県民の命と安全をカネで売り渡した
福井県知事のプルサーマル受入糾弾!

高まる事故の危険に監視の目を強めよう!


 6月17日、福井県知事は高浜プルサーマルの正式受け入れを表明した。安全性はそっちのけで、核燃料税アップの約束と小浜線電化費用を関電が一部負担することで決着をつけた。まさに、県民の命と安全をカネで売り渡した。プルサーマル年内実施という国・関電のスケジュールを最優先させた。私達は知事の受け入れを断固糾弾する。
 約1年半にわたる高浜プルサーマルを巡る動きの中から、浮かび上がってきたものは何か。一言でいえば、新たな危険の始まりである。危険なものを「安全」と言いくるめるデタラメな安全審査。地元首長達は「地域振興策」のみを追い求める。電力はばらまくカネを取り戻すために、定検の短縮等で一層危険な運転を強行する。老朽炉に容赦のないムチがふるわれる。このようにして、かつて経験したことのないような事故の危険性が高まっている。これをくい止めるためには何が必要なのか。私達は番犬のように、安全性に鋭い監視の目を光らせ、不審な振る舞いをする敵に食らいつき、反撃を加える姿勢を堅持することである。
 福井県は高浜町で安全判断の説明会を行うという。福井市等々でも県民への広範な説明会を行うべきである。あらゆる場を通して、高浜プルサーマルの危険性を暴露・追及していこう。
 国・関電・東電は、7月下旬からMOX燃料の輸送を開始しようとしている。国際的な運動と連帯し、MOX燃料輸送に反対しよう。関電のプルサーマル実施を阻止しよう。

何もしなかった「県独自の安全性確認」

 6月17日、福井県知事はプルサーマル受け入れを正式に表明した。受け入れにあたって知事は、「最大の決め手は県独自の安全性確認」と語った。これほど欺瞞的な言葉があるだろうか。県民を愚弄するにもほどがある。
 では、県独自の安全性確認とは、いったいどのように行われたのか。知事は何も具体的に説明しなかった。県の文書によれば、「国の安全審査でその安全性が確認されているかどうかを確認した」という。これでいけば、県独自の確認とは、安全委員会が安全と言っていることを確認したにすぎない。私達の要望書(5/12付)に対する回答(6/17付)では、白抜きの安全審査資料でも安全性は確認できるとまで言っている。これが県独自の安全性確認の実態である。結局、何もしなかった。
 しかし、それでも知事は「最大の決め手は安全性の確認」と言わざるをえなかった。それは、私達を含む県内外の諸団体が県との交渉・要望書等を通じて安全性についての批判・疑義を集中的に投げかけ、最終局面で、安全性問題を浮かび上がらせたからである。全国から「安全をカネで売り渡すな」の多くのハガキが寄せられたからである。その安全性では、高燃焼度MOXの危険性が、まさに焦点となった。フランスでも許可されてないほどの高燃焼度MOXの危険性、カブリ実験炉でのMOX燃料棒破損にもかかわらず、一挙に商業炉で大実験計画を行う危険性等々が、問題として追及された。さらに、これら安全性問題を地元紙も大きく何度も取り上げた。自民党1年生議員の中からすら安全性を問題にする声があがった。
 だからこそ知事は、全員協議会の場で安全性の問題にふれざるを得なかった。その結果、皮肉にも、安全性について何も行わなかったことが明確に浮かび上がった。安全性の問題を集中して追及したからこそ結局、「カネで売り渡した」という、本当の姿が誰の目にも明らかになった。知事の仮面ははがされたのである。

決め手はカネ−−「核燃料税アップと小浜線電化費用を負担します」(関電)

 受け入れ表明に至る過程は、県が県民の命と安全をカネで売り渡したことを、国・関電がカネの力でねじ伏せたことを如実に示している。何も行わなかった安全確認とは裏腹に、カネを巡っては議員や知事は積極的に飛び回った。この流れは5月24日から始まった。この日エネ庁は、核燃料税引き上げについて「努力する」と県と議会に表明した。まってましたとばかりに、自民党福井県連が前に出てこの流れを加速させた。
 6月3日自民党県連は、関電との懇談会を開いた。その場で関電は、核燃料税アップと小浜線電化費用を一部負担することを表明。同時に関電は、MOX燃料輸送のスケジュールを初めて公表。まさにプルサーマルをカネで買ったと言わんばかりである。翌4日には、エネ庁長官に地域振興策を要請。これに続いて7日、知事もわざわざ上京した。通産大臣と科技庁長官から核燃料税アップの「約束」を取り付けた。14日の全員協議会で、自民、県民連合(民主・社民)、公明の各会派は、受け入れ判断を知事に一任し、議会の責任を放棄した。これが17日の受け入れ表明に至る道である。まさに決め手はカネだった。

核燃料税の負担増を取り返すためには−−定検を30日短縮

 カネで決着をつけたプルサーマルは、プルサーマル本来の危険に加えて、関電がそのカネを取り返そうとするために新たな危険が増加する。関電は、「負担増は他の原子力稼働率を上げることでカバー」といち早く述べている。そのために定検の短縮と計画外停止(事故や故障での停止)を最小限にするという。
 プルサーマルによる負担増はいったいいくらになるのか。MOX燃料の加工・製造費?輸送費?MOX燃料装荷のための「中間停止」で20億円。小浜線電化費用の負担分で数十億円。再来年から、福井県の要求どおり核燃料税の税率を7%から12%にアップすれば、毎年現行の約40億が70億に。この増加分だけでも年間30億円。定検が1日のびれば1億円といわれているので、核燃料税の増加分を取り戻すだけでも、なんと30日の定検短縮に駆り立てられる。
 定検の短縮と、計画外停止を行わないという強行運転は既に始まっている。原発の設備利用率がそのことを端的に表している。
 関電の原発設備利用率は蒸気発生器取り替えが終了した97年に一挙に上昇し、昨年も87.2%と高い水準にある。これを可能にしているのが定検の短縮である。98年のPWRの平均定検日数は64日。97年の95日から31日も短縮されている。計画外停止など今でもほとんど行っていない。美浜1号では、6月17日から約1週間、出力を45%に下げたままで、復水器に付着した約90キロの貝殻等の除去と47本の復水器細管施栓を行っている。くらげが大量にやってこようが、決して運転を停止しようとはしない。老朽炉に容赦のないムチが襲いかかっている。
 このような姿勢が、最近の事故の頻発となって顕在化している。
 この上さらにプルサーマルの負担増で、定検の短縮等の危険な運転が一層加速されることになる。
 そうまでしてなぜ、これら危険な運転を強行しなければならないのか。その背景には、安易に電気料金の値上げができないという状況の中で、電力にとって原発の経済性追求が死活問題となり始めている事情がある。
 さらに、国・電力には、核のゴミ捨て場を確保しなければ原発の運転そのものが継続できないという、背に腹は代えられないせっぱ詰まった状況がある。六ヶ所に使用済み燃料を運ぶためにも、「中間貯蔵施設」を建てるためにも、「ゴミ捨て場です」ではだれも受け入れてくれない。今では、ゴミではないと言いくるめるためにはプルサーマル推進しか残っていない。経済的な負担が大きくとも、プルサーマルにしがみつくしかない。その負担増を定検短縮等でとり戻さなければならなくなっている。

形だけの「安全」と「地域振興策」のオンパレード

 福井県のプルサーマル受け入れと軌を一にして、国・電力会社は総反撃をかけている。キーワードは、形だけの安全審査と、「地域振興策」と言う名のカネである。
 6月17日、福井県の受け入れ表明のまさにその日、通産省・科技庁はデータ改ざんされたあの輸送容器全てに「安全」のお墨付きを与えた。青森県に対し、中断している使用済み燃料の搬入再開をせっついている。
 6月28日安全委員会は、福島T−3プルサーマルは「安全」との答申を出した。予定どおり7月にMOX輸送を開始する段取りを整えた。さらに、高浜(PWR)と福島(BWR)の審査が終了したことで、「今後の審査は加速される」とまで述べている。同日、安全委員会専門部会は、大間でのフルMOXについても、現在の審査指針で十分との報告書を提出した。もうなんでもありである。
 6月9日には、「中間貯蔵施設」のための原子炉等規制法改訂が国会を通過。関電・東電は血眼になって「中間貯蔵」という核のゴミ捨て場を物色している。ここでは、交付金という国の予算がエサとなっている。調査受入だけで年間1億4000万!建設受け入れで9億8000万!
 敦賀市議会は25日、敦賀3・4号炉増設を決議した。市長は今月にも日本原電の増設願いを受け入れようとしている。最終判断の決め手はここでも「地域振興策」である。

高まる事故の危険に、鋭い監視の目を光らせよう!

 高浜プルサーマルを巡る動きの中から浮かび上がってきたものは何か。
 国の安全審査は、危険なプルサーマルを「安全」と言いくるめるために、「3次元解析」等の高度な技術を駆使して安全性の切り縮めに総力を傾けた。さらに地元をねじ伏せるためにカネをばらまく。地元首長達は、景気後退で地方財政がひっ迫する中、「地域振興策」を決め手としていく。電力はばらまくカネを取り戻すために、定検の短縮等で一層危険な運転を強行する。それも老朽炉にむち打ちながら。このようにして、かつて経験したことのないような事故の危険性が高まっている。新しい危険の始まりである。
 この危険をくい止めるために、なにが必要なのか。最大の鍵は、安全性について鋭い監視の目を光らせ、不審な敵に食らいつき、反撃を加える姿勢を堅持することではないだろうか。プルサーマルに即して言えば、世界にも類を見ない高燃焼度プルサーマルの危険性。それを安全と言いくるめるための安全審査のデタラメさ。総力を上げた安全性の切り縮め。白抜き資料での安全確保等々。これら具体的な危険性に対し、それを見抜く鋭い目を鍛え、監視し、反撃を加えることである。そしてそれらを広範に暴露・宣伝できる力をまずはつけていくことではないだろうか。「説得と納得」で政策転換などと、現実の危険から目をそらすべきではない。一つ一つの攻撃に対して、具体的な批判と運動の力を形成していく以外に道はない。
 知事の受入表明は、地元の人々と全国の人々の中に深い憤りを生み出している。その怒りを基礎に連帯の絆が強まっている。「知事はしっぺ返しを食らうであろう」と。
 現在の諸条件の下では、地元の運動にリアリティが存在する。地元の運動の発展を第一に重視し、その運動との連帯を強めていこう。それを通じて全国的な連帯した運動の力を形成していこう。
 福井県は高浜町で安全判断についての説明会を行うという。高浜町だけではなく、福井市等でも県民への広範な説明会を行うべきである。あらゆる場を通して、高浜プルサーマルの危険性を暴露・追及していこう。
 国・関電・東電は、7月下旬からMOX燃料の輸送を開始しようとしている。これに対し、韓国の市民運動は抗議行動を開始した。国際的な運動と連帯し、MOX燃料輸送に反対しよう。関電のプルサーマル実施を阻止しよう。




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