「美浜の会ニュース」No.56主張

脱プルトニウムに向かうヨーロッパ・新しい流れ
福井・関西と東京・福島・新潟の連携した運動でプルサーマルを阻止しよう!
もんじゅ不当判決糾弾!運転再開阻止! 関電はコジェマでのMOX燃料製造を中止せよ!

 高浜3・4号MOX燃料のデータねつ造が直接の発端となって、イギリスBNFLのウソと不正が次々と明るみに出てきている。まるで積年の腐りきった膿が吐き出されるかのようである。対関電のプルサーマル反対運動が、BNFLのデータねつ造を明らかにし、それがイギリス・ヨーロッパ全体、さらには米国にまで連鎖的に波及し、BNFLを最大の窮地に陥れている。このような事態の中で、英国政府は、ソープ再処理工場の閉鎖、再処理から核廃棄物貯蔵への政策転換を余儀なくされはじめている。英国BNFLをとりまく新しい状況は、脱プルトニウムの国際的な流れの象徴である。
 BNFLに続いてフランスのコジェマ製MOX燃料でもデータ不正が発覚した。MOX燃料は、まさにウソと不正なしには製造できないことを示している。関電が、次はコジェマ製MOX燃料でプルサーマル再開を狙っていた矢先である。
 BNFLの悪行と、欧州での脱プルトニウムに向かう新しい動きを広範に宣伝していこう。BNFLのMOX新工場(SMP)での契約を結ばせないこと等を通じて、この流れを強固なものとしていこう。さらに、コジェマのMOX燃料でプルサーマルを再開しようとする関電の目論見に対し、先手をうって攻勢をかけよう。
 「もんじゅ」裁判原告団は、福井地裁の不毛判決に対し、即刻控訴し闘う決意を明らかにした。東電のプルサーマルに反対する運動は、関西の運動と交流を深めながら、東京・福島・新潟の力を結集して、果敢に、粘り腰で取り組まれている。すでにコジェマのデータ不正問題で、共同して質問書を提出している。このような全体の力を結集し、日本のプルサーマル計画を阻止していこう。「もんじゅ」運転再開を阻止していこう。
BNFL・ソープ再処理工場−−「終わりのはじまり」
 「BNFLスキャンダル」はとどまるところをしらない。
 ドイツでは、2月にBNFL製MOX燃料でデータねつ造が発覚した。ニーダザクセン州のウンダーベーザー原発は、データねつ造されたMOX燃料を取り外し運転を停止している。ドイツ政府と電力会社はBNFLに損害賠償を請求している。スイスでもBNFL製MOX燃料のデータ紛失等が発覚。これによって、ドイツとスイスはMOX燃料の輸入を中止した。さらにスウェーデンをも含む3ヶ国は、再処理のための使用済み燃料輸送を中止した。
 デンマークとアイルランドが中心になって、6月に開かれるオスパー会議(大西洋の環境保護を目的とする国際会議)で英・仏再処理工場閉鎖の決議が提出される。漁業を中心とする北欧諸国は、英・仏再処理工場からの放射性廃棄物のたれ流しによって、アイリッシュ海・北海・北東大西洋の海洋が汚染され続けてきたことに強く反対してきた。アイルランド政府は、6月の会議が「セラフィールドの終わりの始まり」になるだろうと述べている。
 BNFLは新しいビジネスとして、米国の古い核兵器工場の洗浄に60億ポンド(1兆200億円)の期待をかけている。しかし、米国内の反対運動は、「BNFLにプルトニウムを扱う資格はない」として、その入札からBNFLを閉め出すよう米国エネルギー省に圧力をかけている。BNFLの目論見は、ここでも当てがはずれようとしている。
 さらに英国内でも、民営化され、軽水炉原発を所有する英国エネルギー社が、経済的に見合わないとしてBNFLでの再処理をやめることを表明している。
 このような状況の中、英国政府は、再処理の放棄を余儀なくされている。2ヶ月以内に、再処理をやめて核廃棄物貯蔵に転換することを盛り込んだ政府文書を発表するという(『ガーディアン』3月27日付)。英国政府は既に、BNFLの部分民営化のために予定していた49%の株の売却を中止し、2002年以降に延期した。昨年末にウエスチングハウス社とスイスのABB社を買収し、一大原子力産業への道を走り続けてきたBNFLは、ソープ再処理工場閉鎖にむけた幕開けの時を迎えようとしている。ソープは、BNFLの象徴的な存在であり、放射能汚染の元凶である
 これらは、イギリス・ヨーロッパ、アメリカ、日本等の反対運動の実質的に連携した力によるものである。プルトニウム利用に反対する声が国際的な大きな潮流となって、巨大核独占体を押しつぶしていく、時代の新しい流れを象徴している。最後的勝利のためには、まだまだジグザグな道が続くことは避けられない。日本はBNFLの最大の顧客であり、プルトニウム利用にしがみついている。その日本での運動がますます重要になってくる。
 この間明らかになったBNFLのウソと不正の実態、欧州での脱プルトニウムの新しい状況を広範に宣伝していこう。BNFLのMOX製造新工場(SMP)との新契約を結ばせないこと、再処理を中止させることを通じて、この新しい流れを強固なものとしていこう。
フランス・コジェマ製MOX燃料でもデータ不正が発覚
 フランスのコジェマ製MOX燃料でもデータ不正が発覚した。MOX燃料は、まさにウソと不正なしには製造できないことを示している。ドイツのイザール原発2号のMOX燃料の抜取検査データでロット(1ロットは7000個のペレット)ごとに100個の抜取検査を行っているにもかかわらず、60個分のデータしか存在していないというのである。ドイツ政府は、コジェマに対し、ドイツ用のMOX燃料全てについて安全点検を要求している。
 関電が、BNFL製MOX燃料でプルサーマルを再開することは、当分の間、実質的に不可能となった。そのため、次はコジェマ製のMOX燃料で出直しを狙っている。昨年9月から燃料製造を開始し、4月中には完成すると伝えられている。その矢先のデータ不正発覚である。BNFLの時と同様、急遽社員をフランスに派遣せざるを得なくなっている。
関電はコジェマでのMOX燃料製造を中止せよ
 対関電の反対運動の焦点は、コジェマ製MOX燃料を使用させないことにある。私達はグリーン・アクションと共同で、関電と福井県知事に対し、要望書を提出した(別紙参照)。コジェマでのMOX燃料製造を中止すること、ドイツでのデータねつ造について詳細な情報を公開すること、関電用のコジェマ燃料についての資料を公開する事等を要求している。関電に、BNFLデータねつ造問題での市民との公開討論会を、約束どおり実現させよう。コジェマMOX燃料の資料を公開させ、プルサーマル再開の目論見に先手をうって攻勢をかけよう。これを通じて、関電のプルサーマル計画を最後的に中止に追い込んでいこう。
福井・関西と東京・福島・新潟の連携した運動でプルサーマルを阻止しよう
 コジェマ製MOX燃料の使用をやめさせる運動は、東電のプルサーマル反対運動とも密接に関係している。東電用MOX燃料はベルギーのベルゴニュークリア社製である。ベルゴ社はコジェマの子会社であり、技術的にもコジェマと密接な関係にある。さらに、東電用の次の燃料は、コジェマとの契約である。
 東電は、ベルギー製MOX燃料に関する資料を全く公開していない。東京の反対運動は、3月24日、7時間にも及ぶ東電交渉を行い、まさに粘り腰で運動を強めている。
 大阪・京都・東京の7団体が共同で、3月27日、コジェマ燃料のデータ不正問題で通産省に質問書(別紙参照)を提出した。昨年の対関電MOX裁判の勝利をバネに、福井・関西と東京・福島・新潟の運動が交流し、連携して運動を進めようとする機運が高まっている。この力を一層強化し、プルサーマル計画そのものを阻止していこう。

 現在の反対運動は、プルサーマル阻止に向けた新しい運動の連携、さらには、国際的なBNFLを巡る脱プルトニウムに向けた大きな流れの中にある。福井地裁の「もんじゅ」判決は、これら全体の流れに逆行する不毛な判決である。いたるところで判決に対する怒りの声が広がっている。「もんじゅ」原告団と弁護団の不屈の闘いと、プルサーマル阻止で力を蓄えつつある全国の運動が強固に結びつけば、必ずや「もんじゅ」運転再開を阻止できるに違いない。
 プルサーマル阻止、「もんじゅ」運転再開阻止に向けて、新しい運動の力を強化していこう。



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