茨城県健康管理委員会委員長=大倉医師の発言
「事故後の検査結果で異常が多くてびっくりした
それで統計を取り直し正常範囲を変更した」
臨界事故被害者の会とともに参加した茨城県交渉報告

       阪南中央病院 東海臨界被曝事故被害者を支援する会 Y


 5月29日、臨界事故被害者の会と茨城県との交渉に美浜の会とともに参加した。3月に、ようやく初めての交渉に持ち込み、引き続いて2回目の交渉である。茨城県側は保健予防課の他に原子力安全対策課と健康管理委員会委員長である大倉医師(県立中央病院副院長)も参加した。
 JCO事故後、県によって住民の健康診断が実施されるようになった。しかし、それは「放射線の影響を検出することができない」が、周辺住民の「一般的な助言に資するために」行うという位置づけである。つまり影響はないはずだからふつうの住民健診を行っていればいいという姿勢なのだ。ところが実際には1999年の事故直後の健康診断では通常の基準値を適用すれば正常範囲から外れる人が異常に多くなっていたこと、それを覆い隠すかのように幅の広い(緩い)基準値を意図的に採用したことが交渉を通じて明らかとなった。
 健診の結果通知に書かれた血液検査のいくつかの基準値は表のように、事故直後には幅広く取られ、それ
白血球の
基準値の変遷
事故直後と翌年春の健康診断 翌々年の健康診断
1999〜2000年 2001年〜
白血球 好中球 28〜87.0% 40〜74%
好酸球 0〜12.0% 0〜10%
が2001年の結果通知からは幅が狭いものに変わっている。幅の狭い方(表では右側の2001年〜)が医療機関で通常使われるような値である。
 事故直後の健診でなぜこれほど幅の広い基準値を使っているのかを大倉医師に質問すると次のような驚くべき回答が返ってきた。「基準値を広げたのは委員会」。「正直なところ最初に(実際の検査結果の)データを見たときに非常に幅があることでびっくりした。委員会でも問題になりました。」「(検査機器のせいではないかということになり、JCO事故と無関係の)他の住民健診のデータをもらって統計処理をしてもらった結果、すごく検査値の幅が広いということが分かって基準値をそのときに1回目のやつ(表の左側)に直した」。
 2001年に元の幅の狭い基準値に戻っていることについては、「本来ならこの1回目の基準値がその後もずっと使われるべきだった。ところが県の(検査実施機関である)健診協会の印刷物が幅の狭い方の基準値を印刷してあったためにそれ以降は幅の狭い基準値(表の右側)が載ってしまった」というのである。
私たちが健康実態の聞き取り調査の際に、住民の方に持ってきてもらった健康診断の結果通知を見て、医師、看護師、検査技師の何人もが基準値を意図的に幅広く取り異常が出にくいように操作しているのではないかとの疑念をもったが、それはやはり正しかったのだ。
 基準値を変えたことを住民には知らせていないことについては「その批判は我々としては受けざるを得ない」と大倉医師は問題の一部を認めた。
 一回目の交渉からの宿題については次のような回答だった。(1)健康診断の案内前文にある「放射能の影響は検出できない」との文言を削除すべきという要求については、今回の健診では反対意見が多く削除することはできなかったが、次回(来年)は逆に住民側からも案を出してもらって検討したい、(2)県独自の放射線測定で非常に高い値が出ていることについては国の報告書から一歩も出ない回答だったため次回までの宿題に、(3)佐々木正夫氏の論文につては県から放医研に問い合わせをしたがもう少し時間をほしいということだった。これについては扱いに困っているという感じを受けた。今後も被害者の会とともに追及していきたい。



トップ