●お詫びと訂正
【表A】にある、大飯1、2号機の使用済み核燃料貯蔵プールの管理容量が違っているのではないかというご指摘を、読者の方からいただきました。【表A】を作成した時点で元にした関電資料には、「管理容量」の記載がなかったので、「管理容量は貯蔵容量から1炉心+1取り替え分を差し引いたもの」という記述にしたがって計算し、貯蔵容量704体 − 炉心193体 − 取替分64体 = 管理容量447体 としていました。しかし、関電広報グループから入手した新しい資料を再度チェックしてみたところ、ご指摘の通り、大飯1、2号機の管理容量は384体となっていました。大飯1、2号機の場合は、貯蔵容量から1炉心+2取り替え分を差し引いたものが管理容量となっているようです。
 その他の原発の管理容量についても、計算値と関電広報グループ資料とでは、端数の丸め方によって、プラスマイナス1体程度の食い違いがありましたので、これも関電広報グループの資料に合わせるようにしました。
 また、高浜原発では、早い時期にプールの増強が行われているのではないかとのご指摘もいただきました。読者の方からいただいた資料によれば、高浜3、4号機の貯蔵設備について、12/3炉心から22/3炉心(1188体)に増強するための変更許可が1992年に出ていました。使用済み問題がクローズアップされるようになった1998年以降の一連のプール増強計画の中に、高浜原発が入っていなかったということで、記事では、「リラッキングや増設を実施していない高浜原発」という表現を使っていましたが、不正確な表現ですので、削除しました。



解説
関西電力の使用済み核燃料プールの貯蔵状況について


 関西電力の原発サイト内にある使用済み核燃料貯蔵プールの詰まり具合について、簡単に見ておきたい。【表A】は、2001年4月末時点での、貯蔵状況を示したものである。容量および貯蔵量はすべて燃料集合体の数で示している。「取替分」とは1回の定期検査で取り替えられる集合体の数で、通常、約3分の1炉心分が取り替えとなる。また「管理容量」とは、プールの全量から1炉心分の集合体数と1取り替え分である3分の1炉心分の集合体数を差し引いたものである。なぜ「管理容量」などという概念があるかというと、事故などで、炉心にある燃料をすべて抜き出さなければならないような事態を想定して、緊急時用に貯蔵プールを空けておく必要があるからである。つまり貯蔵プールは、容量いっぱいまで使うことができず、「管理容量」が、プールの貯蔵限界となる。従って、表の「占有率」とは、管理容量のうちに貯蔵量が占める割合であり、これが、貯蔵プールの空容量の逼迫状況を示す指標となる。占有率が100%を超えているということは、すでにプールが満杯で、使用済み燃料が溢れ出しているということを意味する。

【表A】各サイト毎の貯蔵プールの貯蔵容量・管理容量および貯蔵量
(関電広報のデータを元に作成)
貯蔵容量 共用化 炉心 取替分☆ 管理容量 貯蔵量 占有率
美浜1号
美浜2号
美浜3号
288
555
424(1118※)


121
121
157
40
40
52
128
395
216(910※)
106
363★
260
83%
92%
29%※
高浜1号
高浜2号
高浜3号
高浜4号
424
424
1188
1188



157
157
157
157
52
52
52
52
216
216
980
980
196
242
691
744
91%
112%
71%
76%
大飯1号
大飯2号
大飯3号
大飯4号
704
(1号と共通)
2129
974(2129※)



193
193
193
193
64
64
64
64
384
(1号と共通)
1873
718(1873※)
311
(1号と共通)
676
656
81%
(1号と共通)
36%
35%※

美浜合計 1267(1961※) 399 132 736(1430※) 729 51%※
高浜合計 3224 628 208 2388 1873 78%
大飯合計 3807(4962※) 772 256 3036(4191※) 1643 40%※
※:括弧内の数字はプール増強後の数字、また占有率の分母となる管理容量は増強後の数字を使用。
☆:取替分は炉心÷3で計算して求めた。
 ★:関電広報資料の2001年3月末の値319体に、美浜2号第19回定検(2001年1月〜4月)での取替分44体を加えたもの。


号機毎で見た場合、高浜2号は既に溢れており、高浜1、美浜1、2も後1回の定検で溢れ出す。
 関電の3つのサイトの内、高浜原発の占有率が最も高い。その中でも、高浜2号についてはすでに占有率が100%を超えている。これは、すでに3、4号への号機間移送が行われていることを示すものである。号機間移送にも、手間とコストがかかることが考えられ、関電としては、何としても2号のプールを空けたい所だろう。
 【表B】を見て欲しい。これは、今年度の関電の使用済み搬出計画である。高浜2号分が、126体(約定検2回分)で全輸送量の6割を占めているが、その背景には、すでに2号プールが溢れ出しているという事情がある。また、高浜1号も、ほぼ満杯状態であり、あと1回の定検で溢れ出すことになる。同じく、美浜1号、2号もほぼ満杯状態で、後1回の定検で溢れ出す。今年度の搬出計画の内、高浜2号以外が、高浜1号、美浜1、2号である背景にも、このような逼迫状況がある。

【表B】関西電力2001年度使用済燃料輸送計画(関電HPより)
発電所名 輸送体数 輸送目的 搬入側施設名 輸送完了時期
美浜1号 14体 再処理 核燃料サイクル開発機構東海再処理工場 第3四半期
美浜2号 30体 再処理 日本原燃(株)六ヶ所再処理工場 第3四半期
高浜1号 42体 再処理 日本原燃(株)六ヶ所再処理工場 第1四半期
高浜2号 42体 再処理 日本原燃(株)六ヶ所再処理工場 第1四半期
高浜2号 84体 再処理 日本原燃(株)六ヶ所再処理工場 第3四半期


共用化を考慮し、サイト全体で見た場合、高浜原発は2004年頃に満杯となる。
 以上までの話は、あくまでも各号機毎の逼迫状況である。実際は、全てのサイトで、号機間の共用化が可能なので、例え今年度の搬出が行えなかったとしても、号機間移送でしのぐことができる。そこで次は、サイト全体としての貯蔵プールの占有率の推移について、現時点までと今後の見通しについて考え、六ヶ所への搬出が不可能となれば、いつの時点で貯蔵プールが溢れ出すのかを見ておきたい。
 【グラフC】は、関電の3つの原発サイトについて、貯蔵プールの占有率の推移をグラフにしたものである。2001年4月までは実績、それ以降は、これまでの実績を元にした推定値である。まず第一に、美浜原発と大飯原発を見て欲しい。いずれも1999年から2002年頃にかけて、貯蔵プールの拡張、あるいはリラッキングによる増強を行っており、2000年頃を境に、占有率が大きく下がっているのが判る。第二に、貯蔵プールが満杯となる時期であるが、美浜原発の場合は、後5〜6回の定検後、2007年の中頃から2008年にかけてである。高浜原発の場合は、2〜3回の定検後、2004年頃である。大飯の場合は、約10定検後、2011〜2012年くらいである。現時点でもっとも逼迫状況が厳しい高浜原発の破綻がもっとも早い。もし仮に、プールの増強、中間貯蔵が行えず、六ヶ所への搬出が不可能となれば、3〜4年後にはプールは満杯となり、関電は高浜原発を止めざるを得なくなるだろう。

       【グラフC】共用化を考慮し、サイト全体で見た場合の使用済み核燃料貯蔵プール占有率の推移




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