鳥取地裁が核燃機構にウラン残土の撤去命令
方面自治会が完全勝利!だが核燃は控訴して逃げる!!
            
ウラン残土訴訟を支える会  土井淑平


1.画期的な仮執行付きのウラン残土撤去の判決言い渡し

 核燃料サイクル開発機構にウラン残土撤去を求めた鳥取県東郷町の方面(かたも)地区の自治会と地権者の榎本益美さんの2つの民事訴訟のうち、自治会訴訟の判決言い渡しが6月25日に鳥取地裁であり、内藤紘二裁判長は被告の核燃にウラン残土の撤去を命じ、撤去の仮執行(=強制執行)も認めた。原子力訴訟では最初の住民側の画期的な完全勝訴である。
 判決の主文は、@被告は、原告に対し、別紙記載のウラン残土を撤去せよA訴訟費用は被告の負担とするBこの判決は、残土の撤去の限り、仮に執行することができる―というもの。別紙記載のウラン残土とは、方面地区に核燃が放置している約1万6,000?のウラン残土のうち、1990年のウラン残土の撤去協定書で核燃が撤去を約束した放射能レベルの高い約3,000?の細目を具体的に特定したもので、この撤去対象の残土の細目の特定については、双方で大筋の合意に達していた。
 自治会訴訟の争点は1990年の撤去協定書の11項「ウラン残土の撤去は、関係自治体の協力を得て、『米』『梨』等の収穫期までに着手し、… 一日も早く完了するものとする」の文言の解釈だった。被告の核燃はこれが満たされていないので撤去義務が生じないとして、11項を「撤去義務」の「停止条件」と主張したが、判決はこの主張をしりぞけ、原告側の「不確定期限」説を支持した。
 判決によると、この「不確定期限」とは「将来的には必ず動燃のウラン残土撤去義務の履行期は到来するが、ただ履行期が到来する具体的な時期について確定していないという性質のもの」である。これに関連して、判決は「撤去が何年も先になるような事態は全く想定されていなかったことが認められる」との判断を示した。
 さらに、被告が不履行のタテとしている「関係自治体(岡山県)の協力を得ること」についても、それは撤去協定書の締結から10年が経過した時点において、「最早不可能となったと考えるのが社会通念上相当である」「被告のウラン残土撤去の義務については、既に履行期が到来したものというべきである」として、さきの判決主文の撤去命令となった。

2.原告が代替執行を申し立て、被告は控訴してまた逃げる

 この判決を受けて原告の自治会側は7月2日、原告が被告に代わって残土を撤去する代替執行(=強制執行)を鳥取地裁に申し立てた。これが認められれば、被告が控訴してもウラン残土の強制撤去の道が開かれ、放置発覚から足掛け15年目のウラン残土の撤去がいよいよ現実のものとなる。
 具体的には、原告側は9月の梨収穫期が終わり次第、核燃が協定書で撤去を約束した約3,000?の撤去工事に着手し、約半年で撤去を完了する予定だ。鳥取地裁への申し立てには撤去先を明示していないが、岡山県上斎原村にある核燃人形峠環境技術センターへの搬入を前提に、数億円にのぼる撤去費用を概算している。
 一方、被告の核燃は7月5日、広島高裁松江支部に控訴するとともに、鳥取地裁に代替執行停止を申し立てた。これにより、方面地区のウラン残土の早期撤去は、代替執行についての鳥取地裁の判断と決定にかかることになった。
 予想されたこととはいえ、当事者責任の自覚もなく問題の先送りでまたも逃げを図る核燃の姿は、救いようのない日本の原子力産業の道徳的腐敗と無責任体質を象徴しているが、その無責任の権化の核燃は7月8日、市民団体が抗議するなか岐阜県瑞浪市で高レベル核廃棄物の処分に向けて「瑞浪深地層研究所」の建設に着手した。奇しくも西と東で、底無しの泥沼に突入する日本の原子力と核廃棄物の在り方が浮き彫りになったわけだ。
 人形峠周辺なかんずく方面地区のウラン残土問題が目の前の証拠物件として示しているのは、わずか40年前の核燃の事業の結果として発生した核廃棄物を野ざらしで放置し、そのあと始末もしないどころか、12年前に締結した撤去の協定書も反古にし、しかも他人の私有地を不法に占拠して居直っている、という法治国家にあるまじき無法状態である。
 核燃の監督官庁の文部科学省(旧科技庁)も、鉱山の監督官庁の経済産業省(旧通産省)も、このような無法状態を見逃しているというより、むしろ後見役として指導し助長している、というのが掛値のない実態である。日本では監督官庁のチェック機能が働かないのではなく、最初からチェック機能を持っておらず、度し難い官業癒着もしくは官官癒着の無責任体制で凝り固まっているのである。

3.再度のより徹底した断固たる実力行使も不可避に

 原告側の代替執行の申し立てに対する鳥取地裁の判断と決定は間もなく出るだろう。あるいは、このニュースが皆さんのお手元に届く頃には結論が出ているかも知れない。わたし自身は代替執行が認められると考えているが、万一これが認められないようなら、この日本はとうてい法治国家とは言えないし、文字通り世界に冠たる無法状態の野蛮国ということになる。
 自治会訴訟と並行して係争中の地権者の榎本益美さんの訴訟はやや進行が遅れているが、こちらの方も核燃が訴訟の引き延ばしを図らない限り、年内には判決言い渡しとなろう。わたしたちは勝訴を確信しているとはいえ、今回の自治会訴訟への核燃の対応を見ると、核燃が控訴によって先送りと引き延ばしを図ることは間違いない。
 わたしたちは、こういう無責任な核燃の逃げに乗るようなお人好しではない。今回の自治会訴訟も榎本さんの訴訟も、1999年12月の榎本さんと支援者のウラン残土撤去の実力行使を抜きにはあり得なかったが、もし自治会の代替執行の申し立てが却下され、榎本さんの訴訟でも核燃が控訴して居直ってくるとしたら、わたしたちの選択肢は一つに絞られてくるだろう。すなわち、それは再度のより徹底した断固たる実力行使である!



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