| 2005年8-9月号 たぶんかフリースクール開設 王慧槿さん(多文化共生センター・東京21代表)にインタビュー 聞き手:谷 幸(移住連インターン) |
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多文化共生センター・東京21(以下、センターと略)が、「フリースクール」を始めたということで、代表の王慧槿(わん ふいぢん)さんにお話を伺った。場所は、西日暮里にあるセンターの事務所。フリースクール開設のために、蔵前から移転してきた。事務所と言っても、普通の住宅を使用しているせいか、非常にアットホームな感じのする場所である。生徒にとって、単に勉強する場となるだけではなく、「居場所」となることを目指すフリースクールを開設するにはピッタリな場だ。 ―フリースクールは、いつから始められたのですか。 王:午後の部が今年の6月、夜の部が7月からです。 ― なぜフリースクールなのでしょうか。 王:センターでは、これまで、高校進学のための進路ガイダンスや個別の相談、学習支援を行ってきました。また、東京に暮らす外国籍の子どもたちの状況を把握するための調査も行ってきました。これらを通して、現在子どもたちに最も必要なものは、学習言語としての日本語を継続的に学べる場であると感じたのです。たとえば、2004年度東京都の公立中学校に在籍する外国籍生徒数は2,041人に対し、都立高校の在籍数は923人であり、2005年6月に実施した進路ガイダンスのアンケートの回答で、外国籍の生徒の8割が日本での高校進学を希望していることを考えれば、これは明らかに低い数字です。高校進学が困難な原因の一つとして、滞日経験が浅いために、日本語が十分にできないことが考えられます。したがって、実質的に子どもたちは高校を選択できない、さらに言えば、希望する高校にはなかなか進学できない状態に置かれているのです。つまり、来日3年未満で、多くの都立高校が実施している5教科の内容で入試を競うのは無理があるし、高校進学のためには、学習言語としての日本語の獲得が大事だと考えています。そのためには、継続的に学べる場が必要なのです。 ― 授業はどのように行われているのですか。 王:午後と夜のクラスがあり、それぞれ週4回、3時間半と2時間の学習を行っています。生徒は、現在は、午後が1名と夜が3名の合わせて4名で、高校進学を目指す中学生や中学卒業生です。出身国は、中国、フィリピン、滞日期間は、長い子で3年、短い子で3ヵ月です。 ― 生徒の数は少ないけど、彼らが育ってきた背景は多様だということですね。 王:彼らが、第二言語としての日本語を読み書きできるようになることが、スクールの目標です。そのために、訓読みが多く、日本語の表現を学べる小学校低学年のドリルや、読み物としても興味の持てるものを教材として使用したり、思考力がつくことを重視した教え方をしたり、と様々な点で工夫をしています。 ― 子どもたちが日本語を学ぶということは、たとえば日本人が学校で英語を学ぶということとは違うのですか。 王:子どもたちにとって日本語を学ぶことは、ここで生きていくための自己表現の言葉を獲得することを含みます。 ― 王さんは、以前高校で教員をされていたそうですが、子どもたちをサポートするNGO活動を始められたきっかけはどのようなものなのですか。 王:そうですね・・・。一人の教員が多くの生徒を見なければならない高校では、どうしても生徒の状況をテストの点数によって把握することになってしまいます。そのため、子どもたちが進級できることと、自らを表現できることは全く違うということは忘れられがちです。そして、そのような状況では、子どもたち自身もテストの点数をクリアできればよいと思うようになるのです。かといって、少数の生徒のために特別授業を学校で行うことは、今までの平等の基準からでは難しい。だから、学校の外で、個々の子どもたちが本当に必要としているものを提供できるような場が必要だと思ったのです。また、そもそも中学を卒業した子どもは、公立中学での受け入れがなく学ぶ場そのものがないということがあります。 ― 単に勉強するだけではなく、彼らが自らを表現し、この日本で生きていく力を身につけることができるように支援する場が必要だということですね。子どもたちの親に対する働きかけなどはしていますか。 王:今度保護者会を開く予定です。というのも、親にも子どもたちの置かれている状況を認識してもらう必要があるからです。親と子どもでは置かれている状況が非常に違います。親は、日本にいるとしても、ここは、自分が生きていく社会ではないという気持ちが比較的強いのですが、子どもは、ここで人間関係を作り、生活基盤をもち、当たり前に生きていくことになります。親と子どもでは、社会の捉え方が大きく異なるのです。 とは言っても、外国籍の子どもたちは、場合によっては日本国が自分の無条件で居ることのできる場ではないことに、いずれ気づく時が来ます。そして、なぜ自分があるいは自分たちの家族が日本に来たのかを考え、自らが育ったはずの日本社会での“存在”自体が無条件ではないこと、つまり在留資格や在留期限に制限された存在であることに気がついたりして、自らの存在に戸惑いを持ったりもしがちです。親は、日本に来た理由、少なくともその時点での考え、今後の方向性を子どもに一生懸命伝える必要があるのです。また、出身国と日本の状況の相違から、親が受けた教育と子どもが受ける教育が全く違うということも起こります。けれども、親は、自分が受けた教育を念頭に置いて、子どもの教育を考えがちです。そうすると、子どもとの齟齬が起きやすいのです。だから、親は、日本での教育の状況を把握する努力も必要だと思います。 ― 徹底して子どもの立場にたっていることがよく分かります。さて、今後のフリースクールの展開には何が必要だと思いますか。 王:まず成り立っていくことが必要です。そのためには、安定した資金が必要です。現在は、午後の生徒は自分でアルバイトをしてスクールの費用を稼いでいるということもあって、将来的には、奨学金などの制度を作りたいと考えています。難しいのは、スクールを拡大することです。安定した運営には規模の拡大が必要ですが、子どもたちの母語や来日時期や学力がバラバラなので、一度にたくさんの子どもたちを受け入れることも難しいのです。どこまで一緒にやるかは、試行錯誤をしながら考えていくしかないと思います。最終的には、行政と協働して子どもたちの第二言語習得支援をしていければ、と考えています。 ― 最後に、王さんが考える理想の社会、学校のあり方はどのようなものですか。 王:戦後日本は、ずっとオールドカマーがいたものの、通名使用などで外国人は見えない存在として隠蔽され、同質的社会が成り立っていると考えられてきました。だから、現実は、さまざまな形で日本の社会は多様化し始めているのに、お互いの日常的な付き合い方がわからないということがまだ多くあります。現実に頭がついていってないのです。けれども、このような状況は、外国人にとってもいづらいし、日本人にとっても本当に共生できるのか、という不安がずっとつきまとうでしょう。だから、この多様化した社会という現実を前提として認識することが必要だと思います。このような状況は、学校も同じです。分類され、均質化された生徒からなっているという前提のもとでは、子どもたちは、「あるがままの自分」を学校では出しにくいものです。家では、異なる言語を話し、異なる食事をしているということを友達も知らないままだったりする場合もあります。そうではなく、言葉も含めて互いに「あるがままの自分」が認め合える学校や身の回りがあって、日常の中で様々な人と付き合えたらいいのに、と思います。色々なもめごとも起きるでしょうが、ぶつかり合いながらお互いのことを学んでいける場があれば、と思います。 ― 今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。 |
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