(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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              メール・ニュース・号外 発行:2007年1月29日
                           登録者数:330人
               http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html

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                              高裁判決速報
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                  政治家の「意図を忖度」した番組改ざん
                    東京高裁でNHKに200万円支払い命ず
                                                                板垣竜太

 2007年1月29日午後2時、東京高裁101号法廷で、NHK裁判の判決が言い渡されま
した。以下は、「判決要旨」にもとづく速報です。後日、詳報します。

 まず判決の主文は次のとおりです。

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1(1) 一審被告NHKは、一審原告バウネットに対し、200万円及びこれに対する平
成13年8月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (2) 一審被告NEP及び一審被告DJは、一審原告バウネットに対し、各自100万円
 及びこれに対する平成13年8月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
 え。
 (3) 一審原告バウネットの一審被告らに対するその余の請求をいずれも棄却す
 る。
2 一審原告西野の控訴を棄却する。
3 一審被告DJの控訴を棄却する。
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 一審判決ではDJのみに支払いを命じていたのに比べれば、今回の判決は、まず
責任の主体がNHKにあり、それにNEPとDJは連帯責任を負っているという形になっ
ている点で、大きな違いがあります。

 理由としては、原告バウネットの期待と信頼を侵害したことと、説明義務を怠っ
たことによる不法行為責任ということです。

 特に今回の判決で、「改編」の画期と認定されているのは、放送4日前、2001
年1月26日です。この日、野島(国会担当局長)・松尾(放送総局長)・伊東(番組制
作局長)らによる粗編試写があったわけですが、これ以降の改編は、「制作に携
わる者の制作方針を離れた形」で編集されたとしています。

 もっといえば、DJが最後に関わった1月24日の部長試写までのバージョンにつ
いては、「ドキュメンタリー番組に準ずるような内容の番組であり、一審原告ら
の期待と信頼を維持するものとなっていた」と認定しています。

 では、なぜ原告の期待する内容、そして制作現場の方針すらかけはなれたよう
な「改編」がおこなわれたのか、そこにも判決は踏み込んでいます。判決要旨の
ことばを借りれば、NHKは「国会議員等の意図を忖度して当たり障りのないよう
に番組を改編した」からです。次のように認定しています。

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 そのような経緯を辿った理由を検討するに、本件番組に対して、番組放送前で
あるにもかかわらず、右翼団体等からの抗議等多方面からの関心が寄せられて一
審被告NHKとしては敏感になっていたこと、折しも一審被告NHKの予算につき国会
での承認を得るために各方面への説明を必要とする時期と重なり、一審被告NHK
の予算担当者及び幹部は神経を尖らしていたところ、本件番組が予算編成等に影
響を与えることがないようにしたいとの思惑から、説明のために松尾と野島が国
会議員等との接触を図り、その際、相手方から番組作りは公正・中立であるよう
にとの発言がなされたというものであり、この時期や発言内容に照らすと、松尾
と野島が相手方の発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度してできるだ
け当たり障りのないような番組にすることを考えて試写に臨み、その結果、その
ような形へすべく本件番組について直接指示、修正を繰り返して改編が行なわれ
たものと認められる。
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 このように、野島担当局長と松尾総局長が政治家の意図を過剰に「忖度」した
ことが、番組「改編」の原因だと認定しているのです。一審に比べて画期的な判
断の転換があったのは、まさに上記の理由によります。

 ただし、政治家の介入については、次のように認定しています。

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 なお、一審原告らは、政治家等が本件番組に対して直接指示し介入したと主張
するが、面談の際、政治家が一般論として述べた以上に本件番組に関して具体的
は話や示唆をしたとまでは、証人らの各証言によってもこれを認めるに足りない。
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 要するに、政治家の直接指示までは論証できていない、ということなのですが、
直接介入が無かったとまでは断定していません。しかも、既に出ている事実から
明らかなのは、最初に野島担当局長に問い合わせたのは、政治家側だということ
です。したがって、単にNHK側が勝手に過剰反応したということではなく、「神
経を尖ら」させるような刺激を最初に与えたのは政治家側です。要するに、上記
は、直接番組のここを直せというような指示は論証されていない、ということを
述べているにすぎず、圧力が無かったことの証明にはなっていません。というか、
むしろ「意図を忖度」せざるを得ないほどの圧力にはなっていたことの、間接的
な証明になっているともいえるでしょう。詳しくは判決全文を検討してみる必要
がありますが・・。

 今回の判決の転換は、やはり2005年1月の朝日新聞報道と長井デスク(放映当時)
の記者会見以降、放映直前のNHKと政治家とのあいだのドタバタ劇の詳細が明ら
かになったことに大きく起因していると思います。動くべき人が動き、出るべき
事実が出れば、物事は動く、ということですし、それを促したのは、この問題に
関わってきた多くの人たちの運動なのだと、あらためて思います。

 なお、NHKは、「不当であり、極めて遺憾」とコメントを発表し、本日、直ち
に上告の手続きをとりました。

 以上、速報でした。

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                       (号外編集担当・板垣竜太)

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│発行= 2007年1月29日                        │
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