8月9日、長崎にプルトニウム爆弾が投下された日に、東電福島T−3号でのMOX燃料装荷の差し止めを求めて、138名もの福島県民を初めとする863名の原告(債権者)が福島地裁に仮処分の申立を行った。
昨年の高浜MOX裁判闘争の流れ、高浜4号でのBNFL社のMOX不正と関電・通産省スキャンダルを暴きだした福井と関西の運動の力を受けて、何としてもMOXの装荷を阻止したいという人々の強い意志が、昨年の何倍もの勢力となって再び対東電の闘いへと結集した。とりわけ、福島県の人達一人ひとりの思いが、138名という数字に如実に現れており、この数はさらに増え続けている。
 提訴の翌日、通産省は突如として、この福島T−3号用の燃料を検査合格とし、「安全」のお墨付きを与えた。東電MOX裁判闘争はその出発点から、東電・国との全面対決の場となったのである。
 高浜裁判闘争の成果を最大限に活用し、全国の力を結集して、東電MOX裁判に勝利しよう。

 東電MOX裁判−−「絶対おかしい不合格ゼロ」

 この東電との裁判闘争は、けっして容易なものではない。高浜4号裁判の場合は、すでに高浜3号での不正が明らかになっており、福井県議会の要請に従って「異例」とも言える公開されたペレット外径データが存在した。そのデータの分析から、原告側は不正の動かぬ証拠を提出することができ、勝訴を強く確信した。NII(英国原子力施設検査局)の存在も最後にはものを言った。
 ところが、この教訓を肝に銘じたのか、東電と通産省は、福島T−3号に関してはけっしてまともにデータを公開しようとしない。運動の側が切り込む手がかりをいっさい与えようとしないのである。そのためこの裁判闘争では、データ公開そのものを実現させることが大きなテーマにならざるを得ないのであり、その過程を通じて一段一段と不正の証拠を積み上げていくしかない。
だが他方、この闘いには有利な基盤がすでに存在している。高浜裁判闘争の経験、分析資料と分析手法であり、それと東電の場合を意識的に比較することが東電分析の重要な方法となる。我々美浜の会は、このためにもてるすべてを提供し、東電資料の分析に全面協力してきた。高浜裁判闘争の財産は、すべて東電闘争の中に引き継がれている。
 MOX燃料の製造・検査には、本質的な困難が存在し、それがデータ不正の基盤となった。この対関電闘争の中で明らかになった事実が、対東電闘争においても共通の基礎となる。東電は、1ミクロンきざみのデータが存在するにも関わらず、わざわざ4ミクロンきざみのグラフしか出していない。また、抜き取り検査はブレンダー(BNFLのロットに相当)ごとに行われているにもかかわらず、それらをわざわざいくつか合体させたグラフしか出していない。この事実を裁判の場で明らかにすることは、全てのデータを出させるための有力な手がかりとなる。
 そして、何よりも、東電が自慢したベルゴニュークリア社の「優秀さ」が逆に東電にとっての落とし穴になろうとしている。福島T−3では、70ブレンダー中に不合格はゼロである(高浜4では199ロット中7ロット、つまり3.5%が不合格)。不合格ゼロは、不正がない限り起こりえない。「絶対おかしい不合格ゼロ」が原告団のキャッチフレーズとなっている。
 このような東電の汚い手口を広く暴露し、それをそのまま容認した通産省に怒りの声を集中しよう。また、福島県知事と県議会が東電に対しデータ公開を求めるよう働きかけよう。

 関電・通産スキャンダルは東電・通産スキャンダル

 BNFL事件に対する何の反省もなしに、通産省は東電MOX燃料に合格のお墨付きを与えた。今や、関電・通産省スキャンダルは、東電・通産省スキャンダルである。
 8月3日、関電と市民団体6団体の共催で、「関西電力MOX燃料問題に関する公開討論会」を開催した(詳細は6頁参照)。昨年12月17日の約束から、8ヶ月近くもたってやっと開催にこぎつけた。公開討論会で明らかになったことは、関電自らの責任、すなわち、データねつ造を隠しつづけたことも、市民の安全を脅かそうとしたことについても、関電が何ら反省していないということである。関電は、プルサーマルに「理解と協力」をしてくれた人々に対し、実施できなかったことだけをわびている。参加者から追及されると「不安は与えたが、安全を脅かしてはいない」と居直る。オスパー会議で英仏の再処理による海洋汚染の禁止が大多数で決議されたことをうけ、関電の再処理を中止せよとの要求に対しては、「法的拘束力はない」と平然と言い放つ。コジェマ燃料のデータ公開については「私達がデータを見れるから大丈夫」などとデータ不正問題の反省のかけらもない。
 この関電の姿勢は、データ公開を拒む東電に引き継がれている。通産省は、データも見ないまま、検査で合格を与えた。このような姿勢全体に対して、全国から抗議の声をあげていこう。

 福島T−3プルサーマルを阻止しよう

 今回の裁判の目的は、差し迫っている福島T−3でのプルサーマルを阻止することにある。提訴の翌日、通産省は輸入燃料体検査で福島T−3燃料を合格として、お墨付きを与えた。これによって、裁判闘争は、東電・国との全面対決の場となった。国・東電は、高浜プルサーマルが延期となった分を取り戻すために、福島T−3でプルサーマルの実施を急いでいる。
 さらに、この裁判闘争の趨勢は、ストレートに柏崎刈羽原発でのプルサーマル計画に影響を及ぼさざるをえない。柏崎刈羽用燃料は、福島T−3と同じく、ベルゴ社で製造されたものだからである。7月19日東電は、アメリカ政府に対し、柏崎刈羽用MOX燃料の海上輸送の許可申請を出した。年内に輸送することを狙っている。これらに対し、地元柏崎刈羽と新潟県の運動は、自治体に対して、データ公開を要求する運動を強めている。

 全国の力で、東電MOX裁判に勝利しよう

 これから始まる東電MOX裁判闘争を、全国各地の力をつなぎ合わせて前進させよう。高浜裁判闘争の成果を最大限に活用し、全国の力を結集して、東電MOX裁判に勝利しよう。
 同時に、この対東電闘争を通じて、新たに形成される力は、必ずや、次の対関電の闘いに跳ね返り、コジェマ製MOX燃料の装荷を阻止するために、大きな力を発揮するであろう。


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