あまりにずさんな東電のプルサーマル燃料の検査

関電よりひどい福島原発用燃料の使用を止めよ!

ふくろうの会 S

 関西電力が高浜4号炉の検査記録捏造燃料の使用を断念する中で、今度は東京電力の福島第一原発3号炉で2000年2月に使用予定のプルサーマル燃料が、製造時に全数検査すら行われていないことが発覚、さらに抜き取り検査もずさんであることが明らかになってきた。
 高浜原発4号炉用の燃料では、製造したイギリスのBNFL社でペレットの外径検査をまず全数で自動で行い、そのあと約3000個につき約200個の割合(約6%)で抜き取り検査が行われていた。その抜き取り検査で記録捏造があった。一方、東京電力は福島第一原発3号炉と柏崎原発3号炉用のプルサーマル燃料をベルギーのベルゴニュークリア社で製造していたが、そこでは全数検査すら行われていなかった。そして外径の抜き取り検査も関西電力の1/10の僅か0.6%ほど、福島原発用では、総数約43万個中たった2800個余りでしかなかった。
 検査機器はどうか。東電が9月に通産省に出した報告には、「ペレット外径は、品質管理部門の検査員がデジタル式マイクロメーターにより測定し、測定値は自動的にコンピューターのデータベースに登録される。」とある。なにかこれでよさそうな感じだが、後ろにある「概要図」を見ると、外径の測定は一点だけ(関電は上中下の3点であった)。ポンチ絵だが、板状のものがばねにつるされて降りてきて、ペレットに当たったところで測定するという感じの絵が描かれている。これと、通産省が質問に答えての答弁書にある「データ入力スイッチを足で踏むことにより、データがコンピュータに転送される」との記述と「なぜ足?」という素朴な疑問を加味すると、どうやら測定そのものは手作業で、手で測定装置を降ろし足でデータを送るを繰返す、という姿が見えてくる。確かにこれでは全数検査は無理であろう。(この作業を43万回繰返すことを考えてみよ)
 また測定の精度についても、合格の範囲が直径10.35mm+/−0.02mmと1/100mm単位。関電は1/1000mmの単位であった。関電の10倍の「甘さ」である。
 燃料ペレットと被覆管の隙間は、運転中に燃料が膨張することを見越して、厳密にある一定の間隔を保たなければならない。ペレットが大きすぎて、ペレットが被覆管に密着してしまうと被覆管をいため、放射能漏れの原因となるし、小さすぎると今度はペレット内部に熱をためてしまう。急激な出力上昇が起きた際には、欠陥燃料はこなごなになり、大量の放射能漏れにつながる。しかもプルサーマル用燃料はウラン燃料と違い、ペレットを成形するために削る作業をする際に水が使えないというやっかいな性質がある。そのために寸法にばらつきがでやすく、検査はウラン燃料よりも厳格さが要求されるはずである。
 東電の検査は、抜き取り数、測定の点数、測定機器、測定精度、どれをとっても燃料の使用を断念した関電より劣るではないか。これで燃料の健全性をどうやって確認しようというのか。福島用燃料についても即刻使用を止めるべきであろう。
 ベルゴニュークリア社の抜き取り検査は通常(ベルギー国内用)は1%と聞く。東電の0.66%は最低レベルに近い。しかもこれは、東電の側が要求して決まるものらしい。東電はなぜそんな低いレベルを要求したのか?0.66%というのは1ロット7000体中わずか46本である。合格の基準や合格率、測定結果の元データは全く明らかにされていないが、こんな状態で安全審査の手続き上の問題はないのかについても、資料の開示を要求しながら徹底的に追求していきたい。
 これは、福島瑞穂議員に11月提出された東電の今年9月付の報告書が、12月に中村敦夫議員に提出されたものと内容が異なるということが偶然わかり、この疑問を両議員が追及するなかで明らかになった。表向きは東電の報告書だが、通産省との合作であることを図らずしも示す事実である。

※この記事は「ふくろうの会」からの投稿です。詳細は「ふくろうの会」HPへ。
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