| 国内及び国際情勢 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 傷つけられた在日難民 ―入国管理センターに収容された難民の健康状態およびセンター内の医療状況― |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 日本において難民申請しているにもかかわらず、入国管理(入管)センターに長期間の収容を余儀なくされる難民がかなりの数にのぼっています。一昨年(2001年)10月に‘不法入国’の疑いでアフガニスタン難民十数名が入管センターに収容されましたが、それをきっかけにわたしは牛久市の東日本入管センターに出向き、収容中の難民に面会し聞き取り調査を行ない、それは現在も続いています。そうした聞き取りから得られた事実から、彼/彼女らが収容されることによって生じる精神的・身体的症状および入管内部の医療の実態が浮きぼりにされました。今回はそれについて述べます。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| <収容された難民の心身状態> 対象とした難民は37名で、アフガニスタン人22名、ビルマ人12名、トルコ人(クルド)3名です。性別では男性35名、女性2名で、対象者の年齢は18歳から53歳で平均31.9歳です。入管センターでの収容期間は1ヶ月から18ヶ月間で平均7.4ヶ月間です(表1)。 表1:性・年齢・収容期間・国籍別難民申請者
37名のうち32名に自覚症状があらわれており、不眠を筆頭に体重減少・食欲不振・頭痛・体の痛み・腹痛・体のふるえなど多彩な症状がみられていました(図1) そのほとんどは2週間以内に症状が出てきていましたが、それは不当な収容に対する困惑・怒り・不信だけでなく、将来に対する不安なども感じ、精神状態はきわめて不安定となった結果生じてきているものです。入管センターに強制的に収容されること自体が難民にかなりの衝撃を与えており、しかもセンター内ではきわめて非人間的な扱いをうけており、言葉の暴力による恐怖心をもうえつけられるため、多くの人が次のように語っていました。 「わたしは難民として申請しただけなのに、どうして犯罪者のように扱われなければならないのでしょうか」 21名に母国の政府による迫害体験があり、そのうち14名に今回の収容によって過去の迫害体験がよみがえっていました(図2a,b)。そうした迫害体験をもつことで強制送還の恐怖はよりいっそう強くなり、精神状態はさらに悪化します。その結果、うつ状態やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神疾患をきたすようになり、さらには自殺企図および抗議のハンガーストライキなどの行動にまで発展していたのです。 入管センターでの面会はガラス越しで、しかも時間は制限され、一般の診察は不可能だったため、仮放免された難民に対して港町診療所で診察とスクリーニング検査を実施し、必要に応じて精神科医などの専門家による診察も行われました。そうした外部の医師による診断では、難民申請者のほとんどにうつ状態がみられ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が9名、ATSD(急性心的外傷性ストレス障害)が4名と、精神疾患が多くを占めていました。また、健康状態の客観的指標としての体重および血圧についてみると、体重の著しい減少および血圧上昇がみられており、これも入管センター内で過度の緊張を強いられ、ストレスが蓄積した結果による可能性が高いと考えます。さらに長期間の収容が続けば、虚血性心疾患や潰瘍などの器質的な疾患を招く恐れもでてくることでしょう(図3)。 <入管内の医療状況> それでは、難民に対して入管内の医療が十分かつ適切に施されているのか、きわめて疑わしいです(図4)。 第一に入管内の医師の質にかなりの問題があります。症状を訴えても触診や聴診をせず病気の説明をしていない、とほとんどの難民は訴えていました。また、どのような疾患でどのような薬を飲まされているのかも分からず、病気や薬の副作用に対しての恐怖感を抱きながら、多くは不本意に従うしかなかったのです。難民が入管の医師に対し不信感を抱いたのは当然なのでしょう。 第二に診察時にそれぞれの言語で対応がなされておらず、難民との会話が成立していません。難民の持っている文化を理解することは治療上きわめて重要で、母国語で彼/彼女らの訴えを理解してくれる医師の存在だけでも、心理面に良い影響を与えており、その必要性を認識しなければなりません。 第三に医師は薬をみせながら難民自身に薬を選ばせていたこと、しかも医療従事者でない入管職員が薬を投与していたことも問題です。胃炎あるいは十二指腸潰瘍疑いの例にもかかわらず、頭痛や発熱時には、入管職員の与えていた解熱鎮痛薬が必要以上に投与されることもあり、薬の副作用で症状を悪化させていた例もありました。 第四にスクリーニング検査が実施されておらず、健康状態が十分に把握されていません。開発途上国出身の外国人には結核が多く発見されており、収容中の難民に結核が発見され他の収容者へ広がっていた、という海外の報告があるにもかかわらずです。 さらに緊急時の対応についてみると、自殺企図5名と意識障害1名は翌日か翌々日に、意識障害1名は3日後に、ハンガーストライキ1名は1週間後に、絶食1名は2週間後に外部の病院へ連れて行かれ診察を受けていました。しかし、ハンガーストライキ・吐血・絶食・胸痛の各1名は外部の病院での診察はなく、入管内部での対症療法のみでした(表2)。 表2:緊急時の対応
これは緊急時の対応がまったく不備であることがうかがわれます。「回復の困難な損害」をこうむったときに難民は仮放免されることになっていますが、その判断は入管の責任者にゆだねられており、仮放免されることはまったくありません。「回復の困難な損害」になってしまったからでは手遅れになってしまうことがまったく認識されておらず、上記の医療状況では、病状がさらに悪化してしまう可能性はきわめて高いでしょう。こうした不十分な対応しかできないのは、医療行為が入管組織から独立しておらず、治療よりも収容を優先しているからです。 <今後の対応> 患者(難民)と医療従事者との信頼関係があり、そこではじめて治療が可能となります。しかし、入管内の医療環境はほとんど整っておらず、病気を患った難民は入管内の医療従事者に対してかなりの不信感を持ち、しかも収容自体が病気の原因となっているため、いくら投薬で対症療法を施したところで、おのずと治療の限界があります。迫害から逃れてきた難民に対してさらに追い打ちをかけるような状況、つまり長期にわたる強制収容や医療の保証がまったくない状況を放置していいはずはありません。それでは、どうしたらいいのでしょうか? 現在わたしは直接入管に働きかけることをしています。それは収容中の難民に面会するたびに、仮放免させるべく入管所長と入管医師宛てに<意見書/要望書>を書いています。それがどの程度効果があるのかわかりませんが、絶えずこのように監視していくことはきわめて重要だと考えています。また、難民を支援する団体と協力しながら日本政府や国会議員に働きかけ、行きすぎた入管法とそのシステムを変えることも必要でしょう。さらには、こうした実態を国連やアムネスティーなどの国際社会に訴え、同様の問題に取り組んでいる各国の人権団体と連携していくことも大切ではないかと思います。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| | Site Top | Japanese Top | Sitemap | | |||
| Solidarity network with Migrants Japan | |||