| 国内及び国際情勢 | ||||
「今後の外国人の受入れについて」(中間まとめ)に対する意見書
移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、外国籍住民を支援する人権NGO、労組、キリスト教団体、当事者組織、個人で形成する全国ネットワークです。日々、外国籍住民の人権擁護・支援活動に取り組むNGOの立場から、「今後の外国人の受入れについて」(以下、本案とする)に対して、意見書を送付する。この意見書とあわせて、本年6月末に完成した「外国籍住民との共生にむけて−NGOからの政策提言」を送付するので、そちらもあわせて、ご参照いただけると幸いである。 1.前文について 本案において、研修・技能実習制度がいわゆる単純労働力の代替として受け入れられてきた実態、「血のつながり」という血統主義的な受け入れ方が諸問題を引き起こした原因であること認めたこと、そして、本音と建て前の乖離からくる制度のひずみが、人権侵害や共生社会のさまたげとなったことを認めたことを高く評価したい。 しかしながら、本案は、本音、すなわち、生産年齢人口の減少をカバーするための外国人労働者受入れという、受入れ側である日本の都合に偏ったものであるといわざるを得ない。そこで、前文においては、まずは、外国籍住民を社会の真の構成メンバーとして明確に位置づけ、外国籍住民に関する総合的な施策を構築することをかかげることを提案する。なぜなら、外国籍住民のもつ多様性に寛容でその人権が保障される真の共生社会を築くことは、日本国籍・外国籍住民の双方にとっても暮らしやすい社会となるからである。そのことが、地域社会・生産現場などにおいての外国籍住民のより積極的なかかわりを担保・促進することつながる。さらには、このような外国籍住民の存在は、日本社会の活性化に対しても大きな貢献をするものである。 2.研修・技能実習制度の改変と中間技能労働者の受入れについて 研修・技能実習制度は、「建前」とはいえども、送り出し国への国際貢献・人材育成を名目としてつくられた制度である。この建前と実態の乖離がさまざまな人権侵害を引き起こしていることを、これまで移住連でも指摘してきたが、本案でもそれを基本認識としている点を高く評価する。 しかし、本案では、このゆがんだ制度を精算・仕切り直しをせずに、日本国内産業の発展のために必須な分野への「労働力受入れ」の導入制度として変容させようとしている。このような改編では、現行制度に起因する問題点を温存したままとなり、現在の超低賃金労働力として搾取されている劣悪な労働条件と人権侵害は改善される見込みはない。 そこで、研修・技能実習制度は、以下のようにすべきである。 (1)技能実習制度は、完全に廃止とする。 (2)研修制度については、「開発途上国への技術移転」という当初の目的に即した真の「研修」が可能となる制度として立て直す。 (3)労働者を必要としている産業については、職業選択の自由など労働関係法令で定められている諸権利が完全適用される「労働者」としての受入れが可能となる在留資格「労働」を新設する。 ここでは、中間技能労働者という新たな枠組みが設けられているが、これは、極めて政治的な分類である。現在、専門的・技術的といわれている分野においても、何が専門的で何が単純かは必ずしも明確とはいえない。前述の通り、労働者が必要とされている産業で権利が保障された労働者の受入れができるように制度設計すべきである。 3.日系人受入れ政策の見直しについて 日系人労働者に対して、これまで、日本語を学ぶ機会が公的に保障されてきたわけではない。にもかかわらず、現在日本で暮らしている日系人に対して、在留資格の更新時に日本語能力を求めることは、大きな疑問がある。これは、日系人に対する「追い出し施策」であると言わざるをえない。日本語能力は、外国籍住民自らのエンパワーのために必要なスキルであるという観点から、日本語の学習機会の充実にむけた公的支援を行うことは重要であると考える。しかし、日本語能力を在留資格の更新条件とすることは、その人がこれまで日本で築き上げてきた生活基盤を破壊することにもなりえる。また、1990年の入管法改定以降、日系人を積極的に受入れ、自動車産業などを支えてきた歴史的事実をからみても、適切な施策とは言えない。 一方的に日系人労働者に対して負担を課すのではなく、日本社会が多言語・多文化にむけて変革していくための方針がまず提案されなければならない。 4.在留管理制度および在留カードの発行について 基本的に外国人の在留に関する登録情報は、日本人の住民基本台帳法と同様にすべきである。将来的には、特別永住者のみならず、全外国籍住民の情報は、住民基本台帳法に一本化すべきである。 在留カードの発行は、それを行わないと住民サービスを向上されられないかどうかの検討結果が全く示されていないという点で特に問題である。また、在留カードの記載事項には、現行の外国人登録以上に詳細な項目を追加することが懸念される。さらには、雇用主や教育機関に受け入れた外国人の身分確認と必要な報告を求めることは、雇用主や教育機関を入管当局の出先機関化するものである。 これらは、雇用・教育という信頼関係に基づく長期的な関係を破壊する危険性がある。 5.義務教育と子どもの在留について 外国人の子どもを義務教育の対象とすることは、移住連は大歓迎である。またそのためには、日本の学校教育の中に、「多文化共生教育」のプログラムが必要になってくるはずである。また、日本語を母語としない子どもたちへの「日本語教育」と「母語教育」が保障されなければならない。本案の中に、この点が欠けていることを指摘しておきたい。 非正規滞在者の子どもたちの問題に関して、現状でも、文科省は在留資格の有無にかかわらず、外国籍の子どもたちの学校での受入れを指導している点は、実態に即した対応として歓迎するものである。現在18歳以下の未成年者のいる非正規滞在家族の人員の具体的なデーターは存在しないが、移住連では未成年者は数千人、家族を含めれば1万人程度は在留しているのではないかと推定している。当初在留資格をもっていても、様々な事情から在留の根拠を失い、非正規滞在になってしまう場合も少なくない。 現状でも子どもたちの在留期間が10年を超えていて、親の申し出があれば、現在も在留特別許可という形で子どもと家族の在留が合法化され、救済されている点は、こうした子どもたちの人権に配慮してのことと思われ、移住連は歓迎している。 しかし、親が「在留特別許可」を求めるすべを知らなかったり、在留期間が短いなど条件が満たされなければ摘発・退去強制の対象となり、現実に学齢期の途中で強制送還されている事件が多発している。違った言語環境の社会を強制的に行ったり来たりさせられることは子どもたちの学習言語の習得に悪影響を与えることは明かであるし、「不法」の状態におかれた子どもたちの心にも大きな悪影響があることを指摘しておきたい。日本社会で育っているこうした子どもたちに光を当て、発達と学びを保障するためには、子どもを含む家族に対して早急な合法化プログラムの実施を提案したい。 在留資格を持たない非正規滞在の子どもたちにあっては、学校教育に結びついていない者も存在している。これは親たちが在留資格がないために、学校に通うことはできないと思いこんでいる場合もあるし、そうした子どもの学校での就学を拒否している自治体があるのも実態である。 最後に、例えばペルー人学校のような外国人学校に対しての支援策をたて、多様な文化をもつ子どもたちに豊かなアイデンティティがはぐくまれるような施策を取るべきである。また、将来的には、外国人学校に対して、日本の私立学校(学校教育法第1条)に準じた助成策がとられるべきである。 6.非人道的な摘発・退去強制と非正規滞在者への合法化について この数ヶ月、なりふりかまわない職務質問・摘発・退去強制が行われている。例えば、医療機関(健康診断会場を含む)、宗教施設、大使館周辺など、いずれも健康や信仰、相談・手続など、生きる上での最低限アクセスが必要な場所でも摘発が行われている。このような場所や生活状況を無視した職務質問・摘発・退去強制は、ただちにやめるべきである。さらには、仮放免や在留特別許可を求めているなど法務省管轄の手続中に、主に警察などによる職務質問や摘発も相次いでいる。このような行為は、入管業務にとっても妨げになると思われる。したがって、入管の手続内容について、警察など他機関への周知徹底をはかるべきである。 約22万人とも言われる非正規滞在外国人を強制的に排除しようとする施策は、人権侵害を引き起こすだけでなく、非正規滞在外国人に対する実像とはかけはなれたネガティブなイメージをつくりだし、共生社会に向かっている日本社会全体へもマイナス影響しか与えない。その解決にあたっては、前述のように子どもの人権を配慮して救済措置がすでに行われているように、一定の要件において、合法化するという救済措置をとるべきである。 以上 |
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