7時間にも及ぶ東電交渉(3月27日)
「データは出せない」「ベルゴ社を信じる」−−東電
ふくろうの会 S


 「データは出せない」、「ベルゴ社の専有情報で詳しくは言えない」、「ベルゴ社を信じる」。ベルゴ社性善説に立ち、超然と構える東電。それでも何とか情報を引き出そうと粘る市民とのやり取りは7時間にも及んだ。以下に東電2月報告書をめぐるこの交渉で明らかになった東電用MOX燃料の品質保証の問題を挙げてみたい。

@不合格ブレンダーが柏崎原発用で存在し、不合格ペレットに再受験を許していた
■東電は抜き取り検査時に、柏崎原発用ペレットで不合格ブレンダーが存在したことをはじめて認めた(ブレンダーはペレット約7000個を含む抜き取りの単位。BNFLのロットに相当)。不合格ブレンダーの存在は2つの問題を示す。一つは製造そのものに問題があり、不合格ペレットを作っていたこと、もう一つはそれを全数測定ではじけなかったことである。後者については、全数測定装置に問題があったかもしれないし、あるいは作られたペレットが植木鉢型だったり、断面が楕円だったりして、測りようによっては合格してしまうものだったかもしれない。更なる問題は、東電がこの不合格ブレンダーに含まれていたペレットを、信頼性に疑いのあることがはっきりした全数測定にかけるだけで再検査を許し、合格させていたこと。こんなのありですか?

A再測定不正の可能性は否定できない
■仕様値をわずかに超えるペレットは90度回して測り直した、というBNFL社で新たに発覚した不正は、当然ベルゴ社でも同様な不正があったかどうかの確認が必要となる問題だ。ベルゴ社性善説に立つ東電は「そんな確認必要ない」というのだが、抜取の様子を聞いてみると――抜取検査の際、検査員は測定結果を見た上でデータを送ることになっている。グローブボックス内でペレットを手で移動させながらの作業。そこに人の意思が介在する余地はある――再測定不正の可能性ありありではないか!

B東電の立会い検査では不正を見ぬけない
■東電は、測定時の不正がない根拠として、――ベルゴ社の抜取検査のあと、東電が立会い検査を行い、両者のデータを比較したらほぼ一致したこと――を挙げている。しかしそこで東電は、立会い検査時の測定点数は3点ではなく1点であることを明らかにした。1点だと、ペレットがBNFL社と同様に「植木鉢型」で、これを合格させるために中央付近でだけ3点の測定をする、といった不正をベルゴ社が行っていた場合には、東電がこれを確認することはできないではないか!

C全数測定データは密かに保存されていた
■全数測定のデータについて、東電はまず公式見解を述べる――全数測定は一時的には記録されるが、次の工程で上書きされて消去される――だが、歩留まりも知らずに製造能力をどうやって確認するのかを問いただすと、明言はしないが、現実には――上書きされる前にアウトプットされ、レーザー計測装置認定報告書という社内文書の基礎データにされているらしい――とのこと。なんだあるのか…今までかくしてましたね!あるなら出しなさい!

D報告書につけたヒストグラムはおまけ
■東電が2月に通産省に出した報告書にあるデータらしき唯一のものは、付録にあるロットごとのヒストグラムである。東電の場合、抜取の単位はブレンダーで、ロットというのは、そのブレンダーを1〜11ほどをまとめたものである(BNFLでいうロットとは異なる)。なぜまとめたのか?ロットごとにする意味は何か?この問いに対し東電は――このデータはあくまで全体が仕様値内であることを示す補足資料。全数のグラフ1枚でも十分なのだが、これだけでは満足してもらえないと思い、ベルゴ社と協議の上でこれをつけた。統計的な分析を行うためには、抜取の単位であるブレンダーごとのデータでないと意味がないことは承知している――と回答。「データを出せ出せ」とうるさい連中のための「おまけ」かいな?あなたも「馬鹿」にされているのですぞ通産省さん!

E東電はデータの分析をしていない
■通産省をも「馬鹿」にする東電は、今度は自らの「至らなさ」を告白する。――このヒストグラムをつくったのはベルゴ社で、東電が確認したデータはこのヒストグラムと同じもの――というのだ。東電が行ったデータの確認は「仕様値の範囲内にある」ことだけ。それだけのために何度もベルギーに足を運んだの?

F抜取規格に従わず
■抜取規格はMILスタンダードを元にしたが、完全にそれに従ったわけではなかった。規格とは異なり抜取数は32個ではなく、32個以上で、ブレンダーごとにばらばら。そして規格では「なみ検査」から始める所を、始めから基準の甘い「ゆるい検査」を行っていた。そんな気まぐれな検査ってありなの?



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