旧動燃の従僕になりさがった福井地裁
=== 不毛・不当判決糾弾! ===

もんじゅの運転再開阻止!廃炉にせよ!

  「今日の判決は、不毛判決。動いてもいない『もんじゅ』があたかも成功したかのような判決。上告し、本当の姿にかえって初めて裁判が成り立つ。老いているが先頭に立って『もんじゅ』の最後を見届けたい!」  

 90歳の原告団長・磯辺甚三さんは福井地裁の判決に対し胸のうちを語る。
 夜6時から開かれた「苦闘15年!もんじゅ訴訟判決報告集会」で、地元福井の住民・労組員・各地からの支援者ら250名を前にした高齢の原告団長の言葉は、もんじゅ廃炉までの闘争継続宣言であった。

 2000年3月22日午前10時。福井地裁で、高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」に対する2件の訴訟(総理大臣に対する「原子炉設置許可処分無効確認等請求」=行政訴訟と旧動燃に対する「建設・運転差止請求」=民事訴訟)の判決があった。裁判長・岩田嘉彦が下した判決に対し、「殺生亡国文殊許さず 積悪もんじゅ必至消滅」を掲げた原告団・弁護団は、一かけらの誠意すら見られない不当判決との声明を出し、この日のうちに控訴を決定した。この判決は、34名の原告と「2度ともんじゅを動かさないで」に署名した21万人を超える福井県民の期待と心を踏みにじり、かりそめにせよ裁判所として持っているはずの「正義」とか「真理」の追究すら投げ捨て、国・旧動燃(現在は、核燃料サイクル開発機構)の言い分だけを認めた判決であった。 
 ナトリウム漏洩火災事故の後のこの署名については、私たち「美浜の会」も協力し署名活動を行った。まだ11月の末というのに激しく吹きすさぶ吹雪の中、「原発反対福井県民会議」に協力した署名活動だっただけに、この判決を見守った私たちも怒りと憮然たる思いが交差した。
 「県民会議」事務局長の小木曽美和子さんは、怒りもあらわに「腹わたが煮えくりかえる判決」と糾弾された。
 10時丁度の判決の後、10時半と3時から2度の記者会見、夜6時から報告集会が行われ、弁護団が不当判決の内容を指弾した。
@ もんじゅの危険性について判決は、「将来高速増殖炉を実用化して電力供給の用に供することを目的として、その研究のために設置、運転されるものであって、電力源の開発という有益性を有することは明らかであり、この程度の有益性があれば、社会的にその影響を無視できる程度の危険性を正当化するには十分である。」とした。
実用化の2段階も前の「原型炉」であり、国・事業者でさえ次の段階の「実証炉」は未確定、実用化はまったく不明というのに、裁判所がなぜ有益性にまで言及できるのか。全く客観性・合理性に欠ける。
 A民事訴訟での判決では、「総点検に基づく改善措置」を前提にして「安全」と言い切った。しかし、そのような「改善措置」は、未だ具体的内容が明確でなく、設置変更申請書も提出されておらず、したがって原子力安全委員会も承認していない。にもかかわらず、それを先取りして裁判所が「安全」のお墨付きを与えるという恐るべき判断を下したのである。「安全総点検の結果、本件さや管と形状が同一である他の温度計に交換又は撤去することとしており、右改善措置が実現される蓋然性は十分認められる。したがって、温度計の設計、取付けに誤りがあったことは、本件原子炉施設の安全性を失わせるものではない。」と。
 B裁判所で審査するべき内容を非常に狭め、「本件安全審査においては、基本設計ないし基本的設計方針にかかる事項のみがその対象になるのであって、本件温度計の具体的構造、設計は、本件安全審査の対象とはならない。」と、安全性の具体的内容の検討は裁判所の判断外とした。
 Cさらに、ナトリウム漏れ火災事故で安全性が問題となった「床ライナ」については、原子力安全委員会・佐藤一男の証言「床ライナの具体的安全性は安全審査の対象外」だけを取り上げ、同時に証言した「(事故で得られた)新知見に基づけば、現時点では安全審査と通らない」ことは全く無視し、「床ライナの温度上昇に関する新知見によって、本件安全審査の合理性が失われるものでない」と独断的な判定をした。
上記のような裁判長の独断および、判断すべき点を判断せず、判断してはならない内容で判断を下していると指摘した福武弁護人は、「国・事業者にとって120%の勝利」「裁判官は常識はずれ」と酷評した。
 この不当判決については、報道機関さえ批判した。「司法の役割放棄」(毎日新聞22日夕刊)、「(東海村被曝事故で不信・不安が高まっている)国民感情から100m以上も後ろを走る判決」(ABCテレビ・ニュースステーション)などなど。
 このように論理性に欠け、裁判官の魂を旧動燃に売り渡したかのような判決である。不当判決を許さず、原告適格を最高裁で勝ち取ったのと同様、控訴して勝訴しようと原告団・弁護団からの力強い呼びかけがなされた。
 控訴審(名古屋高裁金沢支部)で、原告団長・磯辺さんの「(判決を)出した者も恥をかいている」との言葉を実現しなければならないし、「これだけ論理性のない判決なら必ずひっくり返」(海渡弁護士)さねばならない。今後もより一層もんじゅ裁判闘争を支援し、「もんじゅ」の運転再開を許さず、廃炉まで闘いぬこう! 



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