美浜の会ニュース No.62


反プルサーマル闘争の天王山での勝利

 5月27日、刈羽村住民投票の勝利万歳!世界最大の原発集中立地の地元で、30年以上に渡る困難な闘いを続けてこられた「原発反対刈羽村を守る会」の運動、新潟県内の運動、そしてがんじがらめの地元のしがらみの中でも、ついに声をあげられた村の女性達。これら全ての力が結集して勝ち取られた勝利である。
 村民は明確に「枕元のプルサーマル計画」に反対の意思を表明した。反対に投じられた1925票は、投票数の過半数を超え、賛成票に400票もの大差をつけた。保留票131票とあわせると有権者の過半数に達する。投票率は88.14%と高く、保留票は極めて少数であった。原発誘致以来32年もの間、国と東京電力の圧倒的な権力の前に、一度たりとも村民の意思を表明する場はなかった。住民は、初めて手にした自らの意思を表明する機会である住民投票を大切にし、考え抜いて、反対を選択された。心から敬意を表したい。
 刈羽の勝利は、高浜、福島でのプルサーマル中止を勝ち取った流れの中での勝利でもある。また、九州から北海道まで、まさに全国から寄せられた1万枚以上の激励のハンカチが刈羽村の人々を応援し続けた。JCO臨界事故の起きた東海村・那珂町の母親達の声が、「プルサーマルは命の問題だ」と、メッセージやハンカチで刈羽村の女性達を励ました。刈羽の勝利は、全国の運動の勝利でもある。
 これで、国・電力が狙ったプルサーマル第一陣は全て出鼻をくじかれた。プルサーマル計画は、事実上不可能となった。刈羽の勝利は、プルサーマル計画の息の根を止める大きな一撃である。まさに、反プルサーマル闘争の勝敗を決する天王山での勝利である。

事前了解願いを撤回せよ!柏崎刈羽プルサーマル計画を断念せよ!

 翌日5月28日、品田村長は、柏崎市長、新潟県知事と個別に懇談した後、「民意に従い『計画ノー』を主張する」としながらも、99年の事前了解願いには一切ふれなかった。29日には、東電社長と面談し、現在の定検での実施は困難と伝え、午後には平沼大臣と面会し同様の趣旨を語った。しかし、いずれも事前了解願いにはふれないままである。
 東電の南社長は28日、「やります、やりたい、やらせて下さい」と往生際の悪さをさらけ出し、社内に社長を本部長とする常設組織を設置すると発表し、あくまでもプルサーマルに固執している。しかし、今月の定期検査でMOX燃料を装荷することは正式にあきらめた。
 小泉首相、平沼経済産業大臣は、28日の衆議院予算委員会で「一層の努力が必要」「安全性のPRが足りなかった」と述べ、関係省庁で協議会を設置しようとしている。
 6月1日、関西電力も、社長をトップにして社内に推進会議を発足させた。電事連は、プルサーマル推進の連絡協議会の設置を決めた。
 これらの背景には、青森に使用済み燃料を搬出するために、プルサーマルの旗を降ろせないというジレンマがある。
 青森県知事は、「国の対応を慎重に見極める」と相変わらずの発言を繰り返している。
 一方、刈羽村・新潟県の反対運動は、「事前了解願いを撤回せよ」と即刻行動を開始している。28日、「刈羽村を守る会」等地元三団体は、東電に対し白紙撤回を申し入れた。柏崎・巻原発反対県民共闘会議も県に同様の申し入れを行った。29日、柏崎原発反対地元三団体は、柏崎市長に対し、事前了解願いの撤回等を要請した。刈羽村の住民投票実現を目指した村議会議員は、「村長・村議会は結果を尊重する」と明記されている投票条例に従って、6月4日に全員協議会を開き、事前了解願い撤回の議会決議を予定している。賛成多数で可決される見込みである。
 品田村長・柏崎市長・新潟県知事は即刻事前了解願いを撤回せよ。東電・国は、柏崎刈羽プルサーマル計画を断念せよ。

使用済み燃料は核のゴミ、青森へ搬出するな!

 刈羽の勝利を受けて、使用済み燃料=核のゴミを搬出するなの行動が、各地で同時に開始されはじめた。
 私達は、グリーン・アクションと共同の呼びかけで、住民投票勝利の翌日、関電への緊急行動を行った(10頁参照)。刈羽村の勝利を受けて、使用済み燃料の青森への搬出を中止するよう申し入れた。関電は、高浜1・2号機から合計84体約39トンの使用済み燃料搬出の準備を始め、6月初めにも搬出を狙っている。1月から始まった本格搬入の中で、関電としては初の搬出となる。
 同日、青森県でも素早い行動が起こされた。「核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団」等は、青森県知事や経済産業省等に対し、使用済み燃料を受け入れるなと申し入れ行動を行った。
 5月31日には、福井県の「小浜市民の会」が関電若狭支社に出向き、「MOX燃料が使えなければ六ヶ所の再処理工場へ使用済み燃料を搬出するいわれはない」と関電に申し入れた。
 本格搬入は始まったばかりである。今年1月から合計164トンが運び込まれている。今年度中に各電力会社から残り271トンを運び込む計画になっている[別紙表参照]。全国各地で、それぞれの電力会社に搬出を中止せよの声をあげていこう。

反プルサーマル運動の総力と青森の運動を結合して政府に迫ろう!

 プルサーマル闘争に勝利した今、プルサーマル反対運動の総力を結集し、青森の運動と結合して、新たな運動を開始しよう。その第一歩として、準備が進められている東京での全国集会を成功させ、平沼経済産業大臣との交渉を実現しよう。国に対し、プルサーマル計画の中止と、使用済み燃料の青森への搬出中止を迫ろう。
 現在の反対運動の焦眉の課題は、まず第一に、刈羽の勝利を打ち固め、プルサーマル計画の中止を国に迫ることである。
 国や東京電力は、住民投票で負けるやいなや「説明不足だった」などと繰り返している。プルサーマルを6月の定期検査で開始しようとしていたのに、その直前になって「説明不足」とはどういうことか。私達の電気料金から332万円もの金を使って平沼大臣署名のビラを出し、さらに東京電力の社員を動員した推進派へのてこ入れ等、十分行った結果ではないか。
 原子力委員会は、「国民対話懇談会」を開催するという。刈羽の住民は判断を「保留」したのではない。明確にノーの意思を表明したのである。いまさら「対話」とは、負け犬の遠吠えそのものである。
 国と電力会社が行うべきことは、「一層の説明」でも「対話」でもない。住民の意思を尊重して、柏崎刈羽原発でのプルサーマルを断念し、国のプルサーマル計画を中止することである。
 第2は、平沼大臣に自らの言葉の責任をとらせ、青森への使用済み燃料搬出計画の中止を迫ることである。
 プルサーマルの実施が事実上不可能になったことにより、全く新しい状況が生み出された。プルトニウムの使い道がなくなったことによって、六ヶ所村再処理施設は目的を失った。使用済み燃料は、「リサイクル燃料」ではなく、ただの核のゴミと化した。もはや、青森に使用済み燃料を運び込む理由も正当性も全て吹き飛んだ。
 このことは、平沼経済産業大臣が刈羽村でまいたビラが如実に語っている。「リサイクルしないなら、使用済み燃料を発電所からリサイクル施設(青森県六ヶ所村)に運び出すわけにはいきません」(18頁参照)。プルサーマルが止まった今、まさに「運び出すわけには」いかないのである。
 原発サイトで溢れかえる使用済み燃料は核のゴミとなり、青森の人々にとっては、いわれなき核のゴミとなった。全国から、青森への使用済み燃料搬出反対の声をあげよう。「青森にこれ以上核のゴミを押しつけるな」は、今や誰しもが当然に認める要求となった。必然的に、六ヶ所の再処理施設の建設も中止しなけれ
ばならなくなった。
そして使用済み燃料の搬出が止まるならば、既にそれだけで、核燃料サイクル政策が崩壊することを意味するのである。
 使用済み燃料の「中間貯蔵施設」も永久貯蔵施設という本質をさらけ出すことになった。「中間貯蔵施設」の建設に反対しよう。原発サイトでの貯蔵施設の増設にも反対しよう。
 青森への使用済み燃料の搬出が止まれば、原発は核のゴミで糞詰まり状態となり、核のゴミの発生源としての姿をいかんなく人々の前にさらけ出すことになる。核のゴミ問題にほおかむりをして、原発を強引に推進してきた国と電力会社の責任が厳しく問われるべきである。問題の根本的な解決の前提は、発生源を止める以外にない。

 私達はグリーンアクションとの共催で、6月10日、刈羽村から武本和幸氏を招き「刈羽村住民投票報告会」を開催する。その場で、刈羽村の勝利の話を詳しく伺い、今後の運動の方針について多くの人々と共に議論する。それを踏まえて、関電に対して、青森への搬出を中止せよとの大衆的な声をあげていく。6月12日に関電交渉を予定している。全国各地でも議論を巻き起こそう。
 政府に対し、以下の要求をつきつけよう
     ★柏崎刈羽原発プルサーマルを断念せよ!
     ★プルサーマル計画を中止せよ!
     ★青森への使用済み燃料搬出計画を中止せよ!
   ●東京での全国集会に結集し、経済産業省との交渉を成功させよう!


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