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出入国管理及び難民認定法改定案に関する意見書
去る2003年3月4日、政府は、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法とする)の改定案を閣議決定しました。ここ数年にわたり2年ごとに法改定作業をおこなっており、その度に、私たちは、日本の出入国管理政策の抜本的な改革を求めてきております。しかしながら、政府は、私たちの主張を聞くことなく、規制の強化に踏み切っています。規制強化の一方で、不透明な入管行政、とりわけ在留資格制度、入管の諸制度から生じている人権侵害状態、とりわけ全件収容主義などは一向に改善されません。 今般おこなわれます法改定において、難民の受け入れおよび精神障害者の上陸拒否事由の緩和に関しては、一定程度の評価ができる部分もありますが、難民の受け入れに関する改定についても、アムネスティー・インターナショナル日本支部などの諸団体が指摘しているとおり、十分なものではありません。また、精神障害者の上陸拒否事由の緩和についても完全な差別撤廃とはいえず、さらには上陸拒否事由の中には、いまだに差別的な規定が多々残されています。 私たちは、とりわけ、在留資格の取消し制度について重大な問題があると考えており、下記の理由から今般の入管法の改定に反対すると同時に、入管法の抜本的な改正を求めます。 1. 在留資格の取消し制度の新設について (1) 不正な手段等で上陸許可を得た者の在留資格の取消しについて (理由1)「悪質性が高い場合」と「高くない場合」の区別が不明確であること。 改定案では、悪質性が高い場合は退去強制手続きとし、そうでない場合は30日間の出国猶予期間を与え、自主的な帰国を促すとしていますが、行政処分としては、大きな違いがあるにもかかわらず、どちらの処分となるのか基準がいっさい示されてなく、当該人に誤った不利益処分をしてしまう恐れがあります。 (理由2)研修生制度の被害者に不利益処分を課すおそれがある。 法務省作成資料によると、研修生の受入機関が虚偽の研修計画書を提出していた場合に研修生本人の在留資格を取消すとしています。本来、罰するべきは、研修生本人でなく受入機関であり、研修生の希望通りの研修を実施する責任が政府にはあります。人権侵害の被害者である研修生に対し、不利益処分を課すことは到底認められません。 (理由3)ドメスティック・バイオレンスなどの被害を受けた外国籍女性に不利益処分を課すおそれがある。 日本人男性と結婚した外国籍女性が来日直後にドメスティック・バイオレンスなどの被害を受けることがしばしばあります。加害者は大抵の場合、在留資格の更新に協力しない旨などを入管に通報しており、加害者男性が騙されて結婚させられたなどと入管に通報した場合、虚偽の入国許可を得たとして被害者である外国籍女性に対して、不利益処分が課せられてしまうおそれがあります。 (理由4)人身売買の被害者である外国籍女性に対し、不利益処分を課すおそれがある。 上述の研修生の場合と同様に人身売買の被害者についても多くの場合が、ブローカーなどが虚偽の申請を入管に対しおこなっています。加害者であるブローカーでなく、被害者である外国籍女性に対し、不利益処分が課せられてしまうおそれがあります。 (理由5)中国帰国者等の家族の結合権が侵害されるおそれがある。 中国帰国者等の中には、歴史的な背景から、帰国者の実子ではない養子に介護を受けている方もいますが、血縁関係のない養子の入国を認めないために、やむを得ず虚偽の書類などを用いて、上陸許可を得るしかない場合もしばしばあります。また、中には、上陸時には、血縁関係にないことを明らかにしていたにもかかわらず、その後の在留資格更新などが認められず、退去強制命令が出されている方もいます。 政策の不作為により苦しんでいる中国帰国者の家族の再度の家族を引き離すおそれがあります。 (理由6)婚姻関係にある者の家族の結合権が侵害されるおそれがある。 現行の入管法では、過去に退去強制処分を受けた者と日本人が婚姻し、外国籍の配偶者が来日し、日本で婚姻生活を送ることを希望する場合、刑事処分がなかった場合でも、送還後、原則5年日本への再入国が認められません。また、入管法違反だけでも刑事処分があり、懲役1年以上の有罪判決を受けた場合、原則、再入国は永遠にできないこととなっています。実際には再入国が認められている場合もありますが、そうしたことができる旨の案内やパンフレットはなく、やむをえず偽造のパスポートや書類を用いて入国をせざるを得なくなる場合もあります。そうした場合に在留資格が取消され、再度、夫婦が離れ離れになり、家族の結合権が侵害されてしまいます。 (2) 在留の継続必要性のない外国人の在留資格の取消しについて (理由1)手続きが不透明である。 正当な理由なく3ヶ月以上在留資格上の活動を行っていない者の在留資格を取消すとしていますが、なにが正当な理由に当たるのか、明示されておらず、恣意的な判断がなされてしまうおそれがあります。 (理由2)不当解雇された労働者の職場復帰などの基本的権利を奪い、不利益処を課すおそれがある。 不当解雇をされた労働者が争議中である場合や、裁判を提起している場合などでも、在留資格を取消すことが可能となり、労働法上認められている正当な労働者としての権利救済を求めることを萎縮させ、労働者としての権利を奪うおそれがあります。 (理由3)職業選択の自由をおびやかすおそれがある。 職場の環境があわないなどの理由から自己都合により、退職した者について、十分な求職期間が与えられず、事実上、職業選択の自由の制限につながります。 (理由4)社会保障の諸制度との均衡が保たれない。 例えば、雇用保険の失業給付を受給中の者でも在留資格が取消され、受給権を享受できなくなるおそれがあります。 2. 難民認定制度の改定に関して (1) 今般の改定に盛り込まれなかった事項について 今般の改定において、盛り込まれなかった事項として、〈1〉難民認定にかかる第三者機関の設置、〈2〉難民申請者および難民認定者の生活支援、〈3〉難民認定法の入管法からの分離などがあげられます。今回の改定で全てが終わったとするのでなく、引き続き検討をつづけ、立法措置をとる必要があります。 (2) 仮滞在許可の新設について 仮滞在許可の新設自体は、評価できますが、法案に示されている「6ヶ月以内の申請」、「迫害を受けるおそれのあった領域から直接本邦に入国したこと」などの許可条件の厳格な運用がなされると、許可を受けられる者が極端に制限されることになり、現行の制度上の問題が改善されないおそれがあります。 (3) 仮滞在許可が不許可となった者の処遇について 仮滞在許可が不許可となった者については、これまで通り、収容施設に収容され、難民認定の手続きが行われることが予想されます。難民申請者を収容すること自体が問題であり、原則として、収容のない形で手続きを進められるよう、立法措置をとるべきです。 具体的には、今般の改定で、仮滞在許可が不許可になった者についても、難民認定の手続きが終局をむかえるまで退去強制手続きを停止することとなるため、原則として、仮滞在許可をまず認めた上で、難民認定手続きを進めていくべきです。 (4) 難民として認定された者に対する在留資格の付与について 法案では、難民と認定された者のうち、在留資格非取得外国人については、一定の条件の下、在留資格を付与するとしていますが、これでは難民と認定されたにもかかわらず在留資格を得ることができず退去強制させられてしまうおそれがあります。難民として認定した者に退去教処分を課すことは難民条約3条に定められている送還禁止(ノン・ルフールマン)原則に明らかに違反します。難民認定者に関しては、認定と同時に在留資格を認めるようにするべきです。 以上 |
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