| 2005年6月号 新刊著者インタビュー 『人身売買をなくすために』 受入大国日本の課題 人身売買防止や被害者保護で改正法が積み残したものは? 監修/吉田容子(写真)・編/JNATIP |
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吉田容子弁護士ー2004年の4月に政府の連絡会議が設置されてから、政府の動きは大変速かった。シェルターなどNGOの話をきいたり、対外的な調査もはじめ、夏にはもう刑法の改正案が固まって、12月には行動計画でしょ。骨格が半年ぐらいでパッとできちゃった。実務的にはものすごく早く進みました。この本は、とにかく早く多くの人に知ってもらおうということで昨年末に作りました。行動計画の公表前に書き上げたものですから、それ以後の議論は入っていませんが…。 編集部−それだけに法案が積み残した部分が分かりますね。 吉田−在留特別許可を認めるといっても「短期滞在」か「特定活動」を認めるということです。でも、これらの資格では生活保護は適用されないし、働くこともできない。「じゃあ生活費はどうするんですか」と聞いても、答えがない。 医療をどう提供するかという課題も残っています。病気の人やカウンセリングが必要な人がいるのですが、全くお金を持っていない人が多い。保険はないし生活保護もだめとなると、医療については何もできない。死ぬほどの病気だったら病院に行くかもしれませんが、それ以外は行けないことになります。 婦人相談所が本当に人身取引被害者の受け入れができるかという問題もあります。被害の実情や被害者の状況を十分に理解したスタッフや通訳が配置されている訳ではありませんし、政府として財政的・人的に援助することもありません。保護と言っても原則として衣食住の提供以外は婦人相談所はできないのです。 婦人相談所には入れる人はそれでも一部の「幸運な人」だと思いますが、そこでの受け入れにはこの様な問題があり、婦人相談所側も国からいきなり受け入れるように言われて、とまどっているようです。もし被害者に生活保護がつくなら、多少は安心して受け入れられるのかもしれませんが…。 編集部−相談所をいかに出るか出口ができるからですよね。 吉田−出口もそうですし、婦人相談所にいる間のケアに対する財政的裏付けがあるかという問題です。もちろん、必要な人材がいるかという問題もあります。 政府も、婦人相談所で2〜4週間も抱えることができるとは考えていないでしょう。そして、帰国手続きに必要な大使館のある東京に集めざるを得なくなるが、やはり最後は民間シェルターがやることになるのではないのでしょうか。だって人材やノウハウがそこにしかない。 要するに、行動計画は、水際防止でまず入らないようにする、入ったら早く発見する、そして発見したらなるべく早く本国に帰国しもらう、これが基本。準備が整ったら、短期滞在の在留資格を特別在留許可で出して、IOM(国際移住機関)の金で適法に帰国してもらうという制度なんです。それ以外の部分、帰国前の被害者の保護・支援は、婦人相談所における一時保護以外には何にもないのですが、ただ帰るという目的のためだけなら、それなりの制度です。 確かに、帰りたいか帰りたくないかと二者択一で聞かれたら、たいていの被害者は帰りたいのだろうと思います。でも、ただ帰せばいいという問題ではないのです。被害者が逃げ出したら、2〜3日のうちに本国の家族のところに、ブローカーが現れたなんてこともある。帰国しても、もともと住んでいた町には入れずに、別の家族から離れた別のところにいくしかないこともある。被害者が手ぶらで帰って「借金」が残っていれば、また脅されて送り込まれる可能性だってある。さんざん搾取されたのに、損害賠償も請求できないなんて、おかしい。 帰らされちゃう人もいるだろうし、帰る人もいるだろうけれども、きちんとした保護支援をしないで、「本国に帰しから、これでいいでしょう」という訳にはいかないと思うんです。日本社会の需要が被害者を生み出し、現実に被害者を傷つけているのですから。 加害者に対する損害賠償請求も、もしそれに必要な期間日本に残れたとしても、本当に賠償がとれるかはわかりません。でも一つのやり方として、末端の店のオーナーをビシビシ挙げていって財産を剥ぎ取っていけば、大元ではありませんが、まず末端をどんどん締め挙げ、全体としての被害防止にもつながります。 政府は「批判があるとしてもとりあえずここまできました」と言います。確かに、行動計画やそれに基づく施策はそれ以前に比べればかなり前進です。これからは、それでは足りない部分や事例を報告していくことで更に改善を求めていくことや、メディアの理解を得て社会啓発をすることが大切ではないでしょうか。特に、日本社会の需要の抑制は殆ど手つかずの大きな課題として残っており、これは政府だけでなく我々一人一人が考えていかなければいけない問題だと思います。 |
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