創刊:2001年8月18日
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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メール・ニュース vol.9(3) 発行:2002年10月5日
登録者数:313人
http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html
▲▲▲緊急特集第2弾!!! 北朝鮮報道を問う▲▲▲
「拉致」報道と歴史認識
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▲▲▲10月のイベント情報▲▲▲
▼▼▼まだまだ間に合う!コンサート/映画/シンポジウム▼▼▼
チェックはお早めに!
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■もくじ■
1. 緊急特集!!!(2)「北朝鮮」報道を問う
「拉致」報道にみられる歴史認識の欠如 (長志珠絵)
2.イベント情報
(1)「風は海の深い溜息から洩れる
朗読と歌曲と即興のセッション〜詩人・金時鐘を迎えて〜」
(2) 東大社情研「アフガン戦場の旅」の上映会&監督を交えてのシンポの
お知らせ
(3)「女性国際戦犯法廷」判決全訳刊行記念シンポジウム
「女性への日常の暴力・戦時下の暴力――ハーグ判決をどう生かすか」
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1. 緊急特集!!!(2)「北朝鮮」報道を問う
∽∽∽ 「拉致」報道にみられる歴史認識の欠如 (長志珠絵)
9月17日夕刻から、テレビ報道に釘付けになってしまった。メディアは連日、
同じニュースソースによる報道と解釈を続け、現時点でははっきりした北朝鮮パ
ッシングの一方、日朝会談の内容にではなく、拉致被害家族の声や個人的な情報
を開示する仕方で(ワイドショーにはこの傾向は顕著だ)「拉致問題」を焦点と
する。同時に北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国との「国交回復」は前提とされ、
その仕方――前例としての日韓基本条約や金正日主席の発言――「お互いが抱え
ている小さい問題」-が含意するであろう日本の「「過去の清算」に対する金主
席の立場表明が問われることはない。
だが、当日のテレビ報道は劇的な変化を遂げ、情報通のNHKの報道は、「被害
家族」の声をライブ・編集の2段構えで鮮やかに再構成して見せた。午後4-5
時台、個々の事情もその政治性・立場性も多様な被害者家族の意見表明は、ライ
ブでは、国交回復のサインそのものへの批判・撤回、首相の一時帰国の上での検
討を求める声が印象的だった。だが、編集済みの8-9時台、拡大ニュース番組
枠では、日朝会談への否定的意見は見事にカットされ、被害者家族は「感情」を
表す集団として表象された。小泉首相の支持率はあがるのかどうか。外交問題の
切り札として、拉致問題を使ってきたメディアはこの日も、国家間の政治課題の
行方がどのように受け止められるのかに意を用い、拉致問題そのものについての
明らかな情報不足・取材不足を露呈させながら、悲痛な「家族」の姿を扱いかね
ているようだった。
北朝鮮バッシングの焦点として見ていた私は、「死亡」報道に衝撃を受けたこ
とも含め、メディアの影響下にあったことを痛感している。システム化された国
家暴力は、人々の人権・生命の安全を優先しない――日本軍も含め、現代世界の
戦争・紛争が証明してきた普遍性とこの問題は私の中でも少しも直結していなか
った。
小泉首相の北朝鮮訪問前後からにわかにクローズアップされた「日本人」「拉
致」問題。だがその名付けも含め、日朝交渉の場で公式の議題とされたのは大韓
航空機事件以後だ。すでに70年代後半の事件発生当時、警察庁は北朝鮮関与の
可能性を把握していたとされるが、拉致被害者家族には等閑にふされ、「失踪事
件」が「拉致問題」と変化したのは90年代に入ってからだという。
27日の政府の訪朝団報道後、9/29(日)午後9時、50分のNHKスペ
シャル『拉致』はこうした情報も含め、独自の取材によって番組を構成した。拉
致被害家族をスタジオに招き、それぞれの家族の声を紹介し、従来の政府・メデ
ィアの冷淡さを紹介、「なぜ25年間も放置されてきたのか」を問う報道姿勢は
「この問題は、家族が運動する問題ではない」と国家責任・マスコミ批判を行う
被害者家族に沿ったものだろう。
だが、もう一つの問い、なぜ拉致が行われたのか?をめぐってのNHKの取材
はこれまで知られなかった具体的な情報を網羅したものだけに、問題の質の根深
さが見えてくる。番組の構成は主に、韓国で死刑を判決された元諜報部工作員と
その裁判記録にそってその日本での足取りを追ったものだった。当初からその枠
組みは、分断国家のバイヤスを受け入れている。さらに、現在老齢の元工作員が
16歳まで日本で育ったこと、70年代後半に日本に潜伏した彼が、北朝鮮に渡
った後音信が途絶えた在日家族のネットワークを使った等については、「日本に
潜入するのは簡単」「100人規模の国内協力者の存在」といった極めて政治的
な位置づけを与えていた。日帝支配ー冷戦下で引き裂かれた家族の事情は、「拉
致」問題の被害者を「日本人」に限定することで見えなくされていく。「拉致」
(最近では「国家犯罪」という表現さえも頻出している)という用語と、戦争責
任報道姿勢とのギャップを等閑視し、在日朝鮮人の子どもたちへの攻撃を傍観す
るメディアは、二〇世紀後半の東アジア情勢・朝鮮戦争以後の歴史認識の希薄さ・
鈍さを今改めて、「自分の国の国民を守れない政府」への批判にすりかえていく
ようだ。
(長志珠絵・歴史研究者)
***************************(2−1)***********************************
∽∽∽§風は海の深い溜息から洩れる
朗読と歌曲と即興のセッション 詩人・金時鐘を迎えて§∽∽∽
「途方もない元手によってあがなわれた無償の作品」(細見和之)とまで言われ
る金時鐘(1929〜)の詩。20世紀の激動の歴史を生き抜いてきた詩人が、東京に
於いて、滅多に聞くことのできない貴重な肉声を披露。また、既に初演された、
港大尋の作曲による「くりごとえんえん」「ここより遠く」「等しければ」他、
新作を発表する。日本語の在り処、音楽の在り処、また歴史の在り処をも感じさ
せる、濃密な二晩になるだろう。
●出演
金時鐘+港大尋+ソシエテ・コントル・レタ
●ゲスト
竹田恵子(9日)/鈴木千香子(10日)/西陽子(10日)
●日時
10月 9日(水)19:00(開場18:30)
10月10日(木)19:00(開場18:30)
●場所
門前仲町天井ホール(東京都江東区門前仲町1‐20‐3 8f)
・大江戸線 門前仲町駅6番出口徒歩1分
・東西線 門前仲町駅3番出口徒歩5分
●問合せ
tel:03−3641−8275
(門前仲町天井ホール 受付時間13:00〜17:00 火曜日定休)
fax:03−3820−8646
e-mail: scle@af7.mopera.ne.jp
●前売・電話予約=3000円 当日=3500円 学生=2000円
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以前、メルマガに『アフガン 戦場の旅〜記者たちは何を見たのか』を寄稿して
くださった宮原理恵さんから
∽∽∽§社会情報研究所 研究生企画
映画「アフガン戦場の旅」上映会のご案内§∽∽∽
10月に入り、長雨の合間にも新涼の風が心地よく感じられるようになりました。
皆様ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。さて、当社会情報研究所にお
きまして、私ども研究生と東京新聞記者・吉岡逸夫氏の共同企画で、吉岡氏の監
督映画「アフガン戦場の旅」の上映会を行うはこびとなりました。
詳細は以下の通りですが、映画上映の後、監督・撮影・編集を手がけられた吉岡
氏と、映画にも重要な関係をもつアジアプレス代表のビデオジャーナリスト野中
章弘氏、さらに今回、授業枠を本上映会のために連動というかたちでご提供いた
だいた、もとTBSアナウンサーで現在フリーランスで活動されている、社会情
報研究所非常勤講師の下村健一氏の三者による鼎談を行う予定です。参加者の皆
様には、ぜひ活発なご意見を頂戴したいと思います。
●日時 10月15日(火)
17:00より
●場所 東京大学社会情報研究所 二階教室
●鼎談パネリスト 吉岡逸夫 東京新聞記者
野中章弘 アジアプレスインターナショナル代表
下村健一 社会情報研究所 非常勤講師
●プログラム 17:00 主催者挨拶
17:10 映画上映
18:20 休憩
18:30 鼎談
19:30 質疑応答
予定終了時間20:30(最大21:00)
●テーマ 「ジャーナリストはなぜ危険を冒してまで戦場に行くのか」。この
吉岡氏の問いは、そのままジャーナリストを目指す、あるいはジャーナリズム
に関心をもつ我々の問いであると言えるだろう。ただ漠然とジャーナリストに
なることを夢見るだけでは、自らの行く道を定めることさえ難しい。また、戦
場へ行くフリージャーナリストや、海外のメディアが手放しで賞賛され、日本
のマスメディアが戦場に行かないことを、逃げ腰であると非難することからは、
個人としてのジャーナリストの姿は見えてこない。一人のジャーナリストが戦
場に行き、そこで何を聞き、何を見たのか。そこから出発する三人のジャーナ
リストによる鼎談を通して、私たち自身のジャーナリスト像を、もう一度問い
直していきたい。
●連絡先 主催者代表 大崎要一郎(東京大学社会情報研究所 研究生)
y-osaki@adachi.ne.jp
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∽∽∽§「女性国際戦犯法廷」判決全訳刊行記念シンポジウム
「女性への日常の暴力・戦時下の暴力――ハーグ判決をどう生かすか」§∽∽∽
20世紀最大規模の戦時性暴力であった日本軍性奴隷制(「慰安婦」制度)を裁
く「女性国際戦犯法廷」は、2001年12月ハーグで最終判決が下されました。女性
の人権、ジェンダー正義に立つこの画期的なハーグ判決を、戦時性暴力の不処罰
をなくすためだけでなく、DV,セクシャルハラスメント、レイプなど日常生活
での女性への暴力にどう生かすことができるのか、3人の方にそれぞれの立場か
ら発言して頂きます。女性への暴力に関心のある方々の参加をお待ちしています。
●時 10月20日(日) 午後2時―5時 開場 1時半
●場所 早稲田大学国際会議場会議室
(JR高田馬場、早大正門行バス西早稲田下車、地下鉄早稲田下車)
●参加費 千円
●パネリスト 角田由紀子 井上摩耶子 彦坂諦
●主催・問合せ
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク (Tel/Fax 03-3818-5903)
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[編集後記]
植民地支配から自らを解放し、国民国家として独立した社会が、植民地支配者たちの
押しつけていった制度や仕組みを克服するよりも、むしろ模倣してしまう――脱植民
地後の連続性の問題をこのように指摘したのは、パーサ・チャタジーだった。20世
紀後半をつうじて続いた冷戦は、北朝鮮を恒常的な戦時体制に置き去りにした。北朝
鮮に誇り高き「独立解放」はあっても、「戦後」はなかったのだろう。日本で北朝鮮
バッシングの報道をききながら、戦時日本の総動員体制と警察秘密国家ぶりをそこに
重ねて思い起こしている人たちは少なくない、と思いたい。
(vol.9編集担当=メキキ・ネット事務局)
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■みなさんからの御意見・御感想、なにより投稿をお待ちしています!
(メキキ・ネット事務局一同)
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│発行= 2002年10月5日 │
│ 発行所=メキキ・ネット事務局 │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html │
│ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp │
│ FAX: 020-4666-7325 │
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