| 2005年1月号 「外国人人権基本法」への新たな風 ―日弁連の「人権基本法の制定を求める宣言」と私たち― 佐藤 信行 (外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会) |
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外キ協(外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会)は1998年に「外国人住民基本法(案)」を提起してから、教会を中心にその制定運動に取り組んできた。そして2002年には移住連(移住労働者と連帯する全国ネットワーク)が、「包括的外国人政策の提言」を日本社会に向けて発信した。私たちの運動は今、裾野を大きく広げて新たな段階に入ったということができるだろう。 この間、私たちNGOの法案・提言のほかに、近藤敦さんら研究者による提言「移民国家日本の条件」「多民族国家・日本の構想」「社会統合政策の構築に向けて」が出され、2002年には在日韓国朝鮮人をはじめ外国籍住民の地方参政権を求める連絡会による「在日NGO提言」、市民がつくる政策調査会・移民政策検討プロジェクトの提言「21世紀日本の外国人・移民政策」、2003年には外国人との共生に関する基本法制研究会の「多文化共生社会基本法の提言」がなされた。そして、日弁連シンポジウム実行委員会による「外国人・民族的少数者の人権基本法(要綱案)」が提案された。 (1)戦後日本の外国人法制度は、日本国民の圧倒的多数の「無関心」の下に作られ、維持されてきた。しかし、私たちの「市民法案・市民提言」は、この問題を「少数者の問題」ではなく「日本社会全体の課題」として提起する。 (2)戦後日本の外国人法制度は、外国人を普遍的権利の享有主体から排除し、徹底的に「管理」するという目的の下で策定され運用されてきた。すなわち、入管法は「本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図る……」ことを、外登法は「在留外国人の公平な管理に資する」ことを目的として定めている。そして、その「管理」とは、私たちの日常生活のなかでの語感をはるかに超えて、「公権力が、人の生活関係に介入して、その意思に関わりなく、又はその意思を排除して、外部的に規律する措置を意味する」(「法令用語辞典」)ものとしてあり、その字義通りに運用されてきた。しかし、私たちの「市民法案・市民提言」は、外国人を「管理」する客体とするのではなく、普遍的権利の享有主体として認め、日本社会を構成するパートーナーとして位置づける。 (3)戦後日本の外国人法制度、すなわち外国人を排除し管理し続けてきた法制度は、法令に明文化されたもの、法令には明記されずに「当然の法理」という奇妙なロジックに拠るもの、必ずしも法文上明記されていないが、通達や「実務要領」など、外国人も(また日本国民も)知りようがない「行政マニュアル」に拠るもの――によって、恣意的に運用されてきた。しかし「市民法案・市民提言」は、関連する現行の法・政令・省令・行政指導など個々の法制度全体、かつ、すべての省庁にまたがる全面的な改正を求める。 (4)すなわち「市民法案・市民提言」は、現在の外国人法制度の部分的改正に留まらない、根本的な政策転換を迫ることになる。そこに画期的な意義があると同時に、しかしそうであるが故に、それを実現する政治的・社会的過程における隘路、あまりにも大きな困難があるということである。 ● 私たちが「市民法案・市民提言」の立法化を実現しようとするには、「第一段階」として次のような措置が必要不可欠である。 (1)本来、日本が国際人権規約に加入した時点で「外国人の人権基本法」が、人種差別撤廃条約に加入した時点で「人種差別禁止法」が制定されるべきであったのであり、国会内にまず、「外国人・民族的マイノリティの人権に関する特別委員会」が設置されなければならない。 (2)国際人権諸条約の実施監視機関である国連の各委員会からの「懸念」と「勧告」に対して、国会および地方議会は議論を尽くすべきである。 (3)とりわけ、在日コリアンなど外国人および日本国籍の民族的少数者に対して、自由権規約第27条および子どもの権利条約第30条が定める「民族的マイノリティとしての地位と権利」がただちに承認されなければならない。 (4)国際人権条約のなかの未批准の条約、個人通報制度の批准・加入、留保条項の撤回がなされなければならない。 これらのことは、NGOの「過大な要求」でもなければ、高度な「政策論争」など要しないものであり、「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」と宣明する日本国家の最低限の務めであるはずだ。 ● 10月8日、日弁連のシンポジウムに参加した教会関係団体や市民団体、民族団体(民団・総連)、研究者が集まり、「NGO交流会&意見交換会」を開催した。地元の国際交流団体をはじめ、北海道や東京、関西などから50人が参加したこの会では、「外国人の人権基本法」を求める全国的なネットワークの必要性を確認した。 「逆風」が吹き荒れる中、私たちは今後とも、不条理な制度的差別、社会的差別に対する個別的、具体的「挑戦」を果敢に続けていくしかないであろう。それと同時に、さまざまな市民法案・市民提言の「開かれた議論」、自治体との「建設的対話」の場を積極的に作っていくことが求められている。 外国人登録者数だけでも191万人を超え、すでに多国籍・多民族社会へと変貌しつつある中で、いくつかの自治体では、外国人に対して行政サービスを日本籍住民と等しく提供するだけではなく、「外国人市民代表者会議」の設置、民族学校・外国人学校への助成、門戸開放のための「特区」申請など、外国人の「住民」としての地位と権利を保障する施策を始めている。また、外国人に住民投票権を認める「住民投票条例」を定めた自治体がすでに150にのぼる。 こうした自治体の取り組みは、「国民/外国人」という絶対的二分論に基づく既存の法制度の壁に風穴をあけるものであり、それを支えるものは「外国人が地域社会に生活基盤を置き、義務を果たす重要な構成員である」という素朴かつ確固たる生活実感からである。 したがって私たちは、「市民法案・市民提言」の立法化を国会に求めていくと同時に、各自治体において「外国人人権例」の制定に向けて取り組みを始めていく時期に至ったと言えるであろう。そして、その実現のためには、オールドカマーとニューカマーとの「共同」の取り組み、地域社会において平和・人権・環境・ジェンダーフリーなどさまざまな課題に取り組むNGOとの「協働」が必要である。 私たちは2005年、全国各地のNGO、弁護士、研究者、市民に呼びかけて、「市民法案・市民提言」の実現をめざす新たな取り組みを始めたい。 |
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