(創刊:2001年8月18日)
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                             メール・ニュース 号外 発行:2005年1月12日
                              登録者数:382人
                             http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html 

 「疑惑」とされていた番組改ざん事件でのNHK上層部に対する政治家の介入が、
朝日新聞(1月12日付朝刊)の報道(*)により、ついに明らかになりました!
 そして来週月曜日(1月17日)にはVAWW-NETによるNHK裁判が開かれます。当初、
この日で「結審」とされていましたが、この新事実の発覚により、結審する可能
性が低くなりました。
 番組放映からもうすぐ4年の月日が経とうとしています。さて、土壇場の逆転
劇なるか?

(*) http://www.asahi.com/national/update/0112/006.html

■もくじ■
1.NHKへの政治家の介入、明らかに!
                                        板垣竜太(メキキ・ネット事務局)
      今回の報道がどのように位置づけられるのかを検討します。

2.NHKへ政治家の介入報道について
                                                    中村信也(東京新聞)
      この番組改ざん問題について、事件当初からずっと追ってこられた中村
      記者が、緊急でコメントを寄せてくださいました。

3.NHK裁判情報
      1月17日の控訴審口頭弁論の案内です!

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                  1.NHKへの政治家の介入、明らかに!
                                          板垣竜太(メキキネット事務局)
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 NHKの番組改ざん問題に関しては、当初から政治家の介入の疑惑が取りざたさ
れていました。番組放映直後に出された『週刊新潮』では自民党の「大物議員」
により、番組制作局長が「釘を刺された」という「噂」が報じられていましたし、
『朝日新聞』『週刊金曜日』などにおいても、直前に「異例の局長試写」がおこ
なわれており、その背後に政治の影が疑われていました。しかし、これまで確た
る証拠のない状態でした。
 ところがここへ来て、2005年1月12日付『朝日新聞』朝刊の社会面に、「NH
K番組に中川昭・安倍氏「内容偏り」幹部呼び指摘」という記事が掲載されまし
た。そこで新たに判明した事実をもとに、私なりに経緯を整理すれば、以下のと
おりです。

 これまでにも明らかになっていたように、「NHK上層部」による番組への介入
はおよそ以下のような3段階を経てなされました。

(1) 番組介入が始まったのは2001年1月19日の教養番組部長による局内試写から
でした。番組放映(1月30日)のおよそ10日前のことです。現場の積み重ねを無視
した介入に耐えかねて、24日には制作会社のドキュメンタリー・ジャパン(以下、
DJ)が事実上降板しました。この1月19〜24日までの編集プロセスが、番組への介
入の第一段階です。この段階ではまだ天皇有罪判決などが残っていましたし、秦
郁彦氏による事実誤認だらけの否定的なコメントなども入っていませんでした。
(2) 次にDJが降板した24日以降、1月29日までの間に、NHKの教養番組部が主導し
て、新たなバージョンがつくられました。これが改ざんの第二段階です。この段
階で、秦氏のコメントが挿入されたり、米山リサ氏のコメントの一部が削除され
たりしていました。
(3) ところが、放映前日の1月29日に「異例の局長試写」がおこなわれ、放映直
前までの間にさらなる「編集」がおこなわれました。これが改ざんの第三段階で
す。この段階で、番組が規定の44分より4分も短い40分になりました。

 番組改ざんがこうした段階を経ておこなわれたことは、番組放映後の取材や現
場の告発などから既に判明していました。ただ第三段階で実際に何が起こったの
かについては、まだ分からないことがたくさんありました。

 今回の報道で何よりも重要なのは、この第三段階のプロセスにおいて、政治家
の介入の事実がはっきりしたことです。以下、新事実を伝える記事を引用します。

       29日午後、当時の松尾武・放送総局長(現NHK出版社長)、国会 
      対策担当の野島直樹・担当局長(現理事)らNHK幹部が、中川〔昭一〕、
      安倍〔晋三〕 両氏に呼ばれ、議員会館などでそれぞれ面会した。 〔…〕
       関係者によると、番組内容の一部を事前に知った両議員は「一方的な
      放送はするな」「公平で客観的な番組にするように」と求め、中川氏は
      やりとりの中で「それができないならやめてしまえ」などと放送中止を
      求める発言もしたという。NHK幹部の一人は「教養番組で事前に呼び
      出されたのは初めて。圧力と感じた」と話す。 
       同日夕、NHKの番組制作局長(当時)が「(国会でNHK予算が審
      議される)この時期に政治とは闘えない」などと伝えて番組内容の変更
      を指示したと関係者は証言。松尾、野島両氏も参加して「異例の局長試
      写」が行われた。 
       試写後、松尾氏らは(1)民衆法廷に批判的立場の専門家のインタビ
      ュー部分を増やす(2)「日本兵による強姦(ごうかん)や慰安婦制度
      は『人道に対する罪』にあたり、天皇に責任がある」とした民衆法廷の
      結論部分などを大幅にカットすることを求めた。

 さらに番組放映当日(30日)にも、放映3時間前になってから、松尾放送総局長
の指示により、番組がカットされたということが、これまでに『週刊金曜日』の
竹内一晴記者(当時)の記事などにより分かっていました。今回の記事では、その
ときカットされたのが、中国人元慰安婦の証言などであったことが、具体的に明
らかになりました。
 また同記事によれば、番組内容を事前に知った経緯について、両議員は「仲間
から伝わってきた」と言っているとのことです。この「仲間」が番組放映前に
NHKへ押しかけた右翼団体の関係者であることはほぼ間違いないと思われます。
この辺は、「新しい歴史教科書」などを通じてつながっているからです。すなわ
ち今回の圧力は右翼団体と政治家の連係プレーであったことが、ほぼこれで実証
されました。

 今回の新事実の発覚は、NHKに昨年9月設置された「コンプライアンス(法令順
守)推進委員会」に、当時の局のチーフ・プロデューサーが告発したことによる
ものだと、記事には記されています。政治家が番組放映前に介入した結果さらな
る番組の「編集」がおこなわれたのだとすれば、これは事実上の事前検閲だとい
わざるを得ず、放送法違反となることはほぼ明白だからです。ここまで明らかに
なった以上、「自主的な判断」による編集だったというNHKの主張は、いかにも
空疎に響きます。
 これは単に「不祥事」といった次元で解決されるべき問題ではありません。政
治とNHK、そして戦争責任…、すなわち「戦後NHK」の構造的な矛盾が問われなけ
ればならないのです。
 NHKの番組改ざん問題は、ここへ来て新たな展開をむかえました。来週17日の
裁判に注目しましょう。

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                  2.NHKへ政治家の介入報道について
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 NHKは、もっとも緊張感を持って接すべき国家権力を担う政権与党幹部の指
摘を結果的に受け入れてしまった経緯を、詳細に明らかにすべきだ。安倍氏や中
川氏の、どの指摘に同意し、どの指摘を退けたのか。
 今まで通り、あくまで自主判断による編集だと主張し続けるのであれば、与党
幹部からの指摘があったことをなぜ今まで隠してきたのか。安倍氏や中川氏が自
らVTRの編集したのではないから自主的だったとでもいうのなら、NHKの行
為はすべて自主的である。自主的に進んで政治権力の統制に従う風潮を一般にファ
シズムと呼ぶ。「政治介入」の事実を隠してきたことは、取材源の秘匿の問題な
どではない。NHKは何に味方して何と闘うべきなのか、静かに考えてほしい。
受信料不払いの増加で分かるように、与党をなだめて予算を獲得すればいいなど
と思うのは時代遅れである。ボイコット運動の恐ろしさを、もう一度かみしめて
はどうか。

 不祥事騒動の中での遅ればせの内部告発だが、勇気を奮ったチーフ・プロデュー
サーには、これからも職を賭した番組制作の後始末を求めたい。同業者として応
援する。この問題は紅白の元CPや元ソウル支局長らの金銭の腐敗以上に大きな
問題である。森前首相の「神の国発言」問題で森氏を指南したというNHK政治
記者の問題(*)と同様、公共放送の根幹にかかわる重大事である。NHKと政治
というテーマから必死に出直せば、活路は開けるはずだ。

 安倍・中川両氏は、放送法を勉強し直してほしい。例えば安倍氏は朝日新聞の
取材に対して「中立」という言葉を繰り返しているが、放送法は中立とは言って
いない。「政治的な公平」と言っている。中立と公平は似て非なるものである。
公平・公正、いわゆるフェアネス原則などとメディア法の世界で呼ばれる問題に
ついては様々な議論がある。問題提起のためには、一つの番組の中ではなく、一
つの放送局の中で、あるいは他のメディアも含めた全体の中でバランスが保たれ
ればいいという考えも、表現の自由として尊重されるべきだ(NHKの放送文化
研究所による調査研究もある)。すべての番組で選挙報道なみの公平性を求めら
れたら問題提起の力が弱まってしまう。完全な番組を初めから作ることは難しい。
さまざまな批評を受けて、次々と番組を作っていく中で問題を相対化し、より公
平・公正を目指していくのが現実的だろう。
 なお、東京高裁は、放送総局長だった松尾武NHK出版社長ら幹部の証人申請
の却下を取り消し、尋問を行うべきだ。場合によっては、これまでの法廷での偽
証問題も出てくるのではないか。
            (以上は個人としての見解で、東京新聞を代表するものではない)

注釈
(*)憲法上問題な森氏の「日本は神の国……」という言動を批判的に見るべき立
場のNHK政治部記者が、森氏追及の記者会見を乗り切る手ほどきを森氏にして
いた。その文書のコピーを記者クラブで見つけた西日本新聞記者がスクープし、
匿名で報じた。最近出た川崎泰資・柴田鉄治著『検証 日本の組織ジャーナリズ
ム NHKと朝日新聞』(岩波書店)では、NHK記者の実名が暴露されている。
NHKに限らす、そういう組織ジャーナリストは少なからずいる。

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                           3.NHK裁判情報
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 VAWW-NET JapanによるNHK裁判控訴審は、来週月曜日(1月17日)に第3回口頭弁
論が開かれます。当初、この日で結審する見通しでしたが、政治家による介入が
明らかになったいま、NHK側の主張や証言が真実でなかったことが明らかになっ
たため、結審する可能性は低くなりました。この裁判の動向は極めて重要な意味
をもっています。今回は傍聴席に多くの人が集まることが予想されますので、早
めに裁判所へお越し下さい。

■ NHK控訴審・第3回口頭弁論
日時:1月17日午前11:00〜
場所:東京高裁812号法廷
(※現在の注目度では、傍聴者多数による抽選の可能性もあります。開廷30分前
に来ていただくのが確実です。)

□ 傍聴者向け報告(兼記者会見)12:00〜13:00
場所:弁護士会館(会場当日告知)

■ 同報告集会
日時:1月17日午後6:30〜
場所:文京区民センター3-D会議室(地下鉄春日駅A2出口上がる)

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                           (今回編集担当・板垣竜太)

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│発行= 2005年1月12日                                              │
│ 発行所=メキキ・ネット事務局                                    │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html         │
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