。二度目はフランス・コジェマ社でのMOX燃料製造で不正を犯したため60億円も払って廃棄処分になっている。このような罪を負いながら、しかも現在の全国的なプルサーマル否認状況の中で、唐突に「今年度中に契約したい」などとは余りにも恥知らずではないだろうか。
 プルサーマルを頼りにする六ヶ所再処理工場でも、使用済燃料貯蔵プールのすでに3箇所で不正溶接のため水漏れしている。化学試験の最中、本体の配管でも不正製造のため硝酸が漏れている。このため使用済燃料の搬入は昨年12月以来停止状態にある。また、青森県の推進派木村知事は女性問題で窮地に陥っており、今回の県議会選挙では木村支持の力が大きく後退した。これらによって、再処理工場が動く見通しもきわめて不透明になってきている。
 そうなると各原発の使用済燃料は、再処理工場に運び出すこともままならなくなり、中間貯蔵施設に頼らざるを得なくなる。そのせいか、むつ市の杉山市長は中間貯蔵施設について「(国や事業者から)急いでほしいとの要請もある」と4月28日に述べている(デーリー東北)。また、関電の最も急迫している高浜3・4号の使用済燃料プールでは、急きょリラッキングによって貯蔵容量を増やす措置をとろうとしている(3号と4号それぞれ581体分の増)。
 これまで「トイレ」を考慮せずに、無政府的に原発をどんどんと設置してきたつけがいままさに表面化してきた。その責任を中間貯蔵施設という矛盾に満ちた形で住民に転嫁し、住民に危険を押し付けようとしている。そのために国は、50年間で1千億円の交付金(4月28日杉山市長談)という札束で、住民の顔をひっぱたこうとしている。しかし、この中間貯蔵施設という方向を許せば、危険な核のゴミが増え続けることになり、住民は核のゴミの泥沼へとますます引き入れられることになる。
 中間貯蔵施設に反対することは、このような危険な路線にストップをかけることである。その運動は同時に、必然的に核のゴミの発生を止める方向と連携せざるを得ない。現に、東電のすべての原発では、まさにいま、核のゴミの発生が止まっているではないか。この状態を継続し、拡大する運動と連携して、中間貯蔵施設に反対する運動を発展させることが重要となるだろう。
 中間貯蔵施設などという最も安易でごまかしと矛盾に満ち、危険に満ちた方策に断固として反対しなければならない。