美浜の会ニュース No.67


 7月4日、関西電力は、激しい抗議の中、不正MOX燃料の返送を強行した。関電は、返送によって、一切の責任を不問にしたままデータねつ造事件を水に流し、BNFLとのMOX再契約を狙っている。同時に、政府・電力は、不正MOX返送をプルサーマル再開の合図として、柏崎刈羽3号炉での、今夏のMOX装荷を狙っている。巧妙に仕立て上げられた計画のもと、東電・国・地元首長達が一体となって、推進の動きを加速化している。
 昨年の住民投票の結果を踏みにじる品田村長を許してはならない。柏崎刈羽3号炉でのMOX装荷策動をつぶすことが、反プルサーマル運動の緊急の課題である。地元刈羽村・柏崎市・新潟県下では、「住民投票の結果を守れ」を合い言葉に、今夏を最大の山場として運動が開始されている。地元の運動と連携し、柏崎刈羽3号炉でのMOX装荷策動を粉砕しよう。

BNFLとの新MOX契約を阻止しよう
 7月4日、高浜原発対岸の音海海岸は、じりじりと照りつける夏の日差しの中、激しい抗議のシュプレヒコールに包まれた。海上ではグリーンピースの船とゴムボートが輸送反対の抗議行動を展開した。20隻以上の海上保安庁の艦船に護衛され、不正MOX燃料を積んだピンテール号は、高浜原発専用港を出港した。
 関電は、自らデータねつ造をひた隠しにしたこと、この燃料を装荷し住民を危険に陥れようとしたことについて、一切責任をとらなかった。輸送直前に浮上した輸送容器の腐食問題について、国交省はわずか1時間の目視検査で「異常なし」と決めつけた。関電は、6〜7年もの間、容器本体胴の検査をしていないことを認めながら、ただ「腐食はない」と繰り返すばかりだった。輸送ルートの沿岸諸国に対しては、輸送直前になっても「説明」にすら出向かなかった。 
 船が出港した直後、関電は「できるだけ早く再開したい」とプルサーマル再開の意図を語った。翌日BNFL・ジャパン社長は、早期のMOX新契約に向けた意思を表明した。関電・国とBNFLは、不正MOX燃料を返送することで、データねつ造事件を水に流そうとしている。輸送完了後、今年秋にも再契約を結ぼうとしている。
 不正MOX燃料が返送されても、本質的な問題は何ら変わっていない。関電・国は、データねつ造事件に関する自らの責任に蓋をしたままである。BNFLの安全無視の体質も依然そのままである。返送が完了したからといってすぐに契約を結べる訳ではない。関電はこれまで何度も、新しいMOX契約については、地元住民及び都市の市民を含めて多くの人々の了解を求めると公言してきた。
 不正MOX燃料は、約2年9ヶ月の間、高浜原発の使用済み核燃料プールに沈んでいた。その間に、「あのBNFLは二度と来るな」の声は、静かに広がっている。地元高浜・福井の運動と連携して、BNFLとの再契約を阻止する運動を強めていこう。

東電・国・地元首長一体となって推進の動きを加速化
 国と電力会社は、不正MOX返送をプルサーマル再開の合図にしようとしている。返送と軌を一にして、東電・国・地元首長達が一体となって、柏崎刈羽3号炉の今夏の定期点検でMOX燃料を装荷しようと動き出した。
 7月11日、東電は経産省・新潟県等に8月10日から始まる柏崎刈羽3号炉の「定期検査計画書」を提出した。そこには「プルサーマル計画は地元の状況を踏まえて判断する」と書かれている。「地元の状況」とは、8月末に予定されている知事・村長・市長の三者会談の結果だという。柏崎刈羽原発の所長は、「地元の理解は首長の判断が最も重要」と述べ、住民投票に現れた村民の意思を公然と踏みにじっている。定検は8月10日から9月24日までの予定。その内、燃料取り替えは8月下旬から9月上旬。東電は、三者会談がずれ込んだ場合には、「定期検査の工程を変更することは認められる」と定検延長も視野に入れた発言まで行っている。 
 地元首長達は、昨年の住民投票で示されたプルサーマル反対の民意を覆すために躍起となっている。7月22日から始める村内20カ所での村民対話集会の結果をもって村長が民意を判断し、それを踏まえて8月末の三者会談でプルサーマルにゴーサインを出そうとしている。
 7月11日、品田村長は、ベルギー・フランス訪問(7月6〜10日)の後記者会見を行い、ベルゴ社MOX燃料の「データの信憑性と健全性を確認した」と発表した。村長は、住民投票1周年の5月段階では、「民意が変わったという判断材料はない」と発言していた。それが「民意をさぐり、判断材料を得たい」と変わり、自ら積極的に民意を覆すための仕掛け作りに奔走している。
 7月10日、平山知事は、「国内一番手もあり得る」として、これまでの「プルサーマルのトップバッターは嫌」から態度を豹変させた。
 西川市長は、8月にもベルゴ社等を訪問すると発表した。村長の「データは健全」を上塗りするためだ。
 東電と地元首長達の歩調を合わせた、巧妙に練られた計画の背後には、経産省の強い意志が働いている。資源エネ庁は、各電力会社に対しプルトニウム利用計画書を提出させることを決定し、プルサーマル開始にネジをまいている。
 これら全体の背景には、とにかくなんとかプルサーマルを実施し、来年に迫った六ヶ所再処理工場のウラン試験、2005年の再処理工場運転開始を強行するという意図がある。

東電に手を引かれ、子供だましの視察で「データねつ造なし」――品田村長
 品田村長は、東電に手を引かれてベルギーまで出かけ、「私はデータを見てきた」を盾にとって、MOX装荷策動の突破口にしようとしている。しかし、刈羽村の住民投票の結果は、単なるデータ問題への意志表明ではない。それを越えた、プルサーマル自体に対する反対の意志を示したものである。
 既に昨年春、刈羽村議会は、ベルゴ社MOX燃料のデータ公開要求を決議した。しかし東電は、これを拒否した。これが刈羽村でのデータ問題の全てであり、データ問題はそこで終わっているのである。
 にもかかわらず村長は、おそまつな視察で民意を切り崩そうとしている。新聞報道によれば、村長は東電社員に付き添われベルゴ社の工場内を40〜50分見学したという。そして、わずか30分弱、パソコン画面上で、ペレット外径のデータをみたりグラフ化する作業を確認しただけである。肝心の、抜き取り検査データの公開は、今回も拒否された。
 子供だましの視察で「データねつ造なし」として、MOX装荷を策動する村長の姿勢そのものを、徹底して批判しよう。

村長は住民投票の結果に従え
 昨年5月の刈羽村住民投票結果は、原発建設以来30年にして初めて村民が自らの意思を表明し、プルサーマル反対を決定したものである。村長には、この結果を尊重し、それに従う責務がある。住民投票の結果を踏みにじる裏切り行為は、断じて許されるものではない。
 さらに、住民投票から1年を迎えた現在も、住民の意思は不動である。新潟日報が行ったアンケート結果がそのことを端的に示している。全体の半数の人々が、「プルサーマル反対の考えは変わらない」「反対結果を今も支持する」と表明している。今後のプルサーマル計画については、「白紙撤回」と「しばらく見送る」を合わせると73%にものぼり、「早期実施」はわずか8%に過ぎない。
 地元の運動は、これら村民の意思に依拠して、「住民投票の結果は不動」、「投票結果を守れ」を合い言葉に、最大の山場を迎えている。「村民集落集会」で、再度この民意を確認するために行動を開始している。地元刈羽村の運動に、柏崎市と新潟県下の運動が合流している。6月1・2日に柏崎市で開かれた「住民投票1周年、プルサーマル中止を求める全国集会」の熱気が下支えしている。刈羽の女性達が監視の目を光らせて粘り強く運動を続けている。
 全国の反プルサーマル運動は、互いに緊密に連携してプルサーマル実施をくい止めてきた。刈羽村住民投票の結果は、全国の反プル運動にとっても貴重な財産である。これを守り、今夏のMOX装荷策動を打ち砕こう。
 地元の運動と固く連帯しよう。全国から、「刈羽村長はMOX装荷策動をやめよ、住民投票の結果に従え」の抗議の声を集中しよう。


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