JCO健康被害訴訟 第2回法廷―─―─―─
原告、住友金属鉱山の責任逃れを批判
       阪南中央病院 東海臨界被曝事故被害者を支援する会 Y


2月12日午後4時30分、JCO事故・健康被害訴訟の第2回目の法廷が開かれた。原告の支援者30人近くが集まり、傍聴席はほぼ原告支援者で埋められた。
 被告は前回法廷で答弁書を提出し、原子力損害賠償法(原賠法)の責任集中の原則から親会社の住友金属鉱山は責任が一切ないと主張していた。これに対して原告側弁護団は、この日の法廷で『準備書面(1)』を提出し、原子力損害賠償法について被告住友金属鉱山およびJCOの見解を批判、この裁判では訴状で述べたように民法を適用すべきであり、もし仮に原賠法を適用したとしても住友金属鉱山は責任を免れられないと主張した。

子会社化すれば原子力の責任は免れられる?!
原賠法の抜け穴を住友金属鉱山は小ずるく実行?

 原告側は、原子力損害賠償法を丹念に調べて批判を準備書面として提出した。当日は伊東弁護士が要旨を発言した。
 (1)原賠法は歴史的経緯からすると、原子力導入にあたって核燃料を輸出するアメリカ、イギリスが自分たちの責任を免責せよという理不尽な要求から出てきたものである。当時、原子力導入を目的としていた原子力委員会でさえ不当な要求であると議論している。しかしアメリカの強い要求のため法整備をせざるを得なかった。したがってこの法律そのものが歴史的経緯から不合理な内容を含んでおり、そもそも被害者救済を目的として検討された法律ではない。
 (2)原賠法の立法関係者たちは、原子力会社が子会社化して原子力を運用すれば損害責任を免除されかねないと懸念していた。例えば「おそらく財政的にきわめて基盤の弱い第二会社みたいなものを作って、そうして原子力発電事業をやる、つまり、法律をくぐるわけではないにいたしましても、法律をなるべくうまくかわしていくような方途を講ずるおそれもあります」(有澤原子力委員)。「小さい株式会社を作って、災害が起きたらみんな会社をつぶします」(我妻栄氏)。これでは住友金属鉱山がやろうとしていることそのものではないか。
 しかもここに挙げた我妻氏などの原賠法立法関係者は、被告が答弁書で引用していたのと同じ法律家である。原告弁護団は被告の論拠を返す刀で切り返し、住友金属鉱山の主張は法制定当時の懸念を地でいく「小ずるいやり方」であると批判した。

被告、住友金属鉱山・JCOは原告の受診歴を把握
事故前も含めてカルテをすべて公開せよと要求する被告弁護団

 被告側弁護団は、事故以前を含めて原告が医療機関で受診したカルテを出すよう要求した。受診歴のある医療機関を被告はすでに把握していて、リストを裁判所に提出していた。通常受診歴はプライバシーに係わるものなので他人は知ることができない。当日の法廷でも裁判長が「どうやってわかったのですか?」と被告側に尋ねるほどだった。おそらく被告は、裁判前に行ってきた補償交渉で、医療費の請求のために必要として大泉さんに出させた請求書等から受診歴を把握していたのだろう。補償する気もないのに様々な資料を交渉で提出させたのは、結局このような裁判対策等のためのイヤらしい情報収集だったことが改めて明らかになった。
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 今回の法廷は20分ほどで終了した。次回は4月23日(水)午後4時30分からに決まった。次の法廷から事故による被曝問題に入っていくことになる。