美浜の会ニュース No.66


 六ヶ所再処理工場の運転開始が迫っている。日本原燃は、ウラン試験の実施時期を当初予定より4ヶ月前倒し、2003年6月に開始する予定であると発表した。スケジュール通り進めば、来夏のウラン試験、2004年7月のアクティブ試験(実際の使用済み燃料を使った作動試験)を経て、2005年7月には本格運転の開始となる。
 プルサーマル実施の目途はますます立たなくなっており、再処理工場を稼働させる理由も目的もすでに消失している。六ヶ所再処理工場が動き出せば、イギリスやフランスで起こっている深刻な放射能汚染と被害が現実のものとなる。
 「プルサーマル計画自体が行き詰まっているとの指摘がある中で、なぜ進めるのか」「液体廃棄物が海洋に放出されることに不安がある」「戦闘機が墜落する恐れがある」等々、5月8日から六ヶ所村を皮切りに始まった、県内各地での県主催のMOX製造工場説明会の中で、政府と県、日本原燃に対して、住民から不安と不信の多くの声が突きつけられた。MOX製造工場に関する説明会でも、すでにこれだけの不安と怒りの声が出ている。MOX工場とは比べものにならないほどの汚染をもたらす再処理工場であれば、さらにもっと多くの声があがるに違いない。
 青森の反核燃諸団体は、「六ヶ所再処理工場の稼働中止を求める署名」を提起し、4月7日に行われた「4・9反核燃の日 市民集会」を起点に、100万人署名運動を開始した。
 この青森の運動に合流しよう。放射能汚染への不安の声をくみあげ、100万人署名をひろげよう。工場が放射能で汚染されてしまう来夏のウラン試験を阻止しよう。

六ヶ所再処理工場の目的はすでに消失している。刈羽の勝利を六ヶ所へ!
 プルサーマルだけが、「プルトニウム利用」のただ一つ残された候補であるという状況の下、六ヶ所敷地内に建設予定のMOX製造工場へプルトニウムを供給することが、いまや、六ヶ所再処理工場の唯一の目的である。しかし、そのプルサーマルも風前の灯火である。BNFLのデータ捏造事件を暴いた関電MOX闘争、福島でのMOX差止裁判闘争、そして昨年5月の刈羽村住民投票勝利によって、プルサーマル実施の目途はまったく立たなくなっている。
 さらに、仏コジェマ社製MOX燃料のプルトニウム・スポット問題と、違法製造疑惑は、東電のコジェマ社製MOXに直接波及する。東電のコジェマMOXを廃棄に追い込むことが、反プルサーマル運動の当面の焦点である。プルサーマル実現の可能性は極めて厳しくなっており、実施不可能であるという状況はますます確実なものとなりつつある。また、プルトニウム・スポット問題は、MIMAS法によって製造されたMOX燃料が危険な粗悪品であることを明らかにした。この問題は、コジェマ社と技術提携を結び、MIMAS法と同種の製造法を採用する六ヶ所MOX製造工場の信頼性に直接波及する。プルサーマル計画がほぼ破綻状況にある下で、六ヶ所再処理工場の目的が消失していることは明らかである。
 青森現地では、プルサーマルが立ち行かない下で、なぜ再処理が必要なのかという声が公然とあがりはじめている。政府と県、日本原燃に対する不信の声があがっている。5月9日に八戸で行われたMOX工場に関する住民説明会では、住民側から「プルサーマル計画自体が行き詰まっているとの指摘がある中で、なぜ進めるのか」との意見が出された。これに対して政府は、「計画を中断せざるを得ない状況にあるが、再利用を進めるために国でも最大限の努力をしている」と苦しい答弁に終始した。県議会や三沢市議会等でも、プルサーマルの頓挫が問題となっている。MOX工場立地の判断に関して木村知事は9日、プルサーマル計画が「順調に進んでいないことは遺憾だ」と述べ、いつものお定まりのポーズに過ぎないにせよ、核燃料サイクル協議会の開催と、プルサーマルについての政府対応を求めざるを得なくなった。
 六ヶ所再処理工場を運転する理由がなくなりつつある中、政府・日本原燃・電力各社は、焦燥感を強めている。漏水があっても、使用済み核燃料の搬入は計画通り進め、通水試験でのトラブルにもかかわらず、ウラン試験は前倒し。とにかく計画通り何があっても遅滞なくスケジュールを消化していくことで、再処理計画の事実上の破綻を塗り隠そうとしている。
 使用済み核燃料プールからの漏水が続き、原因どころか、漏水個所すら分かっていないにもかかわらず、「24時間監視体制」という口実にもならない口実で、「安全性は確保できた」とし、日本原燃はプールへの搬入を計画通り強行し続けている。電力各社も、計画通り搬出を進めている。4月11日、関西電力は使用済み核燃料38dの搬出を強行し、4月23日には、女川原発と福島第二からの69dが六ヶ所プールに搬入された。5月8日に六ヶ所村で行われた住民説明会では、漏水問題に対する国の監督責任を問う住民側に対して経産省は、「審査を受けたからといって小さなトラブルも起こらないということではない」と無責任極まりない。
 また、日本原燃は通水試験で発生した148件の不具合を「予想を下回り」、ほとんどは「国、県、村へ連絡するに至らない」ささいな動作不良だと強弁し、「工事進捗率は順調に進んでいる」として、ウラン試験の実施を前倒し、さらに使用済み核燃料を使うアクティブ試験の前倒しも口にしはじめている。
 この間の政府・日本原燃・電力の、強硬で頑なな姿勢に、その焦りの深さが表れている。
 全国の反プルサーマル運動は、互いの連携を強めながら、プルサーマルの復活を許さないという自らの運動を前進させるとともに、再処理反対の運動へと合流してきている。「刈羽の勝利を六ヶ所へ!」を合い言葉に、各地で百万人署名運動を進めよう!

放射能汚染に反対し、再処理を止めよう! 濃度規制はなく、海への放出は想定の数百倍に
 六ヶ所再処理工場の運転が開始されれば、放射能による深刻な環境汚染が引き起こされる。100万kw原発の重大事故によって放出されるプルトニウム量(原子力安全委員会指針)の25倍もが、六ヶ所再処理工場の1年間の通常運転で放出されることになる。これは、1月に2回のペースで原発重大事故が発生するのと同じである。
 六ヶ所周辺の海域は、放射能の拡散にとって、あまり広い領域ではない。海洋に放出された放射能は、津軽暖流に乗って主に南に流され広がって行くが、津軽暖流は親潮前線によって流れの範囲を制約される。海岸沿いの放射能の流れは八戸港にぶつかって、港内にたまり、全体的には親潮前線と三陸海岸に挟まれた狭い領域に集中していくことになる。その結果、再処理工場から海に放出された放射能は、八戸港、さらには150〜200km離れた宮古・釜石のリヤス式海岸に押し寄せることになる。実際、イギリスのセラフィールド再処理工場が出した放射能は、150〜200km離れたアイルランド沿岸部に押し寄せ、そこで獲れた魚から、環境放射能の10倍以上のレベルのセシウム137が見つかっている。三陸沖は、黒潮暖流と親潮寒流がぶつかり合い、プランクトンが豊富で、魚の集まる日本有数の漁場である。六ヶ所再処理工場が動き出せば、この豊かな海が放射能で汚染されることになる。
 大量の放射能を日常的に放出する六ヶ所再処理工場には、放出量自体の規制は存在しない。事実、放出放射能量の「規制値」について明らかにするよう、何度日本原燃に要求しても、「目標値」についてしか返答がない。六ヶ所申請書にも、規制値についての記載はない。書かれている放出量は、事実上、原発の敷地周辺での被ばく線量の目標値である年0.05mSv内に収まるよう、恣意的に設定された努力目標に過ぎない。
 六ヶ所申請書の海への放出目標値は、イギリス・セラフィールド工場からの現実の放出量と比べると、数百分の1となり、あまりにも低すぎる数値である。六ヶ所再処理工場が、イギリスの何百倍も性能の良い設備を使っているはずもなく、申請書の目標値は、恣意的に低く見積もられた値であることは明らかである。再処理工場が動き出せば、申請書の数十倍から数百倍もの放射能が放出される可能性は極めて大きい。
 5月8日の八戸での住民説明会では、漁業者から「液体廃棄物が海洋に放出されることに不安がある。チェック体制はどうなっているか」との意見が出された。これに対して日本原燃は、「(MOX工場から)分析、検査時に少量のプルトニウム排水が出るが、基準値以下の濃度であるのを確認した上で放出することになっている」と回答している。日本原燃は、再処理工場についても同じように「基準値以下だから安全」と言い続けてきた。しかし、再処理工場の場合、実際には基準値など存在しないし、また、努力目標値が守られる根拠も不明なのである。日本原燃自身、MOX工場からでも、プルトニムが排出されることを認めている。再処理工場の場合、排出されるプルトニウムの量はMOX工場の比ではない。プールからの漏水を隠し続けていた日本原燃の言うことなど信用できない。セラフィールド再処理工場よりも数百倍も性能が良い理由を、公の場で具体的に明らかにするよう、運動の力で要求しよう。
 また、現行の法令では、海への放出放射能の濃度規制も存在しない。六ヶ所申請書が想定するトリチウムの放出濃度は、原発の濃度規制値の2300倍にも達している。
 被覆管で密封された燃料棒をバラバラに切断し、閉じこめられていた膨大な量の放射能を開放する再処理工場は、必然的に、原発とは比べものにならないほど大量の放射能を放出する。直接的な濃度規制や、放出量の規制値など決めることができないというのが実態なのである。

イギリスとフランスでの汚染と被害の実態を教訓に、海や大気の放射能汚染に反対しよう!
 イギリスにあるセラフィールド再処理工場の周辺海域では、放出されたプルトニウムの95%が海底の堆積物に蓄積し、これがじわじわと海水中に溶け出すことで、魚介類を汚染し続けているという実態が明らかになっている。ところが六ヶ所申請書は、プルトニウムは100%海水に溶け込んで、拡散すると想定しており、蓄積については、まったく考慮していない。5月8日の六ヶ所村住民説明会で県側委員は、「MOXの粒子は溶けにくく、海中で蓄積することはない」と答えている。これはまったくのデタラメである。MOXの粒子、つまりウランやプルトニウムは、海水に溶けにくいからこそ、拡散しにくく、海底に沈降して蓄積し続けるのである。政府・原燃は、プルトニウムの蓄積とそれによる影響評価をやり直すべきである。一旦プルトニウムを出してしまえば、その汚染は消えない。六ヶ所再処理工場が稼働を始めれば、六ヶ所周辺の海域は半永久的なプルトニウム汚染をこうむることになる。
 再処理工場による放射能汚染の結果、英仏では深刻な健康被害、特に子供達の間で小児白血病が多発している。フランスのラ・アーグ再処理工場周辺では、浜辺で遊んだり、魚介類を食べる頻度が高いほど、小児白血病の発生率が高くなることが明らかになっている。セラフィールド周辺では、小児白血病の発生率が全国平均の10倍以上と高く、その後の調査・研究の結果、再処理工場で働く父親の被曝と、その子供達に発生している白血病との因果関係が示されている。
 アイルランド政府や北欧諸国は、英仏の再処理工場停止を強く要求している。ラ・アーグ周辺の「怒れる母親達の会」は、子供達を守るため、六ヶ所の再処理工場にも反対している。また、アイルランドでは、市民によるハガキ行動の結果、セラフィールド再処理工場の閉鎖を求める150万通ものメッセージが英ブレア首相らに届けられた。
 英仏での汚染と被害の実態を教訓に、海や大気の放射能汚染に反対しよう!

反プルサーマルと結合し、六ヶ所再処理工場の稼働を阻止しよう
 私達は、関電のプルサーマル復活を許さないための運動を一層強めていく。それと同時にプルサーマル反対と六ヶ所再処理工場反対を結びつけ、青森の運動に合流していきたい。4月28日にグリーン・アクションと共に大阪で開催した「プルサーマル反対と六ヶ所再処理工場反対を結ぶ市民の集い」を新たな運動の出発点と位置づけ、青森から提起された百万人署名運動への取り組みを開始する。
 全国各地から、青森に連帯していこう!学習会等を広げよう!放射能への不安の声をくみあげ、100万人署名を進めよう!来夏のウラン試験を阻止しよう!


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