(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                          メール・ニュース 号外 発行:2005年12月1日
                           登録者数:353人
                             http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html 

かねて準備が進んでいた本事務局の本『番組はなぜ改ざんされたか--「NHK・ETV
事件」の深層』(一葉社刊)は、編集作業がいよいよ大詰めを迎えています。こ
れが世に出たら、改ざんを行った当事者たちは夜も眠れなくなるような一冊にす
ることを目指しています。もう少しだけお待ちください。
さて、間近に迫ったNHK裁判控訴審第7回口頭弁論のお知らせです。改ざんをめ
ぐる政治家とNHKとの癒着の当事者であり、一度は「圧力を感じた」発言を朝日
新聞社会部記者にしておきながら、不思議なことに、あとになってその意味を百
八十度転倒させて説明するという曲芸を行った松尾武元放送総局長が、証人とし
て登場します。お知らせにあわせて、メキキネット事務局の鈴木香織さんが、こ
の口頭弁論にむけたざっくばらんなおさらいと予習をしてくれました。参考にし
てください。

■もくじ■
1.NHK裁判控訴審第7回口頭弁論、裁判報告集会のおしらせ

2.第七回口頭弁論のどこに注目するのか。
    メキキネット事務局 鈴木香織

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■NHK裁判控訴審第7回口頭弁論

日時:12月5日(月) 午後1:30から(傍聴席抽選締めきり午後1時)
   証人尋問・松尾武NHK放送総局長(事件当時)
法廷:東京高裁101号法廷(東京メトロ霞ヶ関駅A1出口)

■NHK裁判控訴審第7回口頭弁論報告集会

日時:2005年12月5日(月)午後6:30(開場6:00)
参加費 700円
会場: 早稲田奉仕園会館地下1階50人ホール(地下鉄早稲田駅より徒歩5分)

◆プログラム◆

●原告報告
●弁護団報告・・・・・・NHK裁判弁護団
●質疑応答

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■第七回口頭弁論のどこに注目するのか。
                      メキキネット事務局 鈴木香織
NHK裁判の証人尋問が近づいて来ました。元放送総局長が証言台にたつなんて
前代未聞のことです。証人が首を洗っている間に、前回のおさらいと今後の予定
に目を通して傍聴に備えましょう。いくつかあるなかから、とくに三つの論点を
まとめてみました。

その1 原告弁護団、裁判官交代を歓迎
 前回から登場した南裁判長には、依願退職で去った前任者よりも丁寧な訴訟指
揮を期待できるかもしれません。事実上は判決文を書く右陪席裁判官の交代で、
「証言を聞いた裁判官が判決を書く可能性が高まった」という観測もあります。

その2 明暗をわけた証人採否
 その新裁判長が証人を決定しました。「とりあえず松尾さんと長井さん。あと
は二人の証言を聞いてから判断しましょう」というのです。原告と被告の双方が
申請していたのは松尾証人だけでしたし、NHKはかれ一人で終わらせるつもりで
した。そうした形にはならなかったことで、さらに新しい可能性が開けてくるか
もしれません。これによって、そもそも「(松尾証人だけが)ベストの証人であ
り、彼ひとりで充分」と主張して他の証人を拒んできたNHKの言うベストとは、
いったい何であったのかが試されることにもなるでしょう。

その3 取材対象者の「表現の自由」とは
 原告側の主張の斬新さにも注目してください。「女性国際戦犯法廷」は著作物
といいうる実質を備えていたとして、番組で「法廷」の実像を歪め、著作物の同
一性保持を損なった被告は、「女性法廷」を企画し実現した著作者の「表現の自
由」が損なわれないような番組になるという原告の信頼を裏切った、という論理
構成です。最近ではビジネスモデル特許のように、「アイデア」が独自である場
合には、それだけで特許権の対象になっているのですから、「法廷」のようにた
とえシナリオのないイベントの場合でも、その構成など、大枠に関して著作物と
いう考えが成り立つはずだ、原告側は主張します。

 これに対してNHKは、どのような番組を制作・放送するかという「表現の自由」
は原告らにはないはずだと反論しています。しかし、原告は、もしもそうである
としたならば、原告らが創作した「女性法廷」をNHKは無償でいかようにも利用
できることになってしまうと反論します。そして、「原告準備書面(4)」では、
「本件は、まさに一審被告ら<註:NHKら>の表現の自由(編集の自由)と、一審
原告ら(つまり、VAWW−NETジャパン、松井やよりさん)の「表現の自由」を損
なわない番組になるとの信頼(一審原告らの表現の自由の保障を重要な内容とす
る信頼)が衝突した場合、どのように調整されるべきかを問うものである。」と
指摘してきています。

 この裁判は、二審でどちらが勝っても最高裁まで持ち込まれるのは確実と見ら
れ、この事件が「憲法違反」を争点にするものとなる可能性は弁護団も認めてい
ます。そもそも、個人の「表現の自由」と会社組織の「表現の自由」を同列に扱
ってもよいのかなど、腑に落ちない点はあります。デジタル化や知的財産権の進
展は、近い将来、テレビ番組の制作をめぐる法的関係を激変させるでしょう。映
画やテレビのプロデューサーたちが作品の著作権を主張する動きもあります(*)。
いずれにしても、著作権というと、ともすると財産権としての議論ばかりになり
がちですが、そこに一石を投じる意味でも、この際「表現の自由」について、き
ちんと議論して欲しいものです。
* (社)日本映画テレビプロデューサー協会(http://www.producer.or.jp)会報287号

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                       (号外編集担当・岩崎 稔)
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│ 発行= 2005年12月1日                                           │
│ 発行所=メキキ・ネット事務局                                    │
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