美浜の会ニュース No.60
福島MOX裁判−−3月1日結審
刈羽村−−住民投票実現に向け進む


福島県知事がプルサーマル見直し発言、 新潟県知事は「一番手は困る」

 2月10日、福島県知事は、「プルサーマルも含め1年程かけてエネルギー政策を根本的に見直す」「プルサーマルについては県民の理解は進んでいない」と記者会見で発表した。知事の発言は、東電が4月からの定検で装荷を狙う福島原発T−3プルサーマル計画の見直しを求めるものである。
 続いて14日、今度は新潟県知事が「県民感情を考えると(新潟がプルサーマルを)一番目に受け入れるわけにはいかない」と語った。3月末にも到着予定の柏崎刈羽原発MOX燃料も、「一番手だけは困る」というこの知事の発言によって、行方知らずになろうとしている。
 福島県知事の「見直し」発言の発端は、東電が新規電源開発を3〜5年凍結すると発表したことにある(マスコミ報道による経過参照)。東電の発表内容は、福島県の広野火力発電は凍結するというもの。また、当初は福島原発増設・東通原発新設も凍結するとしていたが、一転して原発は予定どおり進めるとした。東電は、長引く景気後退で電力需要が低迷し、既存の発電設備で十分まかなえること、さらに電力自由化に対応するため、金のかかる新規開発を押さえ、莫大な有利子負債を削減して財務体質を改善させることを最優先した。この東電の発表に対し、国はただ「国策」としての原発推進だけを強調した。 
 東電の電源開発凍結がプルサーマルに飛び火した。両県知事の発言は、プルサーマルに限って言えば、あわててプルサーマルを受け入れることに何のメリットもなくなったことを表している。どこが最初に受け入れるのか、その後に続く県はあるのか等々の懐疑の念の強さを示している。そして、これらの背後にあるのは、行き詰まり・矛盾だらけの無責任な国の原子力政策・原子力行政である。さらにプルサーマル反対運動の力がある。
 東電・国のプルサーマル計画は、大きくとん挫しようとしている。最終的にプルサーマルを葬り去るため、反対運動の力を結集し、追い打ちをかけよう。

福島原発MOX裁判いよいよ結審

 原告1900名余り(内福島県民約900名)で闘われているMOX燃料使用差止仮処分裁判は、いよいよ3月1日に結審を迎える。争点は@ペレット外径寸法の抜取検査における不正操作の有無、A不良ペレットを装荷した場合の安全性、の2点である。裁判は、この2つの争点とも原告優位に進んでいる。
 東電の最大の弱点は、1ミクロンきざみのデータを出せないことにある。裁判所は、関電は生データを出しているのに、なぜ出せないのかという旨の求釈明を2度にわたって出した。それにも関わらず東電は、相変わらず4ミクロンきざみの「加工データ」しか提出していない。
 さらに、証人として出廷した小山英之は、この「加工データ」を使ってペレットのデータねつ造が行われた可能性を示唆するグラフを提出していた。これに対し東電側弁護士は、グラフの異常性を認めたうえで、それは、データねつ造のためではなく、砥石の調整のためだと言いだした。しかし、グラフの異常性が「砥石の調整であること」を証明する証拠の提出を裁判所から求められたが、これにもなんら答えていない。

「ギャップがなくても安全!燃料ペレットが壊れるだけだから!」東電技術者

 さらに、東電の技術者祢津氏は、法廷で驚くべき発言を行った。ペレット外径寸法が厳密に管理されているのは、ペレットと被覆管のすき間(ギャップ)が必要なためである。ところが祢津氏は「燃焼が進むと2サイクルぐらいでギャップが埋まる。だから、初期状態のギャップは影響しない」と述べた。ギャップが埋まった後、被覆管に圧力がかかるのでは、との裁判長の質問に対しては「ペレットと被覆管がくっつくと圧力によりペレットが壊れるから大丈夫」と言ってのけた。自らの申請書でも、安全審査の基準でも、ギャップが必要なことが決められているのに、それを自ら投げ捨てて、「ギャップがなくても安全」と居直り、その後は「ペレットが壊れるだけだ!」と平然と語っている。
 こんな東電にMOX燃料の装荷を認めるのは危険すぎる。東電は、燃焼の進んだMOX燃料の挙動がどうなるのか、PCMI破損がどの程度で発生するのか、しかもはじめから燃料ペレットと被覆管のギャップがないような不良ペレットを多く含んでいる場合にどうなるのか、こんな危険な「実験」を福島で行おうとしている。この東電の発言をいたるところで暴露しよう。

住民投票条例制定に向けて−−刈羽村の熱くねばり強い運動

 新潟県刈羽村では、プルサーマル是非の住民投票条例制定に向けた取組が進められている。昨年末に村議会が採択した住民投票条例は、村長の再議権行使によって廃案となった。これに対し、条例賛成の村議等を中心に「私達の声を村政にとどける会」が結成され、1月27日から直接請求署名が開始されている。直接請求に必要な署名数約100名に対して、署名の受任者は100名を超えている。
 一方、プルサーマル推進派は、「住民投票の署名はお断りします!」のステッカーを全戸に配布し、署名ボイコットに必死である。
 しかし実施者の東電は、こちらでも腰が引けている。1月21日にはプルサーマル賛成・反対両者での「公開学習会」が予定されていた。東電も当初は了承していた。ところが、反対派として小山英之が出ると分かると、「討論が専門的になりすぎる」等として討論会を断り、逃亡した。
 私達は、輸送中の柏崎刈羽原発MOX燃料にもデータ不正の疑いが濃厚であることをグラフを作成して訴えていた。東電は、最大の弱点であるデータ公開ができないこと、さらに福島MOX裁判での東電の窮地が公になることを恐れたからに違いない。
 立地点刈羽村での運動に連携して、柏崎市では「圧倒的多数の市民の意思を表明し、全国の皆様の同じ思いで市政を包囲する」として柏崎刈羽原発のプルサーマル凍結を求める署名が開始されている。

プルサーマル計画を葬り去ろう

 福島MOX裁判と刈羽村住民投票運動は、それぞれ独自の目的を掲げて進むと同時に、両者は互いに鼓舞しあい強め合うようにして進んでいくに違いない。柏崎刈羽MOX燃料は3月末にも到着予定である。その前後に福島MOX裁判の決定が予想される。村議会で条例案の審議が行われるのが4月後半ころ。最も早い場合は、5月初旬に住民投票が実施されることになる。装荷が狙われやすい定期検査は、双方とも4月〜7月の予定となっている。
 東電は、福島MOX裁判と刈羽村での住民投票条例制定の運動によって、双方から強烈な反撃を食らっている。そこに今度は、頼みの綱のはずだった県知事の「見直し」発言によって、身動きがとれなくなっている。
 東電のプルサーマル計画=国のプルサーマル計画を葬り去る絶好のチャンスである。MOX裁判闘争と新潟の運動を全国に紹介し、支援しよう。全国の連帯した力で、プル
サーマル計画を葬り去ろう!



【福島県知事「プルサーマル見直し発言」の経過】

2/8 東京電力の種市副社長は、原発を含む発電所の新規開発を3〜5年間凍結すると発表。これに対し福島県当局は、ソウルに出張中の知事と連絡をとり、同日夜「新規電源開発のみならず、核燃料サイクルを含めたエネルギー政策全般を抜本的に見直すべき」とのコメントを発表。
 9 平沼経済産業大臣は、「東電からは原発は計画通り実施すると聞いている」。経済産業省事務次官も「原発については引き続き建設を促進していくと聞いている。原子力政策の推進は重大だ」と発言。そして東電の南社長は「国策として進めるべき原発は今後とも着実に開発していくことが肝要であり計画通り推進」と一転。
 9 ソウルに出張中の福島県知事は「見直しの中にはプルサーマル計画も含まれていると受け止めている」「4月の実施はあり得ないと思う」と発言。
10 仙台空港で知事の記者会見「プルサーマルも含め1年ほどかけてエネルギー政策を抜本的に見直す」
14 双葉郡浪江町での相双地方市町村議員研修会の講演でも、知事は「プルサーマル実施は腰を落ち着けて判断する」「福島は事業者に約百年間協力してきた。千葉や川崎市の火力発電所は建設され、広野は凍結されるでは県民がもてあそばれている」 
14 新潟県知事が記者会見で「新潟県が最初(に導入する原発立地県になる)というのは抵抗がある」「県民感情を考えると一番目に受けるわけにはいかない」と発言。


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