| 国内及び国際情勢 | |||
外国人雇用状況届出の義務化に反対する −雇用対策法改定案に係る意見書− 2007年3月23日 移住労働者と連帯する全国ネットワーク 共同代表 岩本光弘 大津恵子 丹羽雅雄 もりきかずみ 村山敏 由井滋 渡辺英俊 東京都文京区小石川2-17-41 富坂キリスト教センター2号館203号室 пF03-5802-6033 FAX:03-5802-6034 1 基本的な見解 本法案は外国人の雇用管理の改善および就業の促進を図るために諸案を規定することを目的としているが、その改定内容は、本来、労使契約の範囲においてやり取りされる労働者の個人情報を、治安管理のための情報として、雇用行政とは無縁の入国管理当局に流出させる内容となっている。加えて、事業主に対して罰則を担保することによって外国人管理システムの一翼を担わせることは、労使関係を完全に逸脱したものであり、労働者の権利保護及び健全な労使関係の確立という、労働行政本来の目的にも反するものである。ゆえに当団体は、外国人のみならず、労働者全体の権利擁護の立場から、本法案に反対する。 (1)外国人雇用状況届出の義務化や法務大臣への情報提供など、外国人のプライバシーを侵害し、外国人に対する差別や偏見を助長するものである。 (2)外国人雇用状況届出の義務化は、現行でも劣悪な状況で働かされている就労資格のない外国人労働者の労働条件がさらに劣悪化し、権利侵害に対し声をあげにくくする。 (3)多くの外国人労働者が日本人と比べて低賃金で社会保険や雇用保険などに未加入のまま、請負会社ないし派遣会社などのブローカーを通じて、権利が保障されないまま製造業等に従事させられている。外国人の雇用管理については、労働者としての権利保障および偽装請負または劣悪な状態での派遣の解消を徹底することが先決である。国は高度技術者等の保護を行う前に定住外国人の労働者の権利保護を促進させるべきである。 (4)労働者としての権利保護を保証することなく研修生・技能実習生、日系人、非正規労働者等の形で外国人労働者をサイドドアないしバックドアから受け入れている状態の現実的解消が先決である。 2 個別的事項に関する見解 (1)外国人雇用状況報告の義務化に反対する 本法案では、外国人雇用状況の届出制度を新たに作るとしている。これは、特別永住者や外交・公用で滞在する外国人や国や公共団体等に雇われる外国人を除き、すべての事業主等に対し、すべての外国人の雇用状況を厚生労働大臣(公共職業安定所長)に報告することを罰則をもって義務づける制度である。 永住者や定住者はそもそも就労を目的として日本に在留しているわけではなく、日本社会とのつながりや生活基盤を理由として日本で生活をしているのであって、そうした永住者や定住者も含め、届出を義務化する積極的な理由や目的がないと考える。 労働者としての権利保護や雇用状況の改善の観点からも効果があるとは考えられない。むしろ、届出義務の負担が、外国人労働者の雇用機会を縮小させる可能性もある。あるいは、届出義務を怠った事業主により、より劣悪な労働環境におかれる危険性がある。また、事業主が就労資格のない外国人労働者を雇用していることを隠し、権利の侵害に対してより声を上げにくい構造を作りだすことになる。 さらに、このように外国人に対してのみ新たな義務を課すことは外国人に対する差別や偏見を助長するものである。 不必要な個人情報を行政が積極的に収集することは決して許されるものではない。 (2)広範な外国人のデータベースが構築される 本法案では、法務大臣から外国人の在留に関する事項の確認を求められた場合は、届出にかかる情報を厚生労働大臣は提供できるとされている。つまり外国人登録や出入国管理・在留資格等の法務省の各種データベースと厚生労働省のデータベースのリンクが張られ、日本において広範な外国人のデータベースが構築されることになる。このような違う目的での行政情報を相互にリンクさせることは個人情報の保護の観点からも、また、個人の権利がより制限される事態が生じる恐れがあり、決して許されるものではない。 (3)国よりも事業主の責務が大きくなっている 本法案において、外国人の雇用管理の改善および離職後の再就職の援助等、就業の促進について、国の施策および事業主の責務等が規定されているが、国の施策と事業主の責務について大きな差があることが問題である。 (1)事業主については「責務」となっているのに対し、国については「施策」となっており、 事業主に対し、より重い役割を担わせている。 (2)事業主の責務としては、国の施策を講じる外国人の範囲としては、「高度の専門的な 知識又は技術を有する外国人」および「労働を目的とする在留する外国人」となっている。 その一方で事業主の責務としては、「雇用する外国人」となっている。 (3)事業主に対しては、日本の雇用慣行に関する知識や就職活動に関する情報が不足 している現状に鑑み、能力を発揮できるよう適切な措置を実施するよう求めている。こうし たことは事業主に求める前に国の責務として行うべきであり、その上で事業主にも同様 の措置を求めるべきである。 (4)そもそも日本で就労する外国人のほとんどは、いわゆる高度技術者や労働目的の 外国人ではなく、日本で生活をする定住外国人である。そうしたことを承知しているため、 国と事業主の責務に差をつけていることが明らかである。国は、定住外国人の労働者の 権利保護の促進に努めるべきである。 (4)外国人労働者受入のビジョンを示すべきである 本法案では、厚生労働大臣が労働力の需給調整等を図るために法務大臣に連絡又は協力を求めることができる旨、規定されているが、そもそも多くの外国人は就労を目的として来日しているわけでなく、日系人や日本社会とのつながりを理由として日本で生活をしている定住外国人であり、そこに需給調整という概念を持ち込むことは、本来の在留目的に過度の制限を加えることにつながる。また、研修・技能実習や非正規の形での受入の解決なくして需給調整ができるものではない。 日本がどのような形で外国人労働者を受け入れるのか、そのビジョンをまず示すべきである。これまで日本における外国人労働者の受入にかかる基本的な方針は、雇用対策基本計画において定められてきたが、同計画の廃止に伴い、外国人労働者の受入にかかる基本的な方針を明示する必要がある。 (参考) 「専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れをより積極的に推進し、いわゆる単純労働 者の受入れについては、日本の経済社会に多大な影響を及ぼすこと等が予想されること等 から十分慎重に対応することが不可欠である。」 (第9次雇用対策基本計画 平成11年8月閣議決定) (5)「不法就労防止対策」は合法化による現実的解決をすべきである 上述のとおり、「不法就労防止対策」を強化することにより資格外就労外国人労働者の労働条件はさらに劣悪化する。そもそも、実態に合わせた外国人労働者の受入をこれまで行わず、研修・技能実習、日系人、非正規労働者という形で受け入れてきたからこそ、現在の問題が生じているわけである。まず、現在劣悪な状況で働かされている非正規労働者を合法化(アムネスティー)し、その上で適切な外国人労働者の受入体制をとるべきである。 (6)外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針について 法的根拠をもつ指針(大臣告示)を策定するとしているが、その内容については、まだ定まっていない。本法案の審議にあたっては、この指針の中身があわせて議論されるべきである。 (7)国籍による募集及び採用差別の禁止を規定すべきである 本法案において、募集及び採用時の年齢差別の回避について規定しているが、あわせて国籍による差別を規定するべきである。 (8)外国人女性に配慮した母子家庭の母及び寡婦の雇用促進を検討すべきである 母子家庭の母及び寡婦の雇用促進については、より困難な状況にある外国人女性の配 慮について、具体的に検討し、規定するべきである。 以上 |
|||
| | Site Top | Japanese Top | Sitemap | | |||
| Solidarity network with Migrants Japan | |||