4月の青森行動に参加して
青森の心を受け止め、再処理工場に反対を


■六ヶ所村戸別訪問
 4月5日、朝から三沢の古牧温泉を出発。マイクロバスを借りて約20名で尾駮浜の地区を戸別訪問。尾駮沼では白鳥が迎えてくれた。2人一組でマンガパンフを手に廻る。小さな子供を抱えたお母さんが、初めは「勤めているから」と迷惑そうな顔をされたが、話している内に「やっぱり心配は心配・・・」と小さな声でぽつりと話された。マンガパンフをじっと見つめていた。役場の近くの数軒では、「ノーコメント」とテレビで政治家が語るようにただ一言。
 集合場所の白鳥の沼にもどる。九州から来られた方が、なにやら一生懸命シャッターチャンスを狙っている。沼の遙か向こうの松林の上に太平洋の荒波が激しい波しぶきをあげているのが見て取れる。その荒波を撮っているのだという。沼から少し離れて反対側を眺めると、建設中の再処理工場の排気筒等が見える。後で分かったことだが、再処理工場から地下1.5mに敷設される総延長11qの放出管は、この尾駮沼のすぐ南側を通って太平洋へと続いている。岸から3qの地点で放射能が海へと放出される。海面に浮かんだ放射能は、あの荒波と一緒に岸に押し寄せるということだ。

■再処理とめよう!全国集会
 午後からは、「再処理とめよう!全国ネットワーク」主催で初の全国集会。六ヶ所村の福澤さんのあいさつに続いて、菊川さんから村の現状が報告された。昨年冬から重ねた個別訪問で得られた村民の声が紹介された。三沢の山田さんからは、再処理工場の防災計画が紹介された。避難区域はわずか半径5q。拡大すれば隣町にまで及び、行政区画単位を最優先させたものだという。グリーンピースからは英国のショーン・バーニ氏が駆けつけ、セラフィールド再処理工場の被害の様子、欧州で高まる再処理反対の声が紹介された。
 参加者は、北は北海道から仙台・新潟・石川・福島・千葉・東京・埼玉・京都・大阪、そして福岡まで。プルサーマルの実施を押しとどめている各地域からの報告、女川原発反対運動など、それぞれの運動の紹介と、再処理工場反対のため連帯しようとあいさつが続く。会場には九州の方が持参された大きな「プルサーマル計画を断念せよ」の手書きの横断幕が掲げられている。玄界灘を越せないプルサーマル計画を象徴するかのようである。
 第2部は、当会代表の講演「迫りくる六ヶ所再処理工場の運転−海の放射能汚染」。初心に返って再処理反対に立ち上がろうと、「石そそく 垂水の上のさわらびの 萌えいづる春になりにけるかも」の万葉集を紹介。申請書では海洋に放出された放射能は広く拡散して影響はないとされている。しかし実際は、親潮前線に阻まれながら津軽暖流にのって、八戸から釜石、三陸海岸にまで放射能汚染が広がると、申請書を厳しく批判。次に、特別報告では、英国・アイルランド政府から取り寄せた膨大なデータを基に汚染の実態等が紹介された。
 夕食後は、「作戦会議」と交流。こちらも実り多いものだった。しかし、まだ手の内をあかすわけにはいかないので「秘密」とさせていただく。

■「4.9反核燃の日」市民集会−100万人署名の出発式
 翌日は三沢から車で2時間かけて青森市内へ。青い森を抜け、途中のドライブインでは、残雪とフキノトウがお目見え。午前10時から「4.9反核燃の日」市民集会に参加した。「六ヶ所再処理工場の稼働中止を求める100万人署名」の出発式である。開会のあいさつは、核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会代表の平野良一さん。再処理工場の運転を阻止するため力を集中しようと力強いあいさつ。1万人訴訟原告団の浅石弁護士は、先のウラン濃縮工場判決を「世論遊離、時代逆行」と厳しく批判し、「この1年が正念場」と基調提起された。
 続いて、青森県内各地からのアピール。六ヶ所村の坂井さんからは、入院中の高田与三郎さんに代わって昨年の六ヶ所村長選挙のお礼。大間原発反対、東通原発反対、むつ中間貯蔵反対、イーター誘致反対等々、活動紹介が続く。さらに、高レベル廃棄物搬入、低レベル廃棄物搬入、ウラン濃縮工場、使用済み核燃料搬入問題がある。青森1県だけで、これだけ多くの課題と立ち向かっているのだ。こんな話があった。大間原発予定地では地権者が反対して土地を売らずに頑張っておられる。その地権者宅に電源開発の人間が朝な夕なに、最近では夜8時頃に裏口から押し掛けては「土地を売れ」「日本の原子力政策に刃向かう犯罪行為だ」と脅しをかけているという。後日みた「東奥日報」には「1億円の解決金打診」の話が載っていた。今度は札束攻撃。地権者は「金の問題ではない。漁民のためにも土地は売らない」。さらに中間貯蔵反対運動の方は、「むつで中間貯蔵を受け入れれば再処理工場は動かないという声もあるが、両方とも拒否していく」ときっぱり語られた。
 それぞれの運動を担っている9人が壇上に並ばれた。100万人署名運動の共同代表となって、署名運動の出陣式だ。先ほどの一つ一つの話がよみがえってくる。これほど多くの課題を抱えながら、それでもなお、いや、それだからこそかもしれない、迫りくる再処理工場の稼働は何としても止めねばという思いが、けわしい顔、伏し目がちな顔から伝わってくる。

■屋外集会とデモ
 午後は青い海公園での集会とデモ。労働組合が主流の屋外集会だ。会場には赤旗が林立していた。浅石弁護士が背筋をピンと伸ばして熱弁を振るっている。社民党が署名運動の成功をと声を張り上げている。2500人の参加者は壇上の話し手に耳を傾けている。様々な思いは別として、参加者の胸の内には、核燃施設や核のゴミを押しつけられることへの怒りや不安が、消しがたいものとしてあるに違いない。
 1万人訴訟原告団の旗の下に集まってデモに出発した。「貯蔵プールは壊れているぞ!」とのシュプレヒコール。一瞬、変わったスローガンだなと思ったが、いや、それが事実だ。

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 わずか2泊3日の青森行動だった。六ヶ所村に根をはって活動を続ける人々。地道で困難な訴訟活動を続ける人々。100万人署名には、青森の人々の思いが詰まっている。県民の心の奥底にある不安の気持ちを汲み上げながら、署名運動が行われていくだろう。
 そして今度は、全国からの声を青森に届ける時でもある。青森の運動に合流しよう。嶮しい道を、知恵を出し合い、力を重ね、したたかに進もう。六ヶ所再処理工場稼働中止のために。(S)



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