2005年10月号
 特集 第5回移住連全国ワークショップ京都


 2005年6月18日から19日に、京都・大谷婦人会館で第5回全国ワークショップ京都が開催された。当初は、例年どおりの150名程度の参加を見込んでいたが、300名を超える申し込みがあり、急遽、会館内の大ホールを手配し、当日を迎えた。京都という土地柄もあり、学生の参加も多く、移住者の人権に対する関心の拡がりが感じられた。

 今回の特集では、全国ワークショップでの全体会と分科会報告を取り上げる。ワークショップでの議論が今後の全国の取り組みに活かされることを期待している。また、ここでの議論は、現在作成中の「政策提言2006年版」(「多民族・多文化共生社会に向けて〜包括的外国人政策の提言2002年版」の改訂版)にも組み込んでいきたいと考えている。

第1日目 全体会 移住労働者をとりまく状況の変化

◆第3次出入国管理基本計画の特徴と人権課題 丹羽雅雄(移住連共同代表)

 
 丹羽報告は、今年3月に発表された第3次出入国管理基本計画についての分析およびそれに対する課題をまとめるという内容であった。この基本計画は、5年前に発表された第2次基本計画に続くものであるが、この間に、9.11同時多発テロおよび「テロとの戦争」が起こり、現在も継続中であることは周知の事実である。これを受けて、日本でも昨年12月に「テロの未然防止に関する行動計画」が発表された。また、拉致問題の表面化、「首都東京における不法滞在外国人対策の強化」、「犯罪に強い社会のための行動計画」の発表などもこの間に起こった。このように、社会状況は大きく変化しており、第3次基本計画もこの時代状況を如実に反映したものとなっている。

報告では、この基本計画の特徴として、「観光立国」への取り組みおよび「我が国が歓迎すべき外国人の受け入れ促進」、人口減少時代における出入国管理行政のあり方を示す必要性に言及すると同時に、治安対策を名目とした「不法滞在者の半減」を目指すという方向性、テロリスト等の入国阻止が打ち出されたことが指摘された。また、「国際化」の用語が消え、第2次基本計画で入管計画では初めて使用された「人権尊重」などの言葉は今回まったく使用されなかったことも強調された。

以上から、この国の方針が、観光立国や人口減少にともなう外国人の受け入れの必要性を打ち出すと同時に、治安・テロ対策を名目に外国人の治安管理と排除を目指していることがよく分かる。とすると、前提として、受け入れに値する外国人と値しない外国人が存在することになる。つまり、この方針を実現するためには、日本にとって好ましい外国人と好ましくない外国人という区別と選別が必要なのである。もちろん、この区別はこれまでも存在してきたのであるが、今後ますます強化されることが危惧される。そして、このことが人種主義や外国人嫌悪(ゼノフォビア)の助長や拡大に繋がることが危惧される。


省庁交渉からみた政府方針 矢野まなみ(移住連事務局長)

 矢野報告の内容は、移住連が実施してきた省庁交渉についてであった。97年から始めた省庁交渉は、テーマ・要請先を年々拡げ、昨年はついに複数の省庁合同の交渉を行うなど着実に深化している。02年に出した政策提言が移住連の総合施策になっており、それを踏まえ個々の課題ごとに各省庁と交渉を行ってきた。しかし、複数の省庁にまたがる課題も多く、それらの解決に向けて、昨年は、合同交渉を行う運びとなった。この交渉では、政府あるいはどこかの省庁に移住者に関する総合的な部局を設置するよう要請した。

報告では、今後の移住連の政策提言についても言及された。経産省が少子高齢化時代を踏まえ外国人労働者の受け入れについて提言を行ったように、今後、政府の側でも外国人受け入れを進めていくことが予想される。しかし、他方で、テロ対策や治安を名目に管理の方向性が強化されてもいる。そのため、NGOの側から、この方向性に対抗し、移住者にとっても日本人にとっても住みやすい社会の実現を訴えていく必要がある。また同時に、外国人の受け入れに関する議論だけではなく、すでに日本に暮らしている人々の人権を粘り強く訴えていく必要がある。


◆女性に対する暴力、人身売買対策の進捗状況 青木理恵子(京都YWCA・APT)

 99年に発足した移住連の「女性への暴力」プロジェクトは、01年のDV防止法への取り組みをきっかけに具体化し、活動を活発化させている。特に、全国の団体が直面していた問題であったDVについては、情報交換やホットラインの設置、多言語リーフレット、提言など様々な活動を行ってきた。しかし、モニターを行うNGOの存在は地域差が激しく、今日も移住女性に対する差別的対応は続いている。特に、在留資格のないDV被害女性の権利擁護が重要な課題である。

 人身売買への取り組みは、移住連でも始まったばかりであるが、02年から政府が法改正にむけた動きを開始したことで、NGO側も被害者の人権擁護を中心とした法律の提案を急ぐ必要があり、それに向けて実態調査、ロビーング、キャンペーンなどを行ってきた。そして先日国会で、刑法や入管法の改正がなされ、人身売買が犯罪として規定されることになった。しかしながら、これらの法案では、人身売買被害者の保護については何ら保障されていない。したがって、これからの移住連の課題は、法案制定後・施行後の保護の実態および法運用の限界を明らかにし、次の改定に向けて働きかける準備をしていくことである。 


第2日目 全体会

 2日目の全体会は各分科会の報告から始まった。各分科会の代表者によって議論された内容や提言が発表された。(分科会報告の詳細は、次ページ以降に掲載しているため、ここでは省略する。)

 次にまとめとして共同代表の渡辺英俊さんが、分科会の報告を受けてのコメントと02年に完成した「政策提言」を具体的に実施するための取り組みや、今後新たな政策提言を作成するにあたって今回のワークショップをどう活かしていくかとともに、移住連のこれからについて述べた。

 各分科会報告によれば、日本における外国籍をもつ人々の生活の現状はかなり厳しく、今後「テロ対策」という言葉のもとに外国人排斥の風潮が広まる中でますます彼・彼女らの生活は厳しくなることが予想され、この現状に対して、移住連は時代に合わせた行動や活動の変容を積極的に行うべきであると示唆した。また、個々の現場においての有効なサポートを移住連のネットワークの中で強化していくことが必要であるとした。そのための具体策としてリアルタイムでの情報交換の活性化があげられた。また、政府・国会議員への働きかけも重点をおき、事務局が中心となって取り組んでいくことがあげられた。外国籍を持つ人々の困難な生活実態を踏まえたうえで、各地域で活発に行われている彼・彼女らに対するサポート活動のために情報交換によって全国規模でのネットワークをこれからより一層強化していこうと呼びかけた。

 また、政策提言については、02年版作成時とは社会情勢の変化、法改正により改訂を要する部分があるため、今回のワークショップの分科会で議論された内容をもとに新たな政策提言を作成する方針を示した。さらには出版することを目標とし、そのための編集チームを組んで、取り組む姿勢を明らかにした。

 また、Mネット購読や会員拡大は移住連事務局の財政支援につながるため、それぞれが積極的に勧誘活動を行うと同時にMネットの内容を充実させることにも力を入れ、財政面での充実をはかることもこれから移住連を運営していく上では重要な課題であると述べた。最後に今回のワークショップにおいて議論されたことが今後の移住連の活動におおいに活かされ、来年行われる札幌でのフォーラムで再会し、再び熱い議論がなされることを楽しみにしていると締めくくった。

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